2011年12月27日(火)

Mon 111128 坂の上の店・秋山クマ蔵が2500mlのワインを飲み干す(ギリシャ紀行38)

テーマ:ブログ
 「アレカの店」は今日も空いていた(スミマセン、昨日の続きです)。それでも、客が2組か3組入っているから、近隣のタベルナよりは繁盛しているほうで、お隣もそのまたお隣も、開店休業状態。店主が店の前に椅子を出して、通り過ぎる観光客をうさん臭そうに眺めながら、居眠りしているだけだ。
 道ゆく人にチャンと声をかけて、メニューを説明しては店に導き入れようと努力しているのは、アレカの店だけである。クマ大師は、こういう地道な経営努力が大好き。ミコノスで「ヨルゴの店」が大好きだったのも、全く同じ理由である。
 テーブルにつくと早速、今井君は楽しみにしていたstuffed tomatoを注文。もちろん白ワインのデキャンタも注文した。「デキャンタ」というからボトル半分かと思ったら、「1リットルのデキャンタ」という常識破りなシロモノが登場。さすがのクマ大師も一驚を喫することになった。
トマトと白ワイン
(トマトとワインの風景)

 しかも、そのデキャンタの容器が言語道断である。諸君、上の写真を凝視してみたまえ。ワイングラスの向こう側に屹立する、赤い光沢を帯びた容器。これこそまさに「デキャンタ」を名乗るクセモノである。
 ついでに、その向こうに見えるご高齢のギリシャ人が「アレカ」。中年グマならずとも、「あれか? アレカって、あれか?」としつこく繰り返して、若い諸君の失笑と冷笑と憫笑を買うところであるね。
 金属の容器に入ったワインだから、もちろん口に含むと金属臭がある。「うにゃにゃ、マズい」である。昔は、こういう器を「カナダライ」と呼んだ。カナダドライ♡ではなく、カナダライ♨ 漢字で書けば「金盥」である。
 小学校の水飲み場にも、必ずこの手の金属コップが蛇口に結びつけられていて、休み時間に水を飲みに走っては、金属臭のする水を腹一杯飲んだ。水飲み場に走りながら「おれ、1番!!」「じゃあ、オレ2番」「3番!!」「よんばーん!!」と、何の秩序もなく順番を叫んで走っていった。
 わざわざアテネまで来て、小学校以来久しぶりの金盥の金属臭を思い出すのもバカバカしいが、今井君はこういう世界が好きなのだから仕方がない。やがてお待ちかねのstuffed tomatoが運ばれてくる頃には、金属臭ワインもすっかり口に馴染んで、1リットルのデキャンタも半分以上あいてしまっていた。
スタッフドトマト
(トマトとピーマンの風景)

 では、10日越しで待ちこがれたstuffed tomatoが旨かったかといえば、残念ながら「平凡この上なし」と評価せざるを得ない。トマトとピーマンをくり抜いて、中にピラフを詰め込んでから、オーブンで軽く焼いてお皿に載っけた。ただそれだけのことであって、お料理1年生の新人妻にでも出来そうな一品である。
 ただし、「味は平凡そのもの」でも、「楽しさは天下一品」ということはありうるので、世の中はなかなか侮れない。まずワインに「何だ、こりゃ?」と罵声を浴びせ、返す刀でトマトとピーマンに「何だ、お前ら?」と問いかければ、それだけで椅子から転げ落ちるほど面白い。酒も料理もつまらないシロモノなのに、それでも椅子から転げ落ちるほど笑えるのが「酔っぱらいの特権」というものである。
坂道の店
(「坂の上の店」の風景)

