2011年11月11日(金)

Mon 111017 レース売りオバーチャン ヘパイストス神殿の香港オバチャン(ギリシャ紀行9)

テーマ:ブログ
 8月25日夕方、と言ってもまだ午後4時だから、日没までまだ4時間もあるが、「アレカの店」でお腹パンパン&しこたまワインで頭クラクラのクマ蔵は、観光客で賑わうプラカ地区を抜け、パルテノン神殿の麓を通って古代アゴラに入った。
 古代アゴラは昨日も訪ねたが、昨日は途中から熱中症気味で頭クラクラになり、早々と撤退を余儀なくされた。その結果、古代アゴラで最大の目玉である「ヘパイストス神殿」を横目で見ながら「接近することなく撤収」という情けない結果に終わっている。
 せっかくお腹パンパンで、腹の底まで自信満々になれたのだから、昨日の分まで取り返すつもりでヘパイストス神殿に向かう。チケットは、昨日買った「6カ所回数券」がまだ1回分残っていた。
ヘパイストス正面
(アゴラ、ヘパイストス神殿)

 アゴラに降りていく坂の途中で、自作のレースを高値で売りつけようとするオバーチャンにつかまりそうになったけれども、こういうのにいちいち取り合っていたら、オカネがいくらあっても足りなくなる。
 実際、こういうオバーチャンが20ユーロで売りつけようとする品物は、交渉次第で15ユーロになり、10ユーロになり、やがて「3枚で25ユーロ」に変わる。要するに原価は3ユーロか5ユーロなのだ。交渉好きなヒトはギリシャかスペインかポルトガルに出かけて、路上の物売りとの掛け合いを楽しむのも悪くない。
 今井君の実感としては、この手の交渉で一番巧妙なのはイタリアであり、ヒトによってはその巧妙な交渉術を「悪辣」と形容するかもしれない。ギリシャやポルトガルの場合、巧妙とか悪辣というより、むしろ哀愁や悲哀の情感を伴い、そのせいで、相手がオバーチャンやオジーチャンでも「可憐」と表現していい交渉になる。
おばーちゃんと遭遇
(レース売りのオバーチャンと遭遇したあたり)

 アゴラには、午後5時近くなってもまだ灼熱の太陽が照りつける。オリーブの実がたわわに実り、緑の枝が夕方の爽快な風に吹かれて、いつまでもゆったりと揺れている。その向こうの丘に白い勇姿を浮かべるのが、目指すヘパイストス神殿である。さっきのワインが汗になって噴き出してくるのを感じながら、その丘をゆっくりと登った。
ヘパイストス近景
(丘を登りながら、ヘパイストス神殿を望む)

 そこで事件が起こった。ヘパイストス神殿の前で、油断して汗を拭いながらニヤニヤしている脇から、中国系のオバチャンがいきなり飛び出してきたのである。50歳前後、驚嘆すべき早口の英語で「写真を撮ってくれないか?」という。英語のスピードから考えて、おそらく英語ネイティブ。ま、常識的には香港のオバチャンだ。
 手渡されたのは、デカくてゴツい高級カメラ。CANONの文字がある。
「家族と来ているんだが、家族は今ちょっと向こうの方にいる」
「ワタシ1人の写真を撮ってほしい」
「後ろに神殿が入るようにして、ワタシを真ん中に入れてほしい」
と矢継ぎ早に要求を述べる。
 まあ、海外旅行中によく出会うシチュエーションである。もちろんOKであって、「写真を撮ってほしい」と言われていちいち断っていたら、そっちの方が遥かに面倒である。
 ブダペスト旅行中、クリスマスツリー前で写真を撮ってあげたカップルの女性が、不満そうに顔を歪め「I think this is not」と呻いたりしたことはあったけれども、そういうのは例外中の例外。普通ならお互い軽く「Thanks」「No problem」とコトバを交わして、サッと別れるだけだ。
パルチャンを望む
(ヘパイストス神殿からパルテノン神殿を望む)

