2008年10月15日(水)

Sun 081012 通信添削に年会費を払うな マッジョーレ紀行15(ペスカトーリ島)

テーマ:..するなシリーズ
 昔は今のように全国各地に大学受験用の塾があふれてはいなかったから、大学受験の勉強では「ラジオ講座」と「通信添削」とが主流だった。中でも通信添削は昔の優秀な高校生の必須アイテムであって、普段は田舎に住んでいる高校生が「全国」を相手にできる晴れの舞台として、模擬試験と同じぐらいの地位を占めていたと言っていいかもしれない。今は大手2社に絞られた感があるが、私が高校生だった頃には他に「通添オリオン」「アルファ」「英協の添削」などというのもあって、それぞれたいへんな繁盛ぶりだったと記憶する。
 ただし、その「繁盛」がクセものである。「東大合格者の6割が会員」などという宣伝文句をみると、素人目に見れば「さぞかし素晴らしい教材なのだろう」と考えてしまうが、合格実績が高いのは教材がいいからではなくて、もともと優秀な高校生がたくさん会員になるからである。超がつくほどの優秀ではない高校生にとっては、こういうものはむしろ毒にしかならないことが多い。昔から「これほど続かないものは他にない」ものの代表格なのではないかと思われるほどである。
 春になると、田舎の素朴な高校生たちも、遅ればせながら「そろそろ本格的に始めないといけないな」という気分がツクシのように芽生え始める。県内トップとか、そこまでいかなくても上位校と言われるような高校の生徒は、実態はどうあれプライドと見栄だけは昔も今も変わらないから、「東大合格者の6割」の宣伝には弱い。いつの間にかクラスのほとんど全員が申し込んでいて、まるでそれを申し込まなければそのことだけで仲間はずれになりそうな雰囲気さえ漂うようになる。実際、休み時間や放課後の会話にも「あの問題はどう解いたか」「締め切り前に答案を郵送できたか」「前回の添削問題は何点取れたか」などという話題が多くなって、「それ何のこと?」とは聞きにくい状況にさえなるのである。

(ナデシコによる「ダヤン」)

 ただ、それは春まだ浅いうちだけ。5月になって汗ばむような日も増えてくると、それに反比例するように通信添削の話は出なくなっていく。つまり、問題が難しすぎてみんな諦め始めるのだ。プライドと見栄は残っていても、地方の公立校で丸々2年「文武両道」をやってきた高校生にとって、乙会(おっとかい・仮名)の問題は、ちょっとやそっとでは手が出ないぐらいの難問なのである。高2までで高校のカリキュラムを終えた首都圏などの超優秀中高一貫校の生徒ならいざ知らず、部活に夢中、学園祭に夢中、体育祭の棒倒しと騎馬戦に夢中、カノジョorカレシに夢中、合唱コンクールに夢中、勉強は定期テスト前の2~3日だけで間に合わせてきた文武両道クン/サンが、見栄だけで乙会(おっとかい・仮名)に立ち向かえるはずなんかないのだ。
 というわけで、6月か7月には「あれは、なかったことにしよう」という雰囲気が支配的になる。そんなことより、期末試験が大事。あんな難しいヤツに時間をかけてなんかいられない。しかし、みんな「年会費」を払ってしまっているし(まとめて払ったほうが安くなるのだ)、「途中退会しても年会費は返金できません」だから、恐ろしいことに、添削問題と機関誌だけは10日に一回必ず郵送されてくる。
 こうなると、もう拷問のようなものである。まず、母親との言い争いになる。お金を払ったのに、息子/娘が答案を提出している様子はない。母親というものには「あら、また問題が郵送されてきた、お父さんに叱ってもらおうかしら」と考える性質があるから、夜には父親が苦い顔をしてビールのコップを置き「おい、ちょっとここに座れ」と説教を始めることになる。本当は父だって息子/娘に説教なんかしたくないのだが、妻が目配せしてお説教の催促をするから仕方がない。子供のほうでは、友人たちも「もうやめた」と言って「なかったことにする」のがクラス全員の合意だから、今さら親にそんな説教をされても困るし、期末テストが近い今こんなことで時間を潰してほしくない。やむなく強く言い返し、父も声を荒げ、母はそれに加勢し、ムカついて席を立った子供は自室のドアをバタンとたたきつけて、じっと部屋に籠ることになる。ムカつきすぎて、もう勉強どころではない。こういうケンカが、10日に1回問題が送られてくるたびに繰り返される。これはもう地獄絵図である。
 宣伝文句にまどわされるより、まず大先輩の忠告を聞きたまえ。「東大合格者の6割が会員」と言っても、それは「お金を払った人」のことであって「最後までキチンと続けた人」ではない。「申し込んだ人」と「実際にやり続けた人」は全く別である。NHKの語学講座と同じで、4月には大量の人がやり始め、5月か6月にはもうとっくに諦めてやめてしまっている。語学講座のテキストだって、売れるのは4月だけ、3月の最終号まで続けている人は正直言ってごく少数である。
 どうせ途中でやめてしまうことが見えている通信添削にお金を払う余裕があるなら、標準的な問題がたくさん掲載されている問題集を1冊購入したまえ。力をつけるには、「おっとかい」の難問よりも、ごく標準的な問題をしっかりたくさんやるのが一番である。英作文その他の記述論述式問題については、普段から塾や予備校や高校の先生としっかり仲良くなっておいて、たまに面倒を見てもらうようにすればいい。普段からたくさん話しにくる親しい生徒が礼儀を尽くして頼み込めば、ほとんどの先生はむしろ喜んで添削してくれるはずだ。その頻度は、まあ月に1回ぐらい。顔も見えないしどんな人なのかもわからない「赤ペン先生」などという匿名の存在に10日に1回添削してもらうよりも、そういう先生に1ヶ月に1回、目の前で話をしながら心を込めて添削してもらうほうが遥かに効率的である。
 ついでに言うが、そんなふうに身近な先生とたくさん話して仲良くなれる能力は、将来において非常に重要な人間力である。高校生のうちに鍛えておいたほうがいい。お金を払えばそれに対する対価として添削を引き受ける赤ペン先生とのやりとりは、金額分の付き合いが終わったところで消えてなくなるが、努力して親しくしてもらえるようになった先生方との付き合いは、おそらく一生ものである。礼儀を尽くした上で、大いに教師に甘えたまえ。そういう甘え方なら、嬉しくない教師はいないと思いたまえ。

