2008年10月16日(木)

Mon 081013 難問に夢中になるな マッジョーレ紀行16(ジュネーブ日帰り旅行1)

テーマ:..するなシリーズ
 今も変わらないかもしれないが、私が受験生だった頃には「難問大好き人間」というものが少なからず存在して、東大とか旧帝国大学とかそのレベルの難関大学を目指すような人は、とかく難問が好きで難問をやりたがる傾向があった。数学や物理には「難問題の系統とその解き方」などという恐ろしいタイトルの参考書があって(おそらく今でもあるだろうが)、私のような劣等生だと2日や3日考えても糸口さえ見つからないような問題がズラリと並んでいたものである。
 昨日書いた通信添削オット会などというのも、もともと「超難問であること」がその価値だったのであり、英語に5時間、数学に10時間、それでも真っ赤に添削されて返却されてきて、得点は3割4割が当たり前。しかし、難関校を目指すほどのエライ受験生はそんなことでムクれたりムカついたりは決してしない。私なんか、そんなに苦労したのにそんなに真っ赤にされたら「けちょんけちょんにされた」と思って逆恨みするところであるが、エライ受験生はその真っ赤な答案の隅々まで検討して、隅々まで自分の血とも肉ともするらしいのである。破いちゃったり、燃やしちゃったり、捨てちゃったり、やめちゃったり、そういうイケナイ自殺的行為に走ることは、決してしないのだ。
 難しければ難しいほどうれしい、真っ赤にしてもらえばもらうだけ快感が走る、得点が低ければ低いほど優れた問題だと考える、やはり私のような普通の受験生から見ると信じられないようなエライ人たちが存在したのだ。しかも、彼らは何しろエライわけだし、自信満々で、余裕たっぷりで、ただ単に東大に合格するだけではなくて東大理Ⅲにさえ合格確実なヒトたちだったりするから、周囲の受験生に対する影響力も並ではない。「田中クンがやっている参考書」「鈴木サンがやっている問題集」への憧れは、学力の点では田中クンや鈴木サンの足下にも及ばないような平凡な受験生にまで広がっていく。
 かくして、旧帝国大学の受験生とはいっても、半分は記念受験のヤツとか、まだボーダーライン上をウロウロしているような受験生も、オット会を申し込み、同じ参考書と問題集を揃え、四苦八苦の毎日が始まることになる。まあまあ優秀といってあげてもいいぐらいの人、偏差値55から65ぐらいの人なのだが、田中クンや鈴木サンと同じ参考書・問題集が本棚にズラリと並んだりすると、もうそこから悲劇が始まる。毎日が四苦八苦、毎日が屈辱、毎日マッカッカ。3時間かけて英文読解やっと1問、4時間かけて数学1問解いたら完全に検討はずれ、3日かけて解いた問題におっきなバツ一個つけられて返却。しばらく基礎から離れていたら、基礎的標準的な問題も何だか怪しくなってくる。そうやって、毎年たくさんの真面目な受験生が、合格すべき大学をあきらめ、本来なら進めるはずの道を閉ざされ、第3志望や第4志望の大学にイヤイヤ進学することになるのだ。

(左、ニャゴロワ。右、ウサロワ。下北沢付近で発見された珍生物である)

 彼ら彼女らの悲劇は、難問でもスラスラ解いてしまう超超優秀者に憧れるあまりに、「実力相応の標準的な問題にたくさん取り組む」という学習の王道を忘れてしまったところに原因がある。学部受験段階での難問などというものは、そのほとんどが悪問であって、悪問だから難しいのであり、問題に欠陥があるから解きにくいだけ、ということも多い。しかも、そんな難問を制限時間内に正解できるのは、非常に限られた人数しかいないから、その問題が解けるか解けないかは合格不合格の分かれ目にはならないのだ。
 マトモな教師なら口を揃えて同じことを言うだろうが「難問なんか、いくらやっても力はつかない。力がつくのは標準的な問題である」。自分にある程度の自信があっても、「東大ぐらい受験勉強なんかしなくてもラクラク合格できる」というレベルでない限りは、難問集に興味をもってはならない。あれは、受験勉強なんか全くしなくてもどこでも合格できるという、ヤンゴトナキ人たちのための趣味と道楽に過ぎないのだ。
 以上のことは、中学受験や高校受験にも同様に当てはまるだろうし、司法試験や公認会計士試験や医師国家試験にも通じる話である。門外漢はあまり発言しないほうがいいのかもしれないが、司法試験での難問とは、通常司法の場で問題にならないような事案なり論点に関するものであって、司法を志す人がその前段で目指すべきことはあくまでリーガルマインドの養成だったはずだ。リーガルマインドの養成にはあくまで基礎的標準的な問題についての絶えざる思考訓練が必要なはずである。

(熟睡中も思考訓練するナデシコ)

