2011年10月07日(金)

Wed 110913 ナイルレストランでの作法 ポルトの河の詩的風景(リシュボア紀行26)

テーマ:ブログ
 10月6日、御茶ノ水での授業終了後、出席者の質問に丁寧に答えていたら、いつの間にか午後1時を過ぎた。何だか異様に腹が減ったので、東銀座の「ナイルレストラン」で昼飯と決めた。つい最近「銀座ナイルレストラン物語」というサクセスストーリーが出版されたばかりの、カレーの名店である。
 今井君はもう30年も前からこの店に通っているが、あまりに名店すぎるので、入店していきなりインド人の名物ウェイターに「メニューは、いらないよね!?」と尋ねられる。「メニューなんか見なくても、名物『ムルギランチ』に決まってるよね!?」ということである。
 もちろんその通りなので、メニューはいらない。「ナイルレストランに行こう」と決意した瞬間に、アタマの中にはムルギランチのことしかない。というより、「ナイルレストランに行く」と「ムルギランチを食べにいく」とは、すでに同義であって、ナイルレストランでメニューを受け取り「何を食べようかな?」と迷うこと自体が余計なのである。
 注文したムルギランチは、すぐに出てくる。ランチで5分以上待たせたりするのは、もったいぶっているか、料理人の手際が悪いか、ウェイターが怠け者か、3者のうちのいずれかである。
インドの太陽
(インドの白ワイン。おひさまたちがキュートである)

 写真に示したたくさんのインドのお日様に見守られながら、ムルギランチを徹底的にかき混ぜる。ホントは、クマ蔵君はクマにしては無類のキレイ好きだから、ホントはかき混ぜたりなんかしたくない。キレイに盛りつけたものは、キレイなまま丁寧に、キレイな盛りつけを最後までこわさないように食べるのが好きだ。
 和食派はおそらくみんなそうだし、刺身盛り合わせとか、芸術的なフグ料理なんかを、アブクがブクブク出てくるほどかき混ぜるなんてのは、礼儀作法の「れ」の字も知らないヤカラのすることだ。
 お雑煮でも豚汁でもお好み焼きでも、混ぜて食べるべきものは最初から料理人が混ぜ合わせてくれるのであって、キレイな盛りつけをお客がイヒイヒ笑いながら。アブクが出るまでデロデロかき混ぜるなんて、そんなお行儀の悪いことは、クマさんはイヤである。
ムルギランチ
(キレイに盛りつけられたムルギランチ、使用前)

 しかし、ナイルレストランではそんなことを言ってはいられない。チャンと混ぜないと、さっきの名物ウェイターが常に鋭く監視していて
「混ぜてね、混ぜてね」
「チャンと混ぜてね」
「混ぜれば混ぜるほど、美味しくなるヨ」
と人なつこく命令して回るのである。
 この命令には、さすがガンコなキレイ好きグマも、滅多なことでは逆らえない。というより、この命令に逆らうつもりとか、いちいち「何を偉そうに」と腹を立てるつもりなら、最初からナイルレストランなんかに入らない方がいいし、ましてやムルギランチを注文してはならない。
チャクラ
(辛さにビールも進む。チェコ産インドビール「チャクラ」)

 で、諸君。本来は小笠原流にシャチホコばって固まった彫像グマのクセに、ムルギランチを目の前にした瞬間から性格は一変。上品な奥サマ&お嬢サマお坊チャマなら卒倒してしまいそうな光景を展開する。
 昔々「旭化成」という会社のCMに「イヒ!!」というのがあったけれども(旭化成の「化」の字をカタカナの「イ」と「ヒ」に分解しただけのオヤジギャグだ)、そのぐらい遠慮会釈なしに、カレーと鶏肉とキャベツとライスとマッシュポテトをかき混ぜる。アブクが出るぐらいでないとダメ。こういう泥んこ遊びは、小学生男子の精神を失っていない今井君の真骨頂である。
 すると、あら不思議、ムルギランチの量は2倍にも3倍にも増えはじめる。インド人ウェイターが運んできたときには「何だ、これだけか!?」と思う程度なのだが、かき混ぜてかき混ぜて、アブクが出るほどかき混ぜて、やがてお皿に入りきらないほどになる。おそらくアブクのせいであって、「かき混ぜればかき混ぜるほど美味しくなるよ」とは、まさにこのアブクの働きのおかげなのだ。
まぜこぜ
(無惨にアブクのたったムルギランチ、使用後)

