2011年05月21日(土)

Mon 110516 マインツに「くま散歩」 岩波新書で「1日1冊主義」を目指した頃のこと

テーマ:ブログ
 ドイツ滞在4日目は、フランクフルトから普通電車で40分ほど、マインツの街を訪れることにした。フランクフルトの若いオネーサンに「刻印機って何ですか?」と聞き返されたのは、まさにこの時のことである。
 薄暗いというより、危険を感じるほどに暗いフランクフルトHbf(ハウプトバンホフ=中央駅)の地下ホームから、近郊電車Sバーンに乗る。Sバーンは、高崎線とか東海道線の普通電車の感覚。東海道線で30分なら横浜、高崎線で30分なら大宮。そういう近郊の街にブラッと散歩に出かけるのだから、要するに地井武男の「ちい散歩」。この場合は「くま散歩」ということになる。
 クマ蔵が海外で一番好むのがこの小旅行形式。前の晩にすっかり飲み過ぎて夜中までハシャぐ。朝10時半まで寝ていて、やっと起き上がってもまだ頭が重い。お風呂は面倒だからシャワーだけでゴマかし、11時半か12時に「そろそろ掃除のオバサン『この怠け者!!』と怒鳴られそうだな」という時間帯になって、やっとノコノコ散歩に出かける。
マインツ青い教会
(マインツ、ザンクトシュテファン教会。シャガールによる青いステンドグラス)

 こういう朝は(というか、とっくに昼であるが)ヒゲも剃っていないから、顔中にヒゲが進出、というか侵略してくる。普段から今井君のヒゲヅラを見慣れているヒトは、「あれれ、クマ蔵って、ヒゲを剃るの?」と不思議に思うかもしれないが、もちろんクマ蔵は仕事に出かける時は毎朝ヒゲを剃るのである。
 左右の頬、アゴのあたり、耳の横その他、チャンと丁寧にヒゲを剃らないと、おヒゲさんはあっという間に顔中を侵略して、「真っ黒にコケむした顔」が出来上がる。黒くコケむしてしまうと、鏡の中の顔は、「顔」と呼ぶよりもむしろ「岩」であって、海外で怠け放題怠けている時のクマ蔵は、「真っ黒にコケむした岩または巌(いわお)」をもつ、形容の難しい恐ろしい生物と化している。
まいんつ大聖堂
(マインツ大聖堂)

 マインツについては、駿台生だったか大学生だったかの頃に読んだ岩波新書で知った。笹本駿二「ライン河物語」である。予備校時代から大学2年の秋の頃まで、今井君は大量の岩波新書を購入し、1日1冊のペースで岩波新書を読破することに、ほとんど人生を賭けるような思いでいた。
 予備校生や大学生がそんなにオカネを持っているわけはないから、岩波新書を漁るのは専ら神田神保町の古本屋街である。店先に「1冊50円」みたいなテーブルがあって、1週間に1回神保町に出かけていき、7冊購入して帰る。50円×7冊=350円なら、大学生のおサイフでも何とかなるのである。
 早稲田の古本屋街も悪くないのだが、今井君はどうしても神保町が好き。住んでいたのが千葉の松戸だから、早稲田から地下鉄東西線に乗って九段下で降り、九段下から新御茶ノ水まで歩くと、神保町の古本屋をくまなく見て歩くことができる。
 予備校時代は大宮とお茶の水の往復。大学に入ってからは松戸と早稲田の往復。ともにうまくいけば電車の中だけで3時間になるから、電車+αで「1日1冊主義」は十分可能なのである。加藤周一でさえ「私も1日1冊主義に憧れたことがありました」と述懐しているぐらいだから、今井君がそういうバカなことに人生を賭けたとしても「バカなヤツ」と責められるイワレはない。
しらー
(マインツ、シラー通りのシラー像)

 若い頃は誰でも「早く読める」「読書が速い」「速読ができる」みたいなことに憧れるし、友人の中には「どれほど天才的に速読ができるか」を誇るようなイヤなヤツもいる。岩波新書なら、ムリをすれば4時間で読み飛ばすことも不可能ではない。今井君は相当な切迫感をもって「電車の中の1日1冊主義」を続けたものである。
 岩波新書は、昭和30年代に赤版、40年代に青版、50年代に黄版がそれぞれ1000冊出版されたところで、正直言ってコドモには難しかった。21世紀になって雨後のタケノコのように出版が始まった「新書ブーム」の新書とは、著者のスタンスが全く違うのである。専門書のコンパクト版のつもりで書いている著者だって少なくなくて、「新書なら1時間で読破できる」と豪語するヤツがいても、なかなか信じがたいものがあった。
まいんつ大聖堂前
(マインツは雨だった。大聖堂前で)

 今井君の1日1冊主義は、大学3年になって途絶えた。東洋文庫ファンになり、来る日も来る日も「耳袋」だの「今古奇観」だの南方熊楠「十二支考」だのを読まずにいられなくなったからである。その手のものを切迫感の中で読んでも、全然楽しくないからである。あれからは、読書はホントに暢気になった。「速く読まなきゃ」という切迫感さえなければ、読書は楽しいものである。
 「1日1冊」の枠にこだわりすぎると、読書が新書レベルのものに偏って、一生ビジネス書や入門書ばかり漁って終わることになってしまう。古典文学大系とか、分厚い哲学書とか、外国語の原書とかを1日1冊の枠に入れてしまうのは、そもそも不可能である。そんなバカバカしほど当たり前なことに気づかずに、18歳から21歳まで、無用の切迫感に押しつぶされながら生きていた。
マインツ駅
(マインツ中央駅)

 あれま、肝腎のマインツについてちっとも書かないうちに、話はすっかり長くなってしまった。マインツは、かつて「黄金のマインツ」と呼ばれたほど繁栄した商業都市。神聖ローマ帝国皇帝を選ぶ権利のある7人の「選帝侯」のうちの一人が、このマインツの大司教であった。
 諸君、大司教がいるほどの繁栄だったのである。「黄金のマインツ」である。それほどの大都市を「ちい散歩」「くま散歩」の対象にして、軽くコッソリ通り抜けようなどというのは許されることではない。ここは、明日もう1日キチンと座り直して、じっくりマインツのことを書こうと思う。

1E(Cd) Münchinger:BACH/MUSICAL OFFERING
2E(Cd) Münchinger:BACH/MUSICAL OFFERING
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4E(Cd) Anne Queffélec:RAVEL/PIANO WORKS 2/2
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