2012年03月07日(水)

Sat 120204 及ばずながら、オックスフォードで小室直樹を思う(まあロンドン滞在記11)

テーマ:昭和の人々の記憶
 書くとは言ってみたものの、小室直樹はさすがに今井君の手に余る。「10年早い」とか「100年早い」と言われるのがオチだから、詳しく触れるのはやっぱりヤメておく。読者諸君が自分でググり、自分で力の及ぶかぎり調べ、自分で著書を読みあさって、彼の業績を直接体験したほうが良さそうだ。
 いやはや、彼の経歴は恐るべきものである。ちょっとググっただけで、今井君みたいな凡グマには一生かかっても接近すらできない偉人や巨人の指導を受け、その都度キチンとした業績を残して帰ってくる。
上からのラドクリフカメラ
(聖メアリ教会のテラスから見たラドクリフカメラ)

 いま生きていれば80歳ぐらいのヒトである。まあ、今井君のパパ&ママの世代でござる。福島の会津高校から京都大学数学科へ。卒業後、大阪大学大学院へ。高田保馬と森嶋通夫の指導で理論経済学を専攻する。
 続いて大阪大大学院博士課程に進学するが中退。フルブライト留学生としミシガン大学大学院へ、計量経済学を専攻。次はMIT大学院へ、サミュエルソン教授の指導を受ける。諸君、例の都留重人訳/岩波書店「経済学」のサミュエルソンどんであるよ。
 さらにハーバード大学大学院へ、経済学研究のかたわら、心理学/社会学/社会心理学など研究に進む。30歳のころ、東京大学大学院で法学と政治学を研究、指導教官は丸山眞男と京極純一etc。うにゃにゃ、であるね。
聖メアリ教会
(オックスフォード、聖メアリ教会)

 興味の範囲はほぼ無限と言ってよくて、もう垣根も何もかも撤廃、ジャマな垣根はみんな、「何じゃこんなもん」と爆笑しながら引っこ抜いちゃう。計量政治学(篠原一)に、法社会学(川島武宜)に、社会学(富永健一)に、社会人類学(中根千枝)に、マックス・ウェーバー研究(大塚久男)。親交はどこまで広がるか見当もつかない。
カレッジ群1
(カレッジ群 1)

 親交と言っても、その形はあくまで「弟子」であって、興味があればいきなり会いにいって弟子入りし、それが叶わなければ著書を徹底して読み込んで、弟子入りした以上に先生をしゃぶりつくす。
 ついでに、ウェーバー研究の業績で権威ある賞まで受賞してしまう。どれが「ついで」でどれが専門なのか、誰にも(おそらく本人にも)区別のつかない状況で、東京大学の法学博士号を取得したのが、40歳前後である。
カレッジ群2
(カレッジ群 2)

 ほぼ同時に東大の非常勤講師になるが、これまた「どっちがホンキ?」「どっちが本職?」な感じで自主ゼミを主宰。世に言う「小室ゼミ」であるが、このゼミに関わったヒトビトには現役で大活躍中の超有名&超現役が多いから、今井君なんかがいちいち触れる必要はない。
 彼がゼミで扱ったと言われるのは、経済学/法社会学/社会心理学/社会学/宗教学/代数学/統計学その他。2010年、死去。うひゃ、ナマハンカな予備校講師なんかがナマハンカなブログなんかでナマハンカに解説なんかしたら、ナマハンカな半殺しに遭いそうなたいへんな偉人&巨人だったのである。
カレッジ群3
(カレッジ群 3)

 しかし諸君、昨日も書いた通り、オックスフォードなら泣いて喜びそうなこのタイプの天才を、日本のヒトビトはあまり歓迎しないのだ。今もなお、彼の扱いは「在野の巨人」「在野の天才」であって、死後1年半経過して、彼の膨大な著書も書店の店頭から消滅しつつある。
 論文の数はまさに「膨大」以外の何ものでもない。質は、彼が関わったほぼ全ての分野でおそらくトップクラスのもの。クマ蔵なんかには質を正確に理解する能力はないが、多くの学者がマジメな表情でそう断言しているのだから、きっと間違いないだろう。しかし没後1年半経過して、論文の存在もやはり顧みられなくなりつつある。
 日本人の多くは、こういうタイプの得体の知れない天才がもともとキライなのである。「どこの大学の教授で何が専門なのか」、それを名刺の狭い紙面に1行でハッキリ示せない人間には、巨大アメーバに対するような嫌悪と恐怖を感じるのだ。
下からのラドクリフカメラ
(下から振り仰いだラドクリフカメラ)

