2011年09月15日(木)

Sat 110820 クルベ・デ・ファド(リシュボア紀行9) ラグビーW杯を黙殺する人々

テーマ:ブログ
 5月13日深夜、今井君はリシュボアの裏町にファドを聞きに出かけた。目指したのは「クルベ・デ・ファド」。観光客が初めてファドを体験するにはピッタリの店である。
 本来ならファドは、もっとずっと寂しい危険な裏町の、もっと危険な匂いのする店で、身をすくませて聞くもののように思う。しかし、ファド初心者とか初体験の身で、いきなりそういう店に入り込むのは、要するに「身の程知らず」である。
 ディズニーのインディジョーンズが「ここは観光客の来るところじゃないぞ」のセリフを吐くが、とりあえずまだリシュボア4日目の今井君はまだ観光客に過ぎないから、ファドもまずは観光客向けの安全で健康な明るい店から入ることにした。
夜の市電
(夜の市電)

 「久保田早紀」という名のシンガーがテレビか何かのCMソングで彗星のように時代の寵児になったのは、今井君がまだ愚かなオコチャマだった頃である。久保田早紀は当時女子大生か何かで、「異邦人」の大ヒットを残して一発屋の見本のように姿を消したが、彼女がラジオ番組で繰り返し語っていたのが、ポルトガルのファドの魅力である。
 当時の今井君は、自分の才能に何の根拠もない絶対的自信をいだきつつ、しかしなかなか世の中に出られなくて切歯扼腕の日々。そのオコチャマ・クマ蔵からみると、久保田早紀がどういうツテでいきなり世の中に出してもらえたのか、ほとんど嫉妬に近い悔しさでいっぱいだったが、それでもファドにだけは少なからぬ興味をいだいて、あれから数百年が過ぎた。
夕暮れ
(夕暮れのリシュボア)

 「クルベ・デ・ファド」は、リシュボア1番の繁華街バイシャ・シアードからアルファマを抜け、カテドラルの裏に入った薄暗い一角にある。クマ蔵どんが到着したのは夜9時。ファドが始まるのは9時半、数人のファディスタが登場してファドを熱唱し、終演は真夜中を過ぎる。
 ガイドブックには「予約なしでは入れない」とあるが、オペラやミュージカルじゃあるまいし、こういうものは予約して、着飾って、張り切って出かけるものではない。
 ファドの理想は、「フラリと店に入って、酒を飲みながら何の気なしに聞いていたら、何という理由もなしにのめり込んでしまった」である。今井君はその種の「フラリと感覚」を優先して、予約なしで入れなかったらスゴスゴ帰る方が好きである。
裏町1

裏町2
(リシュボア、夜の裏町風景)

 隅っこの小さなテーブルが1つだけ空いていて、運良く入店を許された。もっとも、欧米人の観光ツアー客が数十人単位で大きなテーブルを占拠していて、「暗い裏町で真夜中過ぎまでファドにのめり込む」という緊迫感は皆無である。ファドを聞くなら、「危険な裏町に来ている」という後ろめたい罪悪感のようなものがほしいが、ま、今日は初体験だ。そこは我慢して気楽にくつろぐしかない。
クルベデファド1
(クルベ・デ・ファド正面入り口)

 もっとも、別の緊迫感ならある。すぐそばのテーブルに席を占めた頭の薄い中年男が、盛んに「シーッ!!」「シーッ!!」と静粛を促しながら、クマ蔵の方を睨むのである。「ファドは静かに聴くモノだ」という厳しい表情で、周囲のツアー客の喧噪を嗜めているのは分かるが、なぜ今井君を睨んでいるのか理解できない。
クルベデファド2
(おじさんがニラんでる)

 ケータイのカメラで4~5枚写真を撮ったのが気に入らなかったのかもしれない。確かに、日本のケータイで写真を撮ると、どうしても大きなシャッター音が出てしまう。おそらく盗撮防止のための機能なのだが、静かな教会や、今日のファドレストランみたいな場所で写真を撮るのには甚だ迷惑である。どうにかならんものかね。
ファドギター
(ロビーにはギターが無造作に置かれていた)

 というワケで初体験ファドは、妙な中年男に3時間ニラまれ続けの妙竹林な緊張感の中で終演。店を出て、赤ワイン2本の軽い酔いを楽しみながら、人影もない午前0時のリシュボアを練り歩いた。
 暗い脇道から、いつどんな男が現れてもフシギではない。しかし、油を流したようにキレイに光る石畳の美しさに見入って歩くうちに、バイシャ・シアードの駅についてしまった。
光る石畳1
(光る石畳)