(ニャゴロワによる「猫枕」)

 今日は横浜校で講演会があった。この時期の講演は高校1・2年生の父母対象だから出席者がそれほど多いわけではないが、講演に対する反応はすこぶる良好だし、講演後のアンケートを見てみると、高校生対象の講演会と比較してもさらにワンランク評価が高いようである。15時スタート、17時終了。3連休の中日で、横浜駅は大混雑だった。

(マッジョーレ湖、ペスカトーリ島)

 9月9日、マッジョーレ湖のベッラ島を出て、ペスカトーリ島に向かう。2島の間は腕を伸ばせば届くぐらいの距離だから、船で5分もかからない。長さ400m幅100mほどの細長い島で、ガイドブックでの扱いは、3つあるボッロメオ諸島の中で最も小さい。「平凡なレストランが数軒並んでいる程度だ」という極端にネガティブな評価のものから「ペスカトーリとはイタリア語で漁師のことで、島の漁師たちが湖からとってきたばかりの新鮮な魚を賞味できる」というプラス評価のものまでいろいろだが、要するにどれも「昼飯を食べるだけの島」という記述である。

(ペスカトーリ島の猫)

 しかし私の経験からすると、ガイドブックでの評価が低い街の中には意外なほど印象が強い街があって、ペスカトーリはそのうちの一つである。確かに、島の真ん中のドゥオモ以外にはレストランが10軒ほどあるだけで、しかもそのレストランはツアーで訪れたヨーロッパ人の中高年が溢れているのであるが、この島で何よりもよかったのは一人きりで休日の午後を過ごしにやってきた中年のオジさんの姿である。
 オジさんは、古びたバスケットにフランスパンと水と赤ワインを1本入れて持参している。バスケットには他にハムとチーズも入っていて、それをナイフで不器用に切っては口に運び、水とワインを交互にグラスに開けてゆっくりと飲み干すのである。陽の当たる波打ち際に一人で腰を下ろして、対岸の家々や街やその向こうの山々を眺めながら、バスケットからそれらを取り出しては、実にのんびりと楽しそうに口に運ぶ。いかにも慣れた感じで、休日はいつでもこうやって過ごすのだと決めているようである。

(ペスカトーリ島風景)

 見渡すと、同じようなバスケットを傍らに置いて、楽しげに飲み食いしているオジさんが他にもたくさんいる。最初その後ろ姿は寂しそうに見えるのだが、本人としては実は人生で最高の休日を過ごしているのだということが見ているだけでわかってくる。パンと水、ワインとチーズ、ハムとナイフ、そういう基本がそろっていて、空は綺麗に晴れ上がって、9月中旬の涼やかな風があり、穏やかな湖の波音と控えめな観光客のざわめきがある。その中で、この島の常連である彼らは、慌てふためいて観光地を走り回るのではなく、2時間でも3時間でもここに腰を落ち着けて、空の色が少しずつオレンジに変わっていくのを感じながら、1本のワインでゆっくりと酔っていく。そういう休日の過ごし方である。

(ペスカトーリ島、バスケットおじさんを見かけたあたり)

 あとで気づいたのだが、島でもストレーザの街でもそういうバスケットをたくさん売っている。自分のお土産にバスケットが良さそうだ、と一瞬思ったのだが、問題は日本に帰ってからそういうバスケットをぶら下げてどこでワインを飲みどこでパンをかじるかである。代々木公園。駒場公園。上野公園。おお。日本のそういう公園で私のようなオジさんが、平日の昼間にバスケットから酒を出して飲んでみたまえ。どう考えても、どう想像しても、ある一定のタイプのオジさんにしか見えないではないか。それとも早稲田とか東大とか明治とか、そういう近くの大学構内で「あ、今井だ」「お、今井だ、ホンモノだ」とか遠巻きにされながらゆっくりワインを飲めるか、である。要するに、ああいう感じでバスケットのパンをかじりチーズを切りワインを楽しめるのは、この場所だからこそなのである。バスケットを買うのはやめにして、島のレストランで昼飯を食べることにした。
 なんとなく入ったレストランは、あとで調べてみたら有名店だったらしい。ストレーザからの船の運航のない夜の時間帯になっても、宿泊中のヴィラからわざわざボートをチャーターしてディナーに出かける人もいるとのこと。この店にはマッジョーレ湖滞在の最終日にも出かけたから、詳細は最終日の記録の中に書くことにする。

1E(Cd) Sequentia:AQUITANIA
2E(Cd) SPANISH MUSIC FROM THE 16th CENTURY
3E(Cd) The Scholars baroque Ensemble:PURCELL/THE FAIRY QUEEN 1/2
4E(Cd) The Scholars baroque Ensemble:PURCELL/THE FAIRY QUEEN 2/2
5E(Cd) Corboz & Lausanne:MONTEVERDI/ORFEO 1/2
6E(Cd) Corboz & Lausanne:MONTEVERDI/ORFEO 2/2
7E(Cd) Festival International de Sofia:PROKOFIEV/IVAN LE TERRIBLE
10D(DvMv) THE CENTER OF THE WORLD
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