 近くのテーブルを横目で見てみると、女性客はどうしても少々食べ残すようである。老若に関わらず、日本女性にとってはライスの量が多いのかもしれない。いや、むしろ、かき混ぜすぎたアブクの見た目が彼女たちにタメライをもたらすのだ。
 しかし、こちらはさすがに雑食性のクマどんだ。アブクだろうと、混ぜこぜで見た目が悪かろうと、そんなことはお構いなしだ。「チェコ産のインドビール」というフシギな飲み物も楽しみながら、10分もかからずにお皿の上はキレイに片付いてしまった。もちろん「もう、これ以上は1スプーンも入りません」という苦しいツブヤキも、この店の客の定番である。
ポルトの街並1
(ポルトの町並み 1)

 5月19日、ポルトガル・ポルトの街の今井君もランチの後、「もうこれ以上、イカひと切れも入りません」と呟きながら、炎暑のポルト探検に出た。イカ・タコ・イワシの3者共同で作り上げた口内炎の基礎も完成、重苦しい危機感が口の中を渦巻いていた。
 街の規模は小さくて、ブラブラ散策するのは容易そうであるが、狭い坂道の両側の店も住宅も何となく崩れかかった薄暗い場所が目につく。おなじみ「治安情報」で脅されている身としては、いささかオッカナビックリにならざるを得ない。
ポルトの街並2
(ポルトの町並み 2)

 ガイドブックの地図を見て油断していると、この街の起伏の多さにやがて愕然とする。地図上では平坦なポルトの街は、実際に歩いてみると、どこもかしこも坂また坂、階段また階段の連続。ホンの200mか300mの距離に見えても、実は百数十段の階段を降り、降りきったところから、今度は同じ百数十段の階段を上がらなければ到達できなかったりする。
川下り
(ポルト、橋と河の風景。橋の上を走るのはトラムである)

 ヨーロッパにはこのタイプの街が多い。ブダペストもそう、アテネもサントリーニ島もそう、リシュボアだってそうである。ガイドブック作成に当たるヒトに2つ提案がある。
① 坂道が多く、その登り降りにたいへんな体力を使うことを明記する。治安情報より坂道情報の方が重要な場合も少なくない。
② ならば、基本的な地図とともに鳥瞰図も掲載する。市街図に等高線を入れてもピンとこないヒトは多いだろう。鳥瞰図なら「登り降りがたいへんですよ」とイメージでしっかり伝えることができるだろう。
 貧しげな坂道をどこまでも降りて、「こんなにどこまでも降りていって、帰り道は大丈夫かねえ?」と不安にあるあたりで、クマ蔵の目の前に美しいドゥウロ河が出現。すでに午後5時が近かったが、すぐそこに舟下りの観光船が待っていたから、早速乗りこんで河口までのクルージングを楽しむことにした。
北から来たひとびと
(ドゥウロ河、川下りの舟の人々)

 写真で見る通り、舟は欧米人中高年がほとんど。聞こえてくるコトバは、ドイツ語や英語が多い。5月はまだ肌寒い国々から訪れたお年寄りたちが、嬉しそうに船ベリから河の水を眺めている。
 南欧は、治安がどうあろうと、経済状態がどうあろうと、中欧や北欧のヒトにとってはやっぱり夢の国、「君知るや南の国」なのだ。ゲーテ作「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」から、森鴎外訳「ミニヨン」では、以下のようになる(若い読者のために、若干クマ蔵が手を入れておく)。

君知るや南の国 レモンの木は花咲き 
暗き林の中に 黄金色したるオレンジは枝もたわわに
青く晴れたる空より 静やかに風吹き
(中略)
雲にそびえて立てる国や 彼方へ
君とともに 行かまし
夕暮れがせまる1
(川下り風景 1)

 もちろん、歌の舞台はイタリア。しかし、こんなに明るい陽光が溢れ、こんなに心地よい風に吹かれれば、イタリアだってポルトガルだって同じことである。
 坂道と階段との悪戦苦闘で汗ビッショリになった全身に、涼しい河風が爽快だ。夕焼けにはまだ早い河口の風景に、20世紀半ばまでの詩的文学的教養でいっぱいのオジーチャンもオバーチャンもみんなウットリ。ミニヨンの歌を、こっそり心で歌っていたに違いない。
川下り風景

夕暮れがせまる2
(川下り風景 2・3)


1E(Cd) Ashkenazy:RACHMANINOV/PIANO CONCERTOS 1-4 2/2
2E(Cd) The State Moscow Chamber Choir:RACHMANINOV/VESPERS op.37
3E(Cd) Brendel(p) Previn & Wiener:MOUSSORGSKY/PICTURES AT AN EXHIBITION
4E(Cd) Sinopoli & New York:RESPIGHI/FONTANE・PINI・FESTE DI ROMA
5E(Cd) THE WORLD’S ROOTS MUSIC LIBRARY:トルコの軍楽
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