 ところが諸君、この香港オバチャンは次元の全く違うオカタ。次元が違い、世界が違い、宇宙が違う。要求が圧倒的に高いのだ。写真を撮ってあげるたびに、すぐに画面をチェックして、激しいダメ出しを繰り返す。
「ワタシを真ん中と言ったのに、ワタシが真ん中になっていない。これじゃダメだ」
「ワタシの全身を入れてほしいと言ったのに、足がちょっと切れている。これじゃOKとは言えない」
「神殿を全部入れてほしいのに、神殿の左のほうが画面に入っていない。もちろんダメだ」
 ここまでですでに写真は5枚。そのたびにダメ出しが飛んで、しかもそのダメ出しはどんどん激しくなってくる。そこで、どうしても「ワタシが真ん中」「ワタシの全身」「神殿の全体」を入れるためには、カメラを縦に構えて縦長の写真にせざるを得ない。
 すると今度は
「横方向の写真と言ったのに、縦方向に撮影した。こんなのでOKと言えるわけがないだろう」
「何度言ったら分かるんだ。ワタシが真ん中。神殿全体、ワタシも全身。チャンと撮ってくれないと困る」
「両肘を両脇にシッカリつけて撮ってくれないと、写真がブレちゃう。姿勢に気をつけて」
「むしろ、片膝を地面につけて、身体が揺れないように気をつけてほしい。ピント合わせは、このダイヤルを操作せよ」
うぉうぉうぉ、オバチャンはモデル気取りになってくる。
ヘパイストス直前
(香港オバチャンが「ワタシ真ん中」な写真を要求したアングル)

 長身なので、覆いかぶさるような姿勢で早口の英語をマクし立てる。「全身」「真ん中」「神殿全体」「ぶれないように」「そのためには片膝ついて」。要求は全て飲んであげているのに、その新しい2~3枚をチェックしたオバチャンはまだまだ決して満足しない。「ほら、完全にワタシが真ん中とは言えないじゃないか」と言うのである。次の1枚にはとうとう
「写真の中のワタシが汗でスウェットになっている。汗を拭くから待ってくれ。もう1枚お願いする。早く撮ってくれないから、こんなに汗ビッショリになるんだ。汗でスウェットなワタシはオゾマしい」
と来た。
 うーん、完全にモデルのつもりだ。いい年して何てオバチャンなんだ。オゾマしいのは、アナタの存在自体じゃないか。次第に怒りがフツフツと湧き上がってくる。ここまでで、シャッターを押した回数15回以上。受け入れた指示も十数種である。
ヘパイストス拡大
(ヘパイストス神殿、拡大図)

 「これが限界」「最後」と意を決してシャッターを切ると、歩み寄ってきた香港オバチャンは、ついに満足気にガッツポーズ。
「オマエは、ついにやったんだ」
「とうとうやり遂げた」
「おめでとう。ついに成功した」
「やれば出来るじゃないか」
と、躍り上がるように連呼。肩を抱き、握手を求め、呆気にとられて見守るうちに、あっという間に物陰に姿を消した。
リカヴィトスの丘
(ヘパイストス神殿からリカヴィトスの丘を望む)

 今井君がポケットの中を探って、「カネはなくなっていないか」を確かめたのは当然である。こうやって精神的に圧倒しておいて懐中物を奪うのは、南欧では定番のスリの手口なのだ。
 しかし海外旅行中の今井君は常に用心に用心を重ね、「サイフ」などという不用心なものは決して持たないことにしている。持つのは、折り畳んだ数枚の小額紙幣のみ。小額紙幣とは10ユーロ札、しかも出来るだけ汚く3つか4つに折り畳んで、ポケットの奥に突っ込んでいる。せいぜい持っても20ユーロ札で、後はセキュリティの厳重なクレジットカードだけだから、今のクマ蔵をスリが狙っても、ほとんど旨味はないはずだ。
モナスティラキ駅前
(夕方5時を過ぎても、まだモナスティラキは灼熱だ)

 アゴラを出て、昨日と同じモナスティラキ駅付近の裏町を歩いていると、向こうから見覚えのあるオバーチャンが疲れきった足取りで近寄ってきた。つい2時間前に怪しげなレースを売りつけようとしたオバーチャンである。これから孫たちの待つ家に帰ろうとするのか、疲れた足を引きずるように、北に向かってゆっくりと歩み去った。

1E(Cd) Peabo Bryson:UNCONDITIONAL LOVE
2E(Cd) Four Play:FOUR PLAY
3E(Cd) Deni Hines:IMAGINATION
4E(Cd) Sugar Babe:SONGS
5E(Cd) George Benson:TWICE THE LOVE
total m85 y1416 d7377
最近の画像つき記事
 もっと見る >>

Ameba芸能人・有名人ブログ

芸能ブログニュース

      ブログをはじめる

      たくさんの芸能人・有名人が
      書いているAmebaブログを
      無料で簡単にはじめることができます。

      公式トップブロガーへ応募

      多くの方にご紹介したいブログを
      執筆する方を「公式トップブロガー」
      として認定しております。

      芸能人・有名人ブログを開設

      Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
      ご希望される著名人の方/事務所様を
      随時募集しております。

      Ameba芸能人・有名人ブログ 健全運営のための取り組み
      芸能ブログニュース