2011年10月01日(土)

Tue 110906 屋内でランチするということ 悪夢のタコリゾット(リシュボア紀行21)

テーマ:ブログ
 コインブラに到着して最初にしたことは、もちろんランチである。ヨーロッパでの今井君のランチは長い。何しろ、まずビアを2本飲み干して、その後からしっかり白ワインをボトル1本カラッポにしなければならない。
 料理は、一昨日の記事トップに写真を掲載したタイプの欧米メトメト料理。イカとタコとイワシわしわし食いで、口の中には立派な口内炎の基礎が確立しているから、食べる速度はさらにいっそう遅くなる。入った店は「ニコラ」。2階に大きな広間があって、その窓際に通された。
ニコラ
(コインブラでランチに入った「ニコラ」)

 ヨーロッパのランチは、外に並べられたテーブルで「爽やかな風に吹かれながら」が多い。というか、「晴れているのに屋内で食べる」という選択は「変わったヤツだ」という視線を集めるようである。
 外のテーブルが空いているのに、あえて「Inside」を指定してみたまえ。ウェイターはまず呆気にとられ、ポカンと口を開ける。真夏の炎天下に「おしるこ!!」、吹雪の夜に「かき氷!!」、2日酔いの朝一番に「熱燗、2合徳利で!!」、そういう注文をする表六玉かトーヘンボクに出会ったような表情である。
 他の客も、晴れていて、そよ風が吹いて、教会の塔にはハトが楽しそうに群れているのに、それなのにあえて屋内のテーブルに消えていく日本人を不思議そうに眺める。で、次の瞬間ウェイターもお客たちも、ほぼ同時に納得がいって、秘かに目配せしあう。
「ああ、そうか。日本の人だもんな」
目配せは、そういう意味である。
サンタクルス修道院1
(コインブラ、サンタクルス修道院)

 日本の人の行動は、ホントに変わっている。ウェイターに詳しく尋ねもせずに、あまりにもサッサと注文を決めてしまったりするのもフシギ。
「食べるものが旨いかマズいか」
「自分の口に合うかどうか」
その日一日の幸せを左右するかもしれない重大事じゃないか。武士道の無の境地か何か分からないが、どうしてそんなに軽率に決めてしまうの? 欧米人にとって、それはあまりにもフシギなのだ。
サンタクルス修道院2
(サンタクルス修道院脇、雰囲気のヨサゲなカフェ)

 晴れているのに薄暗い穴蔵みたいなInsideに隠れ、コッソリ悪いことでもしているみたいに、黙って秘かに食事をするのも、またフシギ。Insideは、従業員がマカナイの食事をする場所であって、オカネを払って正々堂々と食事する場所ではない。欧米人の態度は、だいたいそんなところである。
 イングランドでもドイツでも、雪の降る12月の夕暮れのパブでビールを飲むのに、あえて外のテーブルを選択する人々を見た。だって、雪の中の夜景があんなにキレイじゃないか。真っ白い息を吐き、鼻水を垂らし、ビールは半分凍ってしまい、それでも意地でも外のテーブル。いくら何でもやりすぎなんじゃないかと思うが、彼らはそこまで徹底している。
アズレージョ
(コインブラで発見したアズレージョ)

 しかし諸君、さすがにポルトガルの真昼は暑すぎる。5月ですでにその暑さは度を超していて、下手をすればヤケドする。何度も書くが、「暑い」を通り越して「熱い」のであり、ホントの真夏の日盛りなら、ポルトガルやギリシャの外気温は45℃にもなるのだ。クワバラ&クワバラ。やせ我慢して欧米人のマネなんかしたら、クマの黒こげが「一丁上がり」になりかねない。たとえ奇異の視線を浴びようが、2階の広間に逃げ込むに限る。
ガルシアとサグレス
(ポルトガルビア「サグレス」と緑ワイン「カザル・ガルシア」)

