2011年10月02日(日)

Wed 110907 とろんとろんに甘いコーヒー とろーり甘いワイン(リシュボア紀行22)

テーマ:ブログ
 オトナになると、日本の人はコーヒーにお砂糖を入れなくなる。コーヒーショップに入っても、新幹線の中でも、コーヒーを注文して「お砂糖とミルクはお使いになりますか」と尋ねられると、さも面倒くさそうに左手を振って、横柄に「いらない」と答える。
 せめて「いりません」「使いません」と丁寧に言えばいいものを、まるで侮辱でもされたかのように顔を歪めて拒絶のジェスチャーをする。
「オトナは、コーヒーの苦みを求めている」
「甘いコーヒーなんて、子供の飲むものだ」
「ホンモノのコーヒーは、ブラック以外にありえない」
そういう、いかにも依怙地な態度である。
にわとりさん
(ポルトガル名物、ニワトリさん。ポルトの市場で購入)

 そんな難しいことを言うヒトでも、子供の頃はコーヒー茶碗にお砂糖を3杯も4杯も入れて、ミルクやクリームもタップリ入れて、とろんとろんにして飲むのが大好きだったはずなのだ。「お砂糖の足りないコーヒーなんか大キライ。だって甘くないんだもん」と、余りにも当たり前のことを言って、周囲のオトナたちを笑わせるのも好きだった。
 青年になって、お砂糖とミルクと、どちらを先に減らすかはその人次第である。男子は「デート中に甘いのを飲むのがカッコ悪い」と思えばお砂糖を減らすし、女子はダイエットを考えたその日から、お砂糖を3杯から2杯へ、2杯から1杯へ、それこそヤセ我慢して減らしていく。
 ミルクを入れて白く濁ったコーヒーがカッコ悪いと思う男子も多い。就職する前の安アパートの一室で、砂糖なし&ミルクなしのちっとも甘くないコーヒーを飲む練習をコッソリしたりする。こうして、人生の悲哀を全て背負ったような顔でコーヒーをすする、渋いサラリーマンやOLが大量発生することになる。
にわとり大集合
(ニワトリさん大行進。ポルトの市場で)

 そんなに渋い顔をして、さぞかしコーヒーが旨くないんだろうが、やがて缶コーヒーのメーカーまで遠慮して「微糖」だの「無糖」だの、余計なものを開発するようになった。つい20年前までは、コーヒー牛乳みたいに甘いのばかりだったクセに、たいへんな変身ぶりである。
 日本のコーヒー通オジサマから見れば「キャラメル・マキアート」などというものは完全に余計なお世話であって、コーヒーはあくまで苦く、あくまでマズく、あくまで渋いものでなければ意味がない。出張前の空港のラウンジでコーヒーを注ぎながら、その苦みで地球の中心まで引きずり込まれるほど苦くなければ無意味、という顔をしてみせる。
 しかし諸君、J.S.バッハ「コーヒー・カンタータ」によれば、
「おばあちゃんも、ママも、コーヒー大好き。だから娘リースヒェンもコーヒー大好き。甘い、甘い。マスカットワインより甘い」
なのである。マスカットワインがどれほど甘いかは飲んでみるしかないとして、バッハが甘いコーヒー大好きだったことは明らか。あんなマジメそうな顔で、いろいろスミにおけないオジサマだ。
にわとりTシャツ
(にわとりTシャツ。ポルトの量販店で購入)

 タバコとワインについても、日本では顔を歪めて嗜むことになっている。今ではタバコを嗜む人はすっかり減ってしまったが、昔のビジネスマンはどこに行っても「こんなマズいものがあるだろうか」という顔でタバコをくわえていたものである。
 ワインの嗜み方も同じで、今井君みたいに下品にグビグビ飲んだりするのは軽蔑の対象。高等数学の難問を解くように、舌の上で転がし、吟味に吟味を重ね、「乾草の香り」「ラズベリージャムの香り」その他シロートの度肝を抜く奇抜な感動を口にしながら、呻吟するように飲むのがワイン通の作法ということになっている。間違ってもハチミツやお砂糖なんかを入れ、無理やり甘くして飲むようなことはしない。
 以上が日本でのオトナのルールである。全ては渋く、苦く、難しくて、苦みや難しさの中に深い妙味があることになっている。すると、昭和の記憶の片隅に残る「赤玉ハニーワイン」とか「ハチブドー酒」は、当然笑うべき邪道として片付けられるし、オトナのクセにコーヒーにお砂糖3杯入れるのは、「どうかしましたか?」という怪訝な視線にさらされることになる。
ポルトガルTシャツ
(ポルトガルTシャツ。ポルトの量販店で購入)

 今井君がヨーロッパ大好きなのは、こういう点でも素直なおおらかさが残っているからである。大雪が積もったクリスマスなら、温めたワインにタップリお砂糖を入れ、甘い湯気を楽しみながら身体を暖める。邪道だなどと難しいケチをつけて囃し立てる人は誰もいない。
 コーヒーも、お砂糖をいくらでも入れて、トロントロンにしてしまう。ポルトガルで「カフェ」と言えばエスプレッソが出てくるが、彼ら彼女らが「カッフェ」と注文する時、その甘さを期待して、すでに顔がダラしなく歪んでいる。
 「カ」と「フェ」の間に小さな「ッ」が入っているように聞こえるのは、その顔の歪みのせいかもしれない。あの小さなエスプレッソのカップに、お砂糖まるまる1パックをザーッと流し入れ、小さなスプーンで丁寧にかき混ぜている表情は、1日分の幸せを噛みしめるようである。
 クマどんはこのリシュボア旅行中に「エスプレッソ大好き」になった。「そんなに旨いものなら、デザート代わりに飲むのも悪くないな」と考えたからである。これ以上は溶けないほど砂糖を入れれば、エスプレッソはあらかじめお湯に溶いたコーヒーキャンディのようなものである。
マジェスティック
(とろーり甘いポルトワイン。ポルトの名店マジェスティックで)

 ヨーロッパの飲食店で「デザートはいりません」と告げると、ウェイターが「ウソだろ?」「ホントか?」「変なヤツ!!」と呆気にとられた顔をするが、エスプレッソを注文するようになってからは、もう変人扱いを受けなくなった。今井君は今やとろんとろんエスプレッソ大好き人間。日本の普通のオトナみたいに、難しい顔でコーヒーを睨みつけなくてもいいのだ。
 諸君、驚くなかれ、以上が前置きである。ブログ史上前代未聞の2ページにもわたる前置きのあと、クマ蔵はポルトガル北部・ポルトの街を旅することにする。もちろんポルトは、とろんとろんの甘い甘いポルト・ワインで有名な古都である。
 コーヒーも甘けりゃ、ワインも甘い。ポルトガルは子供の頃の素直な日々に帰れる楽しい国であって、コムズカシイ顔は似合わない。前置きが長いぐらいでそんなに難しい顔をしていると、ユーラシア大陸の東の果てで、まさにガラパゴス状態に固定されてしまうのがオチである。
ポルト風景
(ポルト、ドゥウロ河の風景)


1E(Cd) Menuhin:SCHUBERT/SYMPHONY No.1 & No.4
2E(Cd) Menuhin:SCHUBERT/SYMPHONY No.2 & No.6
3E(Cd) Menuhin:SCHUBERT/SYMPHONY No.3, No.5 & No.8
4E(Cd) Menuhin:SCHUBERT/SYMPHONY No.9
5E(Cd) Gunner Klum & Stockholm Guitar Trio:SCHUBERT LIEDER
total m35 y1221 d7182
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