2011年05月22日(日)

Tue 110517 「黄金のマインツ」から自由奔放に連想すること シャガールの青い教会

テーマ:ブログ
 さて、やっとのことでマインツであるが、ここはライン河とマイン河の合流点、古くからの交通の要衝である。商業と宗教の街。笹本駿二「ライン河物語」によれば、中世から近世に到るまで、ライン河流域で最も重要な都市の1つ。「黄金のマインツ」と呼ばれる美しい街である。
 なお、「黄金のマインツ」と書いて「コガネのマインツ」と発音する。「おうごんのマインツ」ではないから注意。確実に「コガネの」と発音してほしい。「おうごん」には、つい最近まで、たいへん困ったニュアンスがついて回っていた。
 今井君の世代は、「水洗トイレがまだ普及していない時代」を経験した最後の世代である。世の中は、「汲取から水洗へ」という現代化の大きな潮流の中にあって、「あそこの地域は水洗になった」「このあたりはまだ汲取式でねえ」という日常会話が生きていた。
 諸君、「汲取式」という前近代的なものを経験したことがあるかね。詳しいことは書かないが、次第次第にモノが溜まってくると、家中に例のニオイがプーンと立ちこめるのだ。トイレというより、便所。便所とは、ニオイに耐える戦いの場だったのである。
 ニオイは容赦ないから、食事中も、睡眠中も、読書中も、たえずニオイにさらされることになる。今井君が大学生時代に生活していた千葉県松戸の松和荘は、その「汲取式」の最後の生き残りだったから、1日1冊主義の世界は、そのまま汲取式の世界だったのだ。
シャガールドン
(話題に馴染まない美しさのマインツ聖シュテファン教会、シャガールによる青いステンドグラス)

 中3まで暮らしていた秋田市土崎の国鉄職員宿舎も、もちろん汲取クンである。父が勤めていたのが国鉄土崎工場。もちろん、元「鉄道省・工機部」であるから、地元のヒトは職員宿舎とは呼ばず、「官舎」と呼んだ。官舎にはバットを振り回しても危なくない広い庭があり、松の木が日よけになって、真夏でもとても涼しかった。
 明治後期だったか大正初期だったかの建築だから、すでに築60年のボロボロ木造ハウス。天井裏にはたくさんのネズミが住みついて、毎晩人間が眠りについたころ、彼らの大運動会が始まる。ネズミさんがお風呂の排水溝につまって、水が流れなくなることもしばしばであった。
 そういう明治の香りタップリの環境の中で可愛い今井君は成長してきたのだが、今井君の部屋は最初3畳間。昔は「女中部屋」といったらしい。おお、さすが鉄道省。戦前には、ちょっと管理職になれば、「女中」などというものが官舎に住み込んだりしたのだ。
しゃがーる
(さらにシャガール)

 中3からは4畳半の部屋に昇格。「1日1冊主義」みたいなバカなことを始めたのはまさにこの4畳半時代。おかげで国語だけ妙に優秀になって、そのぶん数学の頭はカラッポ。うーん、あのとき、あの部屋で、後の東大2連敗が確定したのであるね。
 しかし、どの部屋にいても、官舎の西の端っこにあるトイレのニオイだけは防ぐことが出来ない。あのニオイは、まさに「便所」の名にふさわしい。
 なぜ便所を西陽に年中ジリジリ暖められるあの場所にしたのか。官舎の設計者に苦情を言いたいほどだが、設計者はおそらく明治初年生まれのオカタ。下手をすれば江戸時代のオカタ。セッシャだのオヌシだのゴヨーダ&ゴヨーダのオカタに苦情なんか、言うだけ無駄というものである。
 そのころ、「黄金車」というトラックが街を走り回っていた。黄金車には小型と大型があって、父と母の共通した意見では「大型が来ると臭くないが、小型の黄金車だとヒドく臭うね」ということであった。正式名称バキュームカー。幼児の頃の今井君は、バキューム・カーをバキュー・ムカーだと誤解していたのだそうである。おお、黄金車には大いにお世話になった。
 黄金と言えば、「白銀も黄金も玉もなにせむに。勝れる宝、子にしかめやも」がある。「シロガネもコガネもタマも」と発音する。コガネをクガネと発音してもいい。小学生のころ社会の授業で習った。「小西亀ヤモ」という名前のオジサンがいるんだと思って、「これって誰ですか?」と質問したバカなヤツもいた。こうなると、山上憶良もつらい。
 昭和初期の小学生たちは、この歌にフシをつけて歌わされたようである。クマ蔵の母・快傑ババサマは、つねに「奥の細道」を暗誦しながら料理&洗濯に励んでいたものだが、1週間に一度ぐらいはこの歌を歌いながら台所に向かった。
 だから、今井君は今でも山上憶良をフシをつけて歌える。まさに「三つ子の魂百まで」であり「門前の小僧」。音読の重要性を思い知らされるエピソードであるね。万葉集みたいなものを教えるのに、昔の文部省はなかなか素晴らしいことを思いついたのである。
あいぷぶろい
(マインツ「アイスクルプ・ブロイ」外観)

