2008年09月25日(木)

Mon080922ビックリマーク洪水 感動の耐えられないヌルさ ヴィラアミンタのマイナス2/2

テーマ:アーカイブ
 連日、新聞のテレビ欄は「!マーク」と「!?マーク」の洪水である。これほどビックリマークでいっぱいなのは、政党のチラシと、予備校のパンフレットと、テレビ欄だけである。何か言いたいことがあって、言いたいこと伝えたいことで頭の中がいっぱいなのに、それを静かな言葉でじっくり説得する力が自分にはないと感じたとき、その焦りの大きさを示すのがビックリマークである。説得力不足を自覚し、その自覚が冷静に落ち着いて話す精神の余裕を奪い、絶叫する代わりにビックリマークを付けさせるのだ。つまりビックリマークとは、説得力不足について自ら無意識につけてしまう若葉マークであって、その数の多い政党に投票すべきではないし、予備校でそういう講座を受講すればガッカリするし、そのテレビ番組を見れば失望するだけである。
 普段からただでさえビックリマーク洪水なのに、台風が接近するとそれがさらに急増するありさまは、台風が引き起こす実際の洪水に勝るとも劣ることはない。「史上最強!! 最悪!!! 大型台風、日本列島を縦断か!?」「異常気象! ゲリラ豪雨!! 巨大台風が日本を襲う!!! 今朝関東直撃!?」みたいな大変なことになっていて「もはや日本沈没も間近、今すぐ脱出せよ」の緊急放送でも入りそうな雰囲気である。先週の週末は特にそうだった。

(写真上:ヴィラ・アミンタ本館正面の夜景)

 しかし実際にテレビをつけてみると、ラッシャー板前が金沢でカニを食っては「甘い」野菜を食っては「甘い」と盛りあがっていたり、斉藤慶太だか翔太だかが「王子」と呼ばれてどこかのマンションの風呂に寝そべってはしゃいでいたり、27歳の外国人横綱の「品格」とかいうものを中年漫画家が一方的に攻撃していたり、本社が経営危機だったはずの保険会社が「すこしで安心」な終身医療保険のCMを放送していたり、おお、日本はまだまだ大丈夫である。「ゲリラ」「直撃」「襲う」という文字が乱舞するような雰囲気ではない。
 実際、土曜日午前4時頃まではいくらか台風らしい雨を降らせていた台風13号は、関東に接近しながらどんどん年老いていき、息も絶え絶えになりながらそれでも何とか台風としての品格を維持していたが、午前7時、私が起きた時には既に「跡形もない」ありさま。確かに「油断は禁物、ご用心を」なのだろうが、やっぱり私は吹雪&地吹雪のほうが遥かに恐ろしいと思う北国出身者である。
 ただし、連日風速30mの吹雪&地吹雪が連続する日々を経験したのはもう30年も以前のことである。このごろは温暖化が激しくて、ナマハゲだってナマケていられる暖冬が続く(080830参照)。いま東北&北海道の若者たちに聞いたら、吹雪の日々も全然恐くないとニコニコしながら答えるかもしれない。もちろん、いまや(映画The Day After Tomorrowみたいにならない限り)恐ろしいのは吹雪や大雪ではなく温暖化の方であって、この30年で気候も人間も文化も、人間の気持ちさえも大きく変わってしまったのである。

(写真上:ストレーザ、ヘミングウェイが長期滞在して「武器よさらば」を完成させた高級ホテル)

 むしろ、先週土曜日にテレビを見ながら感じたのは、一番コワいのは「ヌルさ」なのかもしれないということだった。「ゲリラ」「直撃」「襲う」が乱舞し、アメリカで巨大証券会社が消え、ヨーロッパではアリタリア航空が経営危機に陥り、牛乳にはメラミン、肉まんには段ボール、オニギリには農薬とカビ、たいへんなことになっているのに、本当に暢気に「すこしで安心」「温泉やどかり日記」「お葬式の費用も保証」「家出少女に忍び寄るワナ」「喝!」(これは日曜)「あっぱれ!!」(これも日曜)、これほどまでにヌルくて、画面はふざけた字幕でいっぱいである。予備校講師なんかが心配しなくても大丈夫なのかもしれないが、このヌルさは恐ろしい。もっとカッカして、もっとヒリヒリして、もっとガンガンして、そういう国でないと将来性がない気がしてならない。
 最初に触れたビックリマーク洪水こそが、このヌルさの象徴のように思うのだ。今の日本人は、ごく当たり前のことにビックリマークをつけたがり、余りにも手軽に感動したがり、ごくあっけなく涙を流し、そしてあっけなく涙も感動もビックリマークもケロリと忘れ果て、感動や涙が心の深いところに蓄積する余裕を持たないのだ。浅い感動、軽い涙、無造作につけるビックリマーク、スポーツ選手は「感動を与えたい」観客は「勇気をもらった」、そうやってお手軽に「感動」と「勇気」を物々交換して、その翌日にはみんな忘れてしまう。

(写真上:ストレーザ、ヘミングウェイが「武器よさらば」を書いたホテル。ゲーリー・クーパー主演の物凄く古い映画「武器よさらば」では、このホテルが舞台になっている)

