2008年10月10日(金)

Wed 081008 株暴落私見 新宿東口・紀伊国屋と庄司薫 マッジョーレ紀行12(写真のみ)

テーマ:アーカイブ
 年末に出版する参考書についての打ち合わせで、午後から東進・吉祥寺1号館に出かける予定だったが、ちょっとした都合で打ち合わせが中止になってしまい、何となく出ばなをくじかれてしまった。仕方がないから東北沢の床屋HAMAMURAに出かけ、これから始まる講演会シーズンに備えて6mmのサッパリした丸刈りにしてもらって、まあ気分だけでも切り替えた。
 床屋から出ると、17時半だというのにもう日が暮れて、薄暗くなっている。もう10月も中旬になろうとしているのを初めて実感する。特に東北沢周辺は、小田急の線路を地下に埋める工事で駅周辺に高いフェンスが築かれており、そういうこともあって日の暮れるのが早い。19時から河田町で飲み会があるから、とりあえず東北沢から新宿に出ることにして、工事中の暗いホームで新宿行きを待つ。いつも利用する代々木上原や下北沢と違って、この駅は各駅停車しか止まらない。各駅停車は10分に1本しか走らない。次々に急行や快速急行が通過して、言語道断なことにはその合間に箱根湯本からのロマンスカーなどというものも、わざとスピードを落としてガラガラの車内を見せつけながら通過していく。2本も3本も連続して通過電車を見送れば、さすがにホームの人々も顔つきは暗くなる。

(写真上:9月7日、ドイツ人グループに大量の番犬を巧みに追い払ってもらって、ついにたどり着いたVilla Aminta。メインダイニングのシャンデリアが美しい)

 株価は毎日毎日1000円近く暴落し、いつの間にか日経平均8000円台である。人々の顔が明るくはないのも当然である。株式については興味も知識もないのだが、ニュースで伝えられている危機は、要するに今のところは我々とは別世界の出来事である。狼狽して財産をどうこうする必要など全くないのだ。慌てなければいけないのは、甘言をあやつって他人の大切な金銭を預かり、それをオモチャのように弄びマネーゲームに興ずることで高給を確保し続けていた人々である。周囲にもそういう人物は少なくないが、とにかくそういうことに関わらずにマジメに懸命に生活してきた一般の人々が狼狽する必要は何もない。
 いけないのは、マスコミによって垂れ流されるあたかも恐慌ででもあるかのような情報に慌てふためくことである。恐慌だ、未曾有の大不況だと、狼狽したり大騒ぎしたりする必要はないのだ。平均株価は暴落を続けていても、よく観察すれば上昇している株式もたくさん存在する。堅実に努力を怠らない企業の株は、ちゃんと高値で安定している。下がっているのは平均であって、全体ではない。こういう時には、キチンとしている企業の後押しを充実して、一方で下がってしまった者たちの自助努力を待つのが一番である。
 誰が株式の投げ売りをしているのか知らないが、素人の私からみると、いま狼狽売りや投げ売りをするような投資家は、投資家の名に値しない。投資家というのは株式を安定的に保有して、企業を真剣に丁寧に育てようとする父親や母親のような存在をいう。上がれば早速売って利益を確保し、下がれば狼狽売りして経営危機に陥れる、そういう短期売買にうつつを抜かしているのは、投資家ではなくてゲーマーである。個人のゲーマーは構わないが、ゲーマーが集団になり、組織化し、億単位の年収を享受しながら組織的に他人の金銭でゲームに興じた結果が、今回の金融危機である。

(写真上:Villa Amintaのメインダイニング)

 ごく単純に言えば、模擬試験のクラス平均が下がってしまった時に、こんなクラスはもうダメだ、こういうクラスにいると全員がダメになる、と口走るのは愚か者。暗い顔を突き合わせてみんなで狼狽の度を高めていくのではなくて、必要以上に慌てることなく自分に出来る最善を尽くしながら雨が止むのを待てばいい。素人目には、むしろ千載一遇のチャンスのように見える。クラス平均が下がれば、一気にトップに躍り出るチャンス。相対的な地位の低下を恐れていた日本にとっても、再び地位を高めるチャンスである。
 個人的にも、こんな安値ではとても買えなかった優良株式に手が届きそうだし、円高で企業業績が下がるとか嘆く前に、この1ヶ月の間に対円で30円近くも下がったオーストラリアドルを手に入れればいい。今朝の朝刊を眺めていたら、先月100円近くしていた1オーストラリアドルが、たった68円になっている。私はお金持ちではないからこんな情報は何にもならないが、資金に余裕のある人なら、これもまた千載一遇かもしれない。

(写真上:夕暮れのマッジョーレ湖。正面はベッラ島)

 で、暗い沈滞ムードの各駅停車に揺られて、18時、新宿に出た。河田町は19時半からだから、久しぶりに新宿東口をブラブラ歩き回って時間を潰すことにした。この30年間、新宿東口は相対的な地位の低下にさらされてきた、まさに日本の縮図である。かつては東京と言えば何を置いても新宿東口であって、書店なら紀伊国屋本館だったし、映画を見るなら東口、伊勢丹周辺。高野、中村屋、その他デートの定番はすべてここに集まっていたと言っていいほどである。
 1977年8月、当時の大流行作家・庄司薫は「ぼくの大好きな青髭」を中央公論社から出版。その冒頭、主人公の薫は、口にはツケヒゲをつけ、右手に虫取り編みを握って、新宿東口紀伊国屋書店の前で、行き交う群衆を睥睨している。それから3日だったか4日だったか、主人公は歌舞伎町の喫茶店「葦舟」とか、そこから徒歩30分ほどの新宿御苑だとかでいかにも青年らしい冒険を重ねていくのである。つまり、大流行作家がその作品の舞台に迷わずここを選択するほどの地域だったのだ。

