2011年09月29日(木)

Sun 110904 杉浦直樹と薬用紫電改 リスボンで逮捕の逃亡者 再びファドを聞きにいく

テーマ:昭和の人々の記憶
 俳優・杉浦直樹が亡くなったのは、早いもので、もう先週のことである。
 誰かが亡くなったら、すぐに追悼文を書くのがブログの礼儀かもしれないが、今井君としては、彼について書くのはどうしても1週間の時間をおきたかった。彼の記憶はどうしてもコミカルにならざるを得ないからで、「渋い名脇役だった」という中途半端な美辞麗句で終わらせては、自分の中の杉浦直樹の記憶を台無しにしてしまいかねない。
んだこりゃ
(リシュボア、ファドレストランで遭遇した驚くべき一皿)

 杉浦直樹の記憶は、誰が何といおうと「薬用・紫電改(しでんかい)」であって、「いや、それ以外だ」と自信を持って言える人は、おそらく極めて高尚な趣味の人か、たいへんな見栄っ張りか、そのどちらかである。
 薬用「紫電改」は、25年前にカネボウから新発売になった、新しいタイプの男性用育毛剤。先行する資生堂「不老林」に対し、完全に後塵を拝する形になっていたカネボウが、ほとんど社運を賭ける覚悟で開発した新製品であった。
 なお、若い諸君で「後塵を拝する」がよくわからないヒトは、さっそく広辞苑を繙く(ひもとく)なりググって見るなりして、しっかり勉強すること。分かっているかもしれないが、今井ブログは英語講師のブログでありながら、連日熟読を怠らなければ現代文の実力を驚くほど充実させてくれる、アリガタヤ&ありがたやブログである。
夕暮れのカテドラル
(夕暮れのアルファマ、カテドラル正面)

 それ以前、男性用育毛剤と言えば「加美乃素A」しかなかった。加美乃素Aの「A」が何を意味しているかは、さすがのクマ蔵にもよく理解できないが、「加美」とはもちろん「髪」のこと。「の」が「乃」になっているのも素晴らしい。ふと昭和の関西の匂いを感じてググってみたら、なるほど本社は兵庫県神戸市。「株式会社 加美乃素本舗」は今もなお健在であった。
 70年代後半、第一製薬の「カロヤン」が育毛剤市場に参入。後に「カロヤン・ハイ」という新製品も出て、「髪は長—い友だち」のキャッチフレーズが流行した。CMでは、「髪」という漢字の上半分を「長」と「彡」に分解、この彡を3本の頭髪に見立て、3本の毛が次々に抜けていく。そこへ「髪は長—い友だち」のナレーション。確かに、「髪」の字の下半分は「友」である。
 若ハゲの恐怖におののく青年たちにとって、このCMは強烈。多くの青年が合わせ鏡で後頭部をのぞき込み、アタマを洗うたびごとに洗面器に残った抜け毛の数を数えて暗澹たる気分に浸ったものである。なお、「彡」の部首名は「さんづくり」。中学受験生諸君、記憶しておきたまえ。
 資生堂「不老林」とカネボウ「紫電改」が相次いで新発売になったのは、80年代中頃である。当時のカネボウは「レディ’80」など女性化粧品分野が絶好調。「唇よ、熱く君を語れ(渡辺真知子)」とか「君は薔薇より美しい(布施明)」とか、アホなことを平然と絶叫するCMの好感度も高くて、大学生のシューカツでも人気の的。元の会社名が「鐘ケ淵紡績」という、何となく暗い影は微塵もなかった。
 そのカネボウも、今はない。映画館に行けば、予告編の中で必ず1度は「KANEBO, for beautiful human life」の広告が入った記憶も懐かしいが、各部門は花王とクラシエと福助などに分散して、マラソンや駅伝で栄光を誇ったカネボウ陸上部も消滅。「鐘ケ淵」の駅は、東武伊勢崎線の片隅で、寂しくスカイツリーを見上げるだけになってしまった。
夜のコメルシオ
(夜のコメルシオ広場)

 で、杉浦直樹であるが、彼がイメージキャラクターになった「薬用・紫電改」は、付録のシデンブラシがあまりにも斬新。どんな育毛剤でも「つけるだけ」の時代に、「つけたあと、ブラシでたたく」「1日300回たたいて血行促進」という新機軸を打ち出した。
 いやはや、だからあの頃、薄毛で悩むオジサンは、ブラシでたたいて&たたいて、たたきまくったのである。1985年頃に薄毛で悩みはじめるヒトとは、1940年前後生まれ。戦前&戦中に生まれ、戦後の奇跡的復興を担った世代だから、薄毛に悩むのも早かったかもしれない。
 太平洋戦争当時、局地的戦闘機として名声の高かった「紫電改」を名称に採用したのも、おそらく見事に当たったのだ。戦中世代が子供の頃に熱く憧れ、「さあ、ここから一気に劣勢を挽回するぞ」という勢いを象徴する名称だったわけである。
 諸君にはYouTubeという強い味方があるから、25年も前のテレビCMを実際に見ることが出来る。杉浦直樹の「たたかれて、たたかれて、やっとここまで来たもんな。たたけば出てくるって、信じたいよな。なあカアサン」というセリフに重ね、「つけて、たたいて、300回。薬用・紫電改」のナレーションが入る。まさにCMの王道である。
 問題は、「たたくんなら、別に普通のブラシでもいいだろう」と考えたケチくさいヒトビトがたくさん出現したことである。洋服用やペット用のブラシをこっそり会社のデスクに隠し、残業中に何の見境もなくたたきまくったから大変だ。後頭部が血まみれで大騒ぎになったり、たたきすぎて後頭部の皮膚に炎症を起こしたり、そういう多くの笑い話のモトになった。
今夜も石畳
(今夜も石畳が美しい)