 大広間で昼食中だったのは、他には熟年男女3人組。彼らは賢明にも窓際を避け、日の光の当たらない奥のテーブルで和やかに話し込んでいる。しかしクマ君としては、「せっかく訪れたコインブラ、次に来るのはいつになるか分からない」だから、窓から外を眺めながらのランチにしたい。
 ところが、この選択がトンデモナイ間違い。「海峡を渡ればモロッコ」のポルトガルの熱さは、屋根の下に入ってもまだ侮れないのだ。真昼の日光の当たる窓際は、ガラス越しでも熱中症と日射病の危険がいっぱい。クマ蔵君は、ランチの中盤から止めどなく流れ続ける汗に、ホントに命の危険を感じるハメになった。
 別に、大袈裟に言っているのであるが、運ばれてきた料理の強烈な塩辛さに影響され、さらに命の危険は大きくなった。注文したのは、緑キャベツの入った「カルド・ベルデ」と「アロス・デ・ボルボ」。タコのリゾットである。最初の一口は「おお、日本人向け」な感じ。暢気に「ビールに合うね」とニッコリする旨さだった。
ガルシア
(カザル・ガルシア。爽やかな色のボトルが印象的だ)

 やがてビールがなくなり、ビニャ・ヴェルデ(緑ワイン)のカザル・ガルシアに取りかかる。緑ワインとは、要するに白ワインであるが、昼間向けにアルコール度ちょっと低め。この頃から、日光の熱さとリゾットの塩辛さが耐えがたくなって、「誰か、助けてくれ」と叫びたい緊張感が高まった。
 昔の秋田県人は何でもギリギリまで塩辛くするクセがあって、ナスの漬け物でも塩鮭でも、塩の結晶が白く浮き出るほど塩辛くしないと、ダンナは不満そうに奥さんを睨みつけたものである。だからクマ蔵は塩辛さのベテランであって、「ひょうたん島」だって塩の吹き出たシャケの焼ける塩辛い匂いの中で眺めていたものだ。
旧カテドラル
(旧カテドラル)

 しかるに、このアロス・デ・ボルボの塩辛さは、ワタクシの経験を遥かに凌駕するものである。例えば、入れる塩の分量の単位を間違えた、グラムとキログラムの単位を間違えて、「鍋に5グラム」のところを5キログラム流し込んでしまった、そういう勢いである。そこまで行かないにしても、ゼロ1個ぐらいは明らかに塩辛さが違う。
 半分ぐらい何とか平らげたところで、汗が大量に流れて止まらなくなった。カザル・ガルシアのボトルの爽やかなサイダー色を眺めると気分がいくらか落ち着くけれども、リゾットの米粒はイヤらしいタコ足色に赤黒く染まって、食欲をそそらないこと甚だしい。さすがのクマも、こりゃ、完全に降参。脂汗を垂らしながら、ホウホウの態で退散することに決めた。
市街地
(ニコラ付近のコインブラ市街)

 こういうわけで、頭から汗でずぶぬれ状態で長い坂を上り、大人しくコインブラ大学を見学。乱暴クマどんは、滅多なことでは「見学」などという殊勝なことはしないのだが、何しろ熱さと塩辛さに圧倒されてグウの音もでない経験をした直後だ。いつも意気軒昂なクマさんも、すっかりシュンとしてしまっていたのである。
 こうして、卒業式や学長就任式の行われる「帽子の間」だの、試験に遅刻してきた学生を閉め出してしまう「鉄の門」またの名を「無情の門」だの、いかにも厳格な欧米の大学らしい名所を見物。それでもまだ塩辛さに呆然として、いつもの自分が取り戻せない。呆然としたまま、いつの間にか夕暮れになった。
 帰り道、もう1度「ニコラ」に立ち寄って、心地よい夕暮れの風に吹かれながら外のテーブルでビールを飲んだ。悪夢のタコリゾット事件から3時間。萎縮したクマの胃袋に冷えたビールがしみ込むにつれ、吹く風も爽やかに冷えて、大学町コインブラは何事もなかったように暮れていくのであった。

1E(Cd) Solti & Chicago:MAHLER/SYMPHONY No.1
2E(Cd) Solti & Chicago:MAHLER/SYMPHONY No.4
3E(Cd) Solti & Chicago:MAHLER/SYMPHONY No.5
4E(Cd) Leinsdorf:MAHLER/SYMPHONY No.6
5E(Cd) Solti & Chicago:MAHLER/SYMPHONY No.8 1/2
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