 元来、感動などというものが、お手軽クッキングよろしくサッサパッパと手に入るはずはないのだ。感動を味わい、勇気を手にするには、それに相応する長く真面目な努力が必要なはずであり、そういう努力にこそビックリマークをつけて、心から強調すべきである。私の講演会や公開授業の直後に、すでに涙を流さんばかりになって「感動しました」と言いにくる生徒は少なくないのだが、感動する前に努力したまえ、勇気なんかもらっている間に単語を10個覚えたまえ、涙を流す前に数学の基本例題を5題解きたまえ、いつか「オマモリ」について述べた時(080905参照)と同じ冷酷な真実を偉そうに伝えることにしている。まさに「何サマのつもり?」という感じ、でも真実なのだから仕方ないだろう。

(写真上:ヴィラ・アミンタ近くで見つけたお金持ちの別荘。こういう別荘が無数に並んでいる)

 9月5日からの7連泊でヴィラ・アミンタに感じた欠点2つのうちの1つ、「水回り」について昨日述べたけれども、もう1つの欠点は「ストレーザの街から離れすぎかも」である。日用品を買うにも、ビールや水やワインを買うにも、ストレーザの街まで徒歩で片道30分かかる。しかもその道がずっと湖畔の遊歩道のようなところならいいのだが、途中カルチャーノの船着き場までは車道を10分近く歩かなければならない。その車道を、スイスやドイツ方面からのクルマがそれなりのスピードで走り抜ける。始終後ろからクルマの轟音が接近する状態では、ウォーキングもあまり楽しくない。
 滞在初日は、まず街まで日用品を買い出しに出かけた。ワインも水もホテルの冷蔵庫を開ければいい、食事はホテルのレストランで食べればいい、というような贅沢な発想は敵であり、第一つまらない。地元でスーパーマーケットを見つけて、そこでフルーツやオリーブやハムやチーズを購入して部屋に戻る、そういう節約旅行こそ楽しいのである。17時前にホテルの部屋を出て、ストレーザの街に向かった。この季節、暗くなるのは9時過ぎだから、まだまだ真っ昼間という感覚である。

(写真上:嵐が去った後のマッジョーレ湖。写真右奥、高い水しぶきが見える)

 この日のマッジョーレ湖は、前日の嵐の影響で波が驚くほど荒かった。雲の流れも速かったし、水も少しだけ濁っており、湖面にはたくさん木の葉が浮かんで大きく揺れていた。カルチャーノから先はストレーザまで、湖畔に沿った長い遊歩道が続いて、避暑に訪れたヨーロッパ人の最高の散歩道になっている。手に取れるほど近くに浮かんだベッラ島やペスカトーリ島を眺めながら、バスケットに入れて持参したパンをかじり赤ワインを飲んで楽しく語り合える小道なのである。
 ところが、この日の湖はそんなのんびりしたことが出来るとはとても思えない荒れ具合で、遊歩道の護岸に大きな波が激しく打ちつけては、その波しぶきがまさにバケツをぶちまけるように頭上から降り注ぐのである。その水の量も、バケツ1杯どころではない、1回の波で、小さな池一つ分、子供用のプール1杯分、それが1分間に3回でも4回でも遊歩道を襲う。

(写真上:続・嵐の後のマッジョーレ湖)

 小学生ぐらいの男の子が大はしゃぎにはしゃいで水しぶきの真ん中に立って踊り狂う。そうなればその父親ももちろん子供に戻って、妻なり母親なりに叱られながら子供と一緒に踊り狂う。最後におじいちゃんが同じように子供と孫に加わって嬉しそうである。叱りつけ、呆れ、天に向かって両腕を差し上げて「バカなことはやめて」と言っている妻も母もおばあちゃんも、実はみんな、こんな楽しいことはないというぐらいハシャイでいる。激しい波が楽しいし、水が冷たくて気持ちいいし、それ以上にイタリアの湖水地方にバカンスに来た、ついに今、本当に夢ではなくマッジョーレ湖にいる、そのことまだ信じられずにいるのである。こういう雰囲気は私も大好きだから、同じように水しぶきを浴び、水しぶきをかわし、かわしきれずに頭から水をかぶり、シャツをぐっしょり濡らして、大いに笑った。

(写真上:ストレーザとヴィラ・アミンタの中間地点カルチャーノで。明日はこのロープウェイで標高1400m地点まで登る)

 スーパーは、マッジョーレの船着き場から、国鉄ストレーザ駅の方にちょっと入った通りの奥の広場の向こう側に見つかった。この辺りに土産物屋も多数。ただし私は土産物にはほとんど興味がないから、とにかくスーパーでフルーツ(ラズベリーとブラックベリーの詰め合わせなど)と酒とハム類を購入して、夕暮れの中をヴィラ・アミンタまで戻った。往復で、所要時間2時間ほど。買い物をしたり、波しぶきと戯れたりした時間を差し引いても、やはりちょっと遠すぎた気がする。この日はこれで終わり、明日は標高1400m、モッタローネ山に登る。登るといってもそのほとんどはロープウェイだから、それほどの緊張感もなく眠りについた。

1E(Cd) Incognito:100°AND RISING
2E(Cd) Incognito:LIFE, STRANGER THAN FICTION
3E(Cd) Incognito:FUTURE REMIXED
4E(Cd) Incognito:ADVENTURES IN BLACK SUNSHINE
5E(Cd) Incognito:WHO NEEDS LOVE
6E(Cd) Incognito:NO TIME LIKE THE FUTURE
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