 やがて時代は、アデランスとアートネイチャーへ。「サクセスで抜け毛予防」や、1本の自毛の根っこに3本ずつ結びつける驚くべき3倍植毛の時代へ。さらに「脱毛の悩みを発毛の喜びに」のリーブ21も出現。余りにもおおらかな杉浦直樹の笑顔が、中年紳士の密かな悩みを癒した時代は終わり、時代の終わりとともに杉浦直樹も天国に旅立った。
 育毛剤云々についてこんなに詳しいと、「さては今井もそろそろ…」と勘ぐるヒトも出てくるだろうが、今井クマ蔵の頭髪については、まさに「年齢相応」であって、異様に濃いわけでも、異様に薄いわけでもない。白髪の塩梅(あんばい)もなかなかであって、皆無ではないが、ありすぎるわけでもない。
 万が一「異様に薄い」という方向に事態が進展したとしても、むしろ今井君は「おお、まさに年齢相応の重みが加わった」と歓迎する覚悟は出来ている。「白髪もゼロ、異様に頭髪が濃い」という状態より、「おや、白髪が増えましたね」「ちょっと年齢を感じるようになりましたね」と言われて、寂しく笑っているほうが、オジサマらしくてカッコいいじゃないか。
夜のバイシャ
(真夜中過ぎのバイシャ・シアード)

 さて、ここから「リシュボア紀行19」であるが、9月29日、「約40年前にアメリカの監獄から脱獄、飛行機をハイジャックしてアルジェリアに逃亡、身代金を奪って姿を消していた男が、ついにリスボン郊外で逮捕」という驚くべき逮捕劇があった。もうすっかりオジイチャンになって、ポルトガル女性と結婚していたというのである。こんな逃亡劇、映画だってなかなかお目にかかれない。
 クマ蔵も、リシュボアの夜の裏町で年取った彼とスレ違っていたかもしれない。彼も同じトラムに乗り、同じ店で同じイワシを食べ、あの夜も同じパパ・ベントの姿を見て、静かに涙していたかもしれない。
 どうも、今井君は涙もろくてイケナイが、怯えながらヒッソリ暮らした彼の40年と、残り少ない穏やかな将来を夢みていた彼の家族のことが思われてならない。諸君、これはどうしても映画にしてほしい。意欲ある諸君、すぐに台本を書きたまえ、映像を作りたまえ。
うらまち
(夜の裏町)

 5月17日、夕暮れにエボラからバスでリシュボアに帰ったクマ蔵は、「もう1度、ファドを聞きにいきたいな」と思い、夜9時の裏町を歩いてアルファマに向かった。ファドはファドレストランでしか聞けないのだから、ファドを聞くと決めた瞬間に「今日はどこで晩飯にしようかな」と思い悩む必要はなくなるのである。
 入ったのは、数日前と同じ「クルベ・デ・ファド」。前回は一番後ろの席だったが、今回は最前列、舞台に向かって一番左端のテーブルである。ファディスタの表情の右半分を、真横から眺めることになる。ま、さすがに予約なしでは、こういう最も条件の悪い席にしか座れないのもヤムを得ない。
片隅の席

ファド歌手
(準暗闇でファディスタを眺める)

 ファドが始まれば、目の前に料理があろうがなかろうが、当然のように照明が落とされて真っ暗になる。その準・暗闇で、欧米人集団とともに四苦八苦して食べたのは、タコとイカと得体の知れないお魚。どれも一様に味が濃くて、ワインよりビールが恋しくなる。
 それと、本日の写真1枚目に掲載した、ペースト状の野菜。「何だこりゃ」もいいところだが、準暗闇であるからこそ、こういうものも悪い連想一切なしで飲み込むことも可能なのである。
たこ

さかな
(準暗闇で食べるタコとお魚。異様に塩辛い)


1E(Cd) Bernstein:HAYDN/PAUKENMESSE
2E(Cd) Fischer & Budapest:MENDELSSOHN/A MIDSUMMER NIGHT’S DREAM
3E(Cd) Coombs & Munro:MENDELSSOHN/THE CONCERTOS FOR 2 PIANOS
4E(Cd) Barenboim:MENDELSSOHN/LIEDER OHNE WORTE 1/2
5E(Cd) Barenboim:MENDELSSOHN/LIEDER OHNE WORTE 2/2
total m20 y1206 d7167
最近の画像つき記事
 もっと見る >>

Ameba芸能人・有名人ブログ

芸能ブログニュース

    ブログをはじめる

    たくさんの芸能人・有名人が
    書いているAmebaブログを
    無料で簡単にはじめることができます。

    公式トップブロガーへ応募

    多くの方にご紹介したいブログを
    執筆する方を「公式トップブロガー」
    として認定しております。

    芸能人・有名人ブログを開設

    Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
    ご希望される著名人の方/事務所様を
    随時募集しております。

    Ameba芸能人・有名人ブログ 健全運営のための取り組み
    芸能ブログニュース