 だから彼の著書は少なくともクマ蔵の知る限り、岩波書店からも東大出版会からも、みすず書房からや未来社からも顧みられることはなかった。ごく地味な経済学者だった今井君のオジサンの本でさえ、東大出版社と未来社から1冊ずつ出ているから、日本の世の中はなかなか難しい。
 いや、もちろん出版社名なんかどうでもいいことだが、彼の著書の多くは光文社カッパブックスであり、祥伝社とダイヤモンド社と集英社であって、学術書としてより、一般人向けの概説書/啓蒙書/入門書/ビジネス書の扱いが普通だった。
 「危機の構造」(76年ダイヤモンド社)は、すでに入手困難。ソ連の崩壊をその10年前に予告したベストセラー「ソビエト帝国の崩壊」(80年カッパブックス)も入手困難である。80年って、日本の経済学部の教授たちがまだ大マジメでマルクス経済学を講義し、社会主義や共産主義による人々の幸福を夢みていた頃だ。
町並み
(聖メアリ教会テラスからみたオックスフォードの町並み)

 ちょうど同時期、早稲田大学が大昔から喧伝し続ける「在野精神」を、「そんなの犬の遠吠えに過ぎないじゃないか」と冷笑的に片付けてしまった友人がいた。「早稲田的在野と小室直樹的在野をキチンと分けて考えたほうがいい」という話である。 
 幼き日の大学生今井君としては、小室直樹より加藤周一のほうがどうしてもカッコよく見え、「加藤周一的在野ならまだしも、小室的在野に耐える自信はない」と、酔っぱらいつつ考えたものだった。むろん愚かしいクマなんかそのどちらにしても足許にも及ばないのだが、まあ我々は連夜そういうバカ話をして酒を飲み歩いたものである。
アリス
(不思議の国のアリスの店)

 小室直樹の足跡をみても、オックスフォードという名前は一度も出てこない。何だか残念である。12月21日、ハートフォードカレッジ→ラドクリフカメラ→セントメアリー教会とオックスフォードのカレッジ群をめぐり歩き、果ては「不思議の国のアリスの店」にまで入り込んで、「この大学こそ小室的在野にピッタリの大学だったんじゃないか」と思いめぐらしていた。
ベア
(そろそろメシと酒が恋しくなる。ヨサゲな店「BEAR」を発見)

 型にもワクにもハマりきらない大きな知性を見いだした時、日本のメディアの扱い方に一番大きな問題を感じる。「ソビエト帝国の崩壊」がベストセラーになるや、メディアはこぞって小室直樹を囃し立てた。
 彼のようなタイプのヒトを「囃し立てる」とは、今井君にはイジメにしか見えない。10年も20年もメディアに囃し立てられ続けた小室直樹は、メディアの中では「何だか物凄くエラいらしいけど、要するに奇人変人の類い」というスタンスで扱われるようになる。
 そこに「大酒飲み」「酒を飲むとますます変人ぶりに輪がかかる」という評判が加わり、著書や論文と全く無関係のバラエティ番組に引っ張りだされ、当然のようにヒッパリダコになる。ほとんど「下町の発明王/エジさん」みたいな扱いである。
ベア拡大図
(BEAR、拡大図)

 女性評論家を蹴飛ばしたとか、田中角栄の超シンパを名乗ったとか、酔っぱらったら何をしたとか、そういうことでイジられ遊ばれるイジラレ・キャラにされてしまったわけだ。YouTubeをいじっていると、立川談志との対談「ダダダダッ、談志ダ」が一番上に出てくる。うーん、今井君は何だか悲しくてならない。談志はいかにも談志らしい素晴らしい味を出しているが、問題はカメラである。
 もちろん、小室直樹自身は「不遇だ」とか「在野だ」とか、そんな愚かなことは1度も感じないで、勉強と研究と自主ゼミが楽しくて楽しくて、誰にも出来ないぐらい人生を満喫しながら亡くなったのだ。惨めなのは、長年にわたって彼の知性を弄んだ我々のほうなのである。

1E(Cd) Münchinger:BACH/MUSICAL OFFERING
2E(Cd) Nanae Mimura:UNIVERSE
3E(Cd) AFRICAN AMERICAN SPIRITUALS 1/2
4E(Cd) AFRICAN AMERICAN SPIRITUALS 2/2
5E(Cd) Maria del Mar Bonet:CAVALL DE FOC
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