 急な坂道に面した店構えなので、テーブルをそのまま地面に置いたのでは、お皿は滑り落ち、瓶も倒れてしまう。そこで坂道に木材で階段のようなものを据え付け、テーブルと椅子を階段の上に置いている。今井君が酔っぱらっているテーブルも椅子も、狭い階段の上に載っかっているだけなので、夏目漱石風に言えば「何だか剣呑」である。
 1本目のデキャンタを飲み干した頃、クマ蔵より1段下のテーブルに若いフランス人カップルがやってきて、「サルディーニャス・アサーダス」を注文した。ご大層な名前だが、要するにイワシを焼いて乱暴にお皿に載っけただけのもの。シロートでもクロートでも、味は大して変わらない。
 しかし、クマ蔵は悔しくてたまらない。イワシはクマ蔵の大好物である。ついこの間のリスボンでも、イワシ10匹あっという間に頭から骨まで噛み砕いて、日本人の強烈な個性と克己心を示してきたばかり。それにも関わらず、いまクマ蔵の前にあるのは、フヤけたトマトとピーマン、その中から恥ずかしそうに顔を出した根性ナシのピラフに過ぎない。
 この瞬間、クマ蔵の競争心に火がついた。諸君、競争心をアラワにむき出したクマの行動を想像してみたまえ。もちろん「ワタシにも、イワシ。ついでに1リットルのデキャンタもう1本!!」である。ワタシとイワシ、何だかソックリであるね。
イワシ
(整列したワタシのイワシ君たち)

 このぐらい酔っぱらってくると、もう自制が利かない。自制が利かないからこそ転げるほど楽しいのであって、自制のマヒはまず食べ物や飲み物の「量」の面から現れる。「いくらでも食べられる、いくらでも飲める」という錯覚が、心も身体も支配してしまうのである。
 すると、見よ、「あらら、あっという間にワタシのイワシがない」という事態に陥った。ワタシのイワシがなくなって、しかしまだ2本目のワインは残っている。相変わらず金属臭を放っているが、もうクマ蔵はすっかり慣れて、むしろ金属臭を不可欠のスパイスのように感じている。
 「ワインがあって、食べ物がない」というのではバランスがとれないから、「スミマセン、スパゲッティ・ナポリタンください」と、さらに注文した。日本人の中にはたいへん口うるさい人がいて「ナポリタンというのは日本独特のもの。本場にはナポリタンというものは存在しない」などとおっしゃるが、ここはアテネであって本場イタリアではない。「ナポリタン」は、ミコノスにもサントリーニにも、アテネにも、厳然として存在したのだ。
ナポリタン
(アテネのナポリタン)

 やがて運ばれてきたのは、写真のようなシロモノ。おお、サントリーニで2度も度肝を抜かれたのと同じヤツである。早稲田・大隈通り、今はなき「ボンマルシェ」で毎日のようにすすっていたアイツである。タバスコまみれにしなきゃ食えない、あの懐かしのマズいヤツ。今井君はほとんど涙にむせびながら、これまたあっという間にズルズルすすり込んだ。
 最後にエスプレッソを楽しんでいると、ウェイターがニコヤカに近づいてきて、「よく飲んでくれたから、店からのサービスだ」と例の金盥の小型のヤツを1本テーブルに置いた。おお、金属臭ワイン500mlである。これで合計2500mlを飲み干すことになるが、ここは日本人代表なのだ。みっともないところは見せられない。
 2500mlといえば、普通のワインボトルで3本半である。けれども諸君、「もし登っていく坂の上に一朶の白い雲が輝いているとすれば、それのみを見つめて登っていくであろう」でござるよ。
 3本半、ナニするものぞ。東の果てのマコトに小さな国が、今こそ夜明けを迎えようとしているのである。坂の上の店の秋山クマ蔵は、見事これを飲み干して、日本人の面目を躍如たるものにして見せた。

1E(Cd) Stan Getz & Joao Gilberto:GETZ/GILBERTO
2E(Cd) Keith Jarrett & Charlie Haden:JASMINE
3E(Cd) Ann Burton:BLUE BURTON
4E(Cd) Harbie Hancock:MAIDEN VOYAGE
5E(Cd) Miles Davis:KIND OF BLUE
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