 さて、再びやっとのことで「黄金のマインツ」である。何だかワザとやっているみたいに脇道に逸れてばかりいるようだが、もちろんワザとやっているのである。ふざけてばかりで、マコトに申し訳ない。
 しかし諸君、今キミが読んでいるのは、ブログである。「訳の分からないことを延々と書いてばかりで、何の役にも立たない」のは、あまりにも当たり前。ブログや小説やエッセーを読んで、「何かの役に立つだろう」などと考えるのが、そもそもの間違いである。
 で、5月の冷たい雨に濡れたマインツは、寂しいことこの上ない。観光客などという暢気なヒトは余り見かけない。日本で売っているガイドブックでも、マインツの扱いは余りにも小さい。たった2ページ、レストランの紹介まで含めてやっと3ページ。「コガネのマインツ」の威信を傷つけること甚だしいのである。
 ライン河とマイン河の合流点は電車からも見えたから、まず今井君が目指したのは巨大な大聖堂である。途中、シラーの像が雨に濡れてやはり寂しく立ち尽くしている。大聖堂の中も外も、イギリス人中高年の団体がつまらなそうにガイドさんの説明の聞いているばかり。ガイドブックの事情は、日本もイギリスも同じらしい。
マインツビールや
(マインツ「アイスクルプ・ブロイ」内部)

 雨の街を15分ばかりトボトボ歩いて「聖シュテファン教会」に向かう。シャガールが制作した青いステンドグラスが全面を覆って、教会の内部ももちろん冷たい青に染まっている。観光客が2~3人、黙りこくってステンドグラスを見上げるばかりである。
 16時過ぎだったが、何故かミサが始まって、ミサに出席するおじいさん&おばあさんが10人足らず、小さな椅子に小さく丸く固まって座っている。みんな冷たい青に染まって、寒さがいよいよ身にしみる。
 寂しさと冷たさと寒さが身に沁みれば、マトモなヒトならみんな敬虔な感動にブルブルっと身を震わせるところであって、シャガールの意図ももちろんそこにある。しかし酔っぱらいのクマ蔵にそんな敬虔なブルブルを求めるとすれば、「そりゃシャガールさん、甘すぎますよ」であって、クマ蔵の心が真摯に求めるのはビールとワイン以外ありえない。
まいんつ飲み屋
(アイスクルプ・ブロイ、白ワインとプレッツェル)

 聖シュテファン教会のすぐ近くに、マインツ唯一のブルワリー「アイスグルプ・ブロイEisgrub Bräu」があって、これはどうしても訪ねなければならない。すでにマインツ中央駅からは1駅分遠くまで来てしまったが、やむを得ないものはやむを得ない。
 時計は17時。この時間帯に入店すれば、何がどう転んでも東洋のヒョーロクダマになることは明らかなのであるが、ヒョーロクダマだろうと何だろうと、酒に対する敬虔な気持ちを失うことは許されない。
 思い切って入ってみると、店内には革ジャンにジーンズの30代男性客が1人だけ。明らかにこの店の常連であって、これまた30代半ばの女性店員といかにも親しげに世間話に興じている。クマ蔵が入っていくのを見ながら、2人とも「あれま、困りましたね。ヒョーロクダマの闖入ですか?」という表情を隠せない。
 しかしもちろん、そんなことは想定内である。早速、でかいジョッキでビール。続いて黒ビールにプレッツェル。身も心も温まったところでワイン。せっかくだから今日もまた同じようなメトメトしたドイツ料理を注文して、約1時間半。お腹をパンパンにしたクマ蔵は、今日の「くま散歩」に静かに幕を閉じることにした。

1E(Cd) Jochum:BACH/JOHANNES PASSION 1/2
2E(Cd) Jochum:BACH/JOHANNES PASSION 2/2
3E(Cd) The Scholars Baroque Ensemble:PARCELL/THE FAIRY QUEEN1/2
4E(Cd) The Scholars Baroque Ensemble:PARCELL/THE FAIRY QUEEN 2/2
5E(Cd) 村田陽一&Solid Brass:DOUBLE EDGE
total m78 y405 d6370
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