(写真上:本棚の奥から引っぱりだした30年前の本。ホコリのせいで、喘息の発作が起こりそうであるが、何はともあれ、本の帯を読んでほしい。アポロ11号の月着陸からたった10年なのである)

 なお、「ぼくの大好きな青髭」は事実上彼の最後の小説である。庄司薫については080619参照。21世紀の若者で庄司薫の名前を知る人は少ないだろうが、逆に今40歳代以上の人で彼の作品に触れずに来た人は少数派のはずだ。20代以下のブログ読者は、是非今夜、両親と庄司薫について語り合いたまえ。必ず書棚からホコリとシミだらけの庄司薫が2~3冊は引っぱりだされてくるはずである。両親の世代は、ほぼ例外なく彼の小説に魅せられ、彼に憧れ、文章を書けば文体まで彼にそっくり。みんな彼の文体や雰囲気を真似して、何を書かせても1人称は「ぼく」であり、「なんて言っちゃったものだった」という軟派な文体が溢れていた。
 年譜によれば、彼は昭和12年生まれだから、今はもう70歳を過ぎている。ピアニスト中村紘子のダンナ。昭和33年、21歳で中央公論新人賞、その後10年姿を消していたが、昭和44年、忽然と復活して「赤頭巾ちゃん気をつけて」で芥川賞。おお。それほどの大流行作家が、なぜ小説の世界から姿を消してしまったかは、不明。不明、というか、当時彼の作品を読んだ人たちはいくらか理由がわかると思うのだが、おそらく、今庄司薫を訪ねていったら「そっとしておいてもらいたい」とおっしゃるに決まっている。昭和33年から44年まで姿を消していたのと、ほぼ同じような事情がきっとあるはずなのである。

(写真上:翌朝のVilla Aminta、メインダイニング。前日の無理がたたって、極度の筋肉痛に襲われながらの撮影)

 話がそれてしまったが、かつては日本の繁栄のシンボルでもあった新宿東口に戻ろう。私自身もいつの間にか新宿東口を散歩することはなくなって、事実、前回紀伊国屋本館に入ったのは15年も20年も(ずいぶん適当な言い方だが)昔だったように思う。地下道から入ると、懐かしいカレーの匂いがした。
 新宿紀伊国屋といえば、何と言ってもこの懐かしいカレーの匂いである。「ニューながい」とかいう屋号で、一体いつからここでカレー店をやっていたのかわからない。だから、全然「ニュー」でも何でもないのだが、それでもやっぱり「ニューながい」なのである。早稲田に通っていた頃の私はひどく演劇に凝って、ほとんど毎週のように紀伊国屋ホールに通っていた(アルバイト代はみんなここに消えたと言っていい)から、5階の紀伊国屋ホール、つかこうへい、加藤健一、風間杜夫、平田満、純喫茶カトレア、マイアミ、そういう固有名詞とカレーの匂いは離れがたく結びついている。

(写真上:翌朝のVilla Aminta、ティールーム。極度の筋肉痛は、この段階ですでに言葉に表せないほどである。観光旅行で山下りなんか、決してしてはいけない)

 紀伊国屋の文庫売り場をうろついて、ゆっくり時間をつぶした。最近めったに本屋に行かなくなった(混雑がイヤなのでネットで買っている)が、久しぶりに文庫売り場をブラブラしてその充実ぶりに一驚する。特に「学術文庫」の類いの充実ぶりには目を見張る。「売れるはずがない」と一目で判断できるような文庫がいくらでも書棚に並んでいるし、ミルチャ・エリアーデだのイタロ・カルビーノだの、10年前なら文庫で手に入れることはまず期待薄だった類いのものが「え、いけませんか?」という平気な顔で、立派に文庫の姿になっている。この状況なら、確かにル・クレジオがノーベル文学賞を受賞しても全く不思議はないはずだ。
 19時過ぎ、怠けているうちにすっかり状況に疎くなってしまったことに少し悲しくなりながら、河田町の飲み会に向かうことにした。まさに、人とは老いやすいものなのである。若い諸君は、酒なんか飲んで怠けていないで、日々勉学に励みたまえ。

1E(Cd) Joe Sample:RAINBOW SEEKER
2E(Cd) George Duke:COOL
3E(Cd) Menuhin:BRAHMS/SEXTET FOR STRINGS No.1 & No.2
4E(Cd) George Duke:COOL
5E(Cd) Menuhin:BRAHMS/SEXTET FOR STRINGS No.1 & No.2
6E(Cd) Brendel(p) Previn & Wiener:
MOUSSORGSKY/PICTURES AT AN EXHIBITION
7E(Cd) Coombs & Munro:MENDELSSOHN/THE CONCERTS FOR 2 PIANOS
10D(DvMv) ERIN BROCKOVICH
total m91 y1480 d1480
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