 大学受験の話に戻ろう。最近の状況を見ると、「難問大好き人間」を喜ばせてひとモウケしようとする嘆かわしい傾向はますます強まっているような気がしてならない。参考書や問題集だったうちはまだよかったのだ。今はもう、首都圏・関西圏を中心に「余裕ある者の道楽」としか見えないような塾が乱立し、しかも着実に低学年化しているのである。高校生を集めて「大学での数学」を大学院生が教え、ホンモノの英語と称して1時間に100ページの速読を課すような指導が、どれほどたくさんの有望で有能な高校生を潰してしまっていることか。そこに誘惑さえされなかったら立派に第1志望に合格できたはずの受験生が、どれほどたくさんそこで潰されて夢を諦めさせられていることか。
 資格試験まで含めてあらゆるステージの受験生諸君に、もう1度しつこく繰り返しておきたい。難問への憧れは捨てたまえ。標準的な問題に没頭したまえ。基礎を徹底したまえ。大金持ちの真似をして、中途半端な金持ちが「投資だ」「株だ」「レバレッジだ」と大騒ぎをした挙げ句の果て、今回の金融危機でどれほど青い顔をせざるを得なくなったか、まさに他山の石とすべきなのである。

(ストレーザ駅に入ってきたミラノ発ジュネーブ行のEC)

 9月10日は、ジュネーブまでの日帰り旅行に費やした。ストレーザを朝9時27分に出るECに乗れば、ジュネーブ着12時50分。帰りの最終電車18時10分ジュネーブ発だから、5時間ほど滞在できる。5時間で、国連ヨーロッパ本部、レマン湖畔、ジュネーブ旧市街、カルビン派の教会総本山などを駆け足で見てこようという計画である。日曜日だから、静かで落ち着いたジュネーブを堪能できるだろう。ストレーザには21時30分に戻ってくる予定である。
 感じのいい駅員のおじさんに感動しながらストレーザの駅を出ると、しばらくの間左手の車窓は青いマッジョーレ湖が続く。今日も快晴である。すぐに短いトンネルに入って、電車は宿泊中のヴィラのすぐ後ろに出た。一昨日番犬の群れから逃げ回った、憎っくき牧場のあたりである。そこから30秒ほどで最初の駅があって、その名前がバベーノである。例の酔っ払いジイサマが連呼していた「バベーノ」は、実はヴィラからすぐ近くだったのだ。

(国境、ドモドッソラ駅)

 30分ほどでドモドッソラDomodossolaの駅に着く。イタリアとスイスの国境の駅であって、ここで電車は約20分停車して機関車をスイス国鉄のものに取り替え、車内にはパスポート・コントロールの係官が回って客全員のパスポートをチェックする。回ってきたのは30歳前後のイケメン3人ほど。パスポートをチェックしてすぐに立ち去ろうとしたが、一人が気づいて「荷物はどうしたんだ」と聞く。確かに、東洋人が国境をまたいで旅をするのに、デカイ荷物を一つも持たずにほぼ手ぶらの状態というのは、怪しいことこの上ない。アンダータ・エ・リトルノ(往復)だ、荷物はストレーザのヴィラに置いてある、何とかそういうこともイタリア語で説明できるぐらいにはなっていて、それが我ながらたいへん嬉しかった。「アンダータ・エ・リトルノ」はイタリア人独特のポーズがあって、嫌らしいことにそういうポーズも身についてきたのである。
 ここからスイス国鉄である。車内放送は、4カ国語になる。イタリア語・フランス語・ドイツ語・英語の順番で、一人の車掌が4カ国語を一気に喋るのだが、発音も非常に流暢。すべて日本で購入する語学CDとほとんど変わらない流暢な発音であって、訛のようなものはあまり感じられない。こういうのを聞くと、身の引き締まる思いになる。まあ、予備校という非公式の場であるとしても、一応私も語学の講師である。4カ国語、「何とか通じる」とか、そういうレベルで嬉しがっていてはいけないのだ。この車掌さんぐらい流暢に話さなければダメなのだ。私は生真面目だから(もちろんウソ)、それを反省して暗澹たる気持ちになりながら、国境のシンプロントンネルをくぐった。

(アルプスをくぐる直前、イタリア側の車窓)


(アルプスをくぐった直後、スイス側の車窓)

 「シンプロントンネル」と気軽にいうが、これはアルプスの真下をくぐり、かつアルプスを一気に越えてしまうたいへんなトンネルである。頭上はモンテローザとかマッターホルンとか、世界で一番有名な山々である。そういう横綱級の山々の下を走っているというプレッシャーもあって、耳が痛くなるほど電車内の気圧が上がる。トンネルを出ると、スイス。日光の当たり方が全く変わってしまったようで、岩だらけのアルプスを越えてくる太陽の光は秋の半ばのような淡い色をしていた。

(スイス、車窓から見た岩だらけの山)


1E(Cd) Holly Cole Trio:BLAME IT ON MY YOUTH
2E(Cd) Earl Klugh:FINGER PAINTINGS
3E(Cd) Brian Bromberg:PORTRAIT OF JAKO
4E(Cd) John Coltrane:IMPRESSION
5E(Cd) John Coltrane:SUN SHIP
6E(Cd) John Coltrane:JUPITER VARIATION
7E(Cd) John Coltrane:AFRICA/BRASS
10D(DvMv) THE BEACH
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