 「帰りは深夜になるから、タクシーに乗る方が無難」とガイドブックは忠告してくれていたが、諸君、寂しいファドをたくさん聞いた後は、白く光る石畳の道に足音を響かせながら、トボトボ歩いて帰るのが正しい。むしろ、その帰り道まで含めて、初めてホンモノのファドなのである。
 とりあえずアマリア・ロドリゲスを聞きたまえ。ファドの基本である。アマリアを聞いて「こりゃ、古くさい。あまりあ好きじゃない」と感じたら、MADREDEUSでもいい。MADREDEUS「ANTOLOGIA」はiTunesでも買える。クマ蔵は彼女たちのマワシモノではないし、MADREDEUSは厳密にファドではないが、聞けば必ずポルトガルに行ってファドを聞きたくなると信じている。
光る石畳2
(雨が降っているわけでもないのに、石畳はこんなに美しい)

 さて、2011年9月、ラグビーのワールドカップが佳境を迎えていて、世界中で10億人を超えるヒトビトがテレビ中継にかじりついている。世界の人口を70億人とすれば、7人は1人がラグビーに熱狂し、ラグビーは歴史上おそらく最も激しいスポーツだから、心臓マヒを起こしかけるオジサンも少なくない。
 ところが、先進国の中で1つだけ、そんなことをほとんど知らされていない珍しい国がユーラシア大陸の東の端にあって、その国の名を日本、またはジャパン、西の果てポルトガルではジョパンゥオと呼ぶ。
 世界中がこれほど熱狂しているのに、この国はマコトにケッタイであって、ジョパンゥオ代表の男たちが世界ベスト4の強豪フランスに大善戦しても、一切興味をもたない。TVニュースのスポーツコーナーをどんなに真剣に見ても、ラグビーのラの字も画面に出てこない。
 後半残り20分、日本代表は劇的なトライを重ね、25-21の4点差に迫った。開催地ニュージーランドの観衆は熱狂、スタジアムは「ジャパン、ジャパン」の異様な大声援に包まれる。唯一実況中継していたCSテレビのキャスターは「ココはホントにニュージーランドなんでしょうか?」と感激の涙声をあげた。
 しかし、他のTVスポーツニュースのトップは「なでしこジャパン、軽めの調整で中国戦に備える」。紅白戦で和やかに笑いながらパスやドリブルを試す女子サッカー選手の顔がアップで映し出され、キャスターは「有終の美を飾ってほしいですねえ」と笑いあい、「さ、それではプロ野球です」。世界の強豪相手に歴史的勝利に迫ったラグビーについて、これほど完全に黙殺できるとすれば、この国民はよほど優秀なのである。
クルベデファド3
(クルベ・デ・ファドは、余りにも有名店である)

 終わってみれば47-21。ダブルスコア以上の大差がついたが、これは残り20分での逆転を狙い、選手が一様に前がかりになったヤムを得ない結果である。小学生のころからラグビーを見続けた今井君の目には、日本のラグビーが4半世紀前とは比較にならないほど成長したのがハッキリ見てとれた。
 もちろん残念でならない部分も多い。レフェリーのクセがハッキリ分かる判定を繰り返されても、スクラム1列が修正能力に欠けていたこと。前半、高校生でもミスしないようなイージーなゴールキックを2本も外したこと。キックミスがなければ、フランスを精神的にもっと追いつめられたはずだ。「せめてフルバックに五郎丸がいたらな!!」は、大西鉄之祐のラグビーを愛した者に共通の嘆きだったと信じる。
 余りにも外国人選手が多くて、「これってホントに日本代表?」とシラケてしまうのも残念。誰でも言いそうなことだが、メンバー表の名前の半分がカタカナでは、高校野球の青森・光星学院が「大阪第2代表」でしかない感じなのと大差ない。外国人選手はせいぜい2名にトドメないと、いつまでたっても「黙殺」状況は改善されないんじゃないかね。

1E(Cd) George Benson:THAT’S RIGHT
2E(Cd) George Benson:STANDING TOGETHER
3E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/THE COMPLETE PIANO SONATAS⑤
4E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/THE COMPLETE PIANO SONATAS⑥
5E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/THE COMPLETE PIANO SONATAS⑦
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