2008年08月31日(日)

Thu 080828 赤塚不二夫・イヤミの「ザンス」 ヴェネツィア紀行5

テーマ:アーカイブ
 しばらくの間このブログで秋田方言の話を続けてきたが、予備校の語学講師というのは自分でも驚くほどに懇切丁寧なものであり、その分かりやすさはなかなかスミに置けないものがある。これだけ懇切丁寧な説明を聞いていれば、英語だって理解しやすいのは当然である。ただ気をつけなければならないのは、大学入試の英語がこの10年ほどで大きく変質し、丁寧すぎる授業ではとても追いつけないものになってしまったこと。そのことについては、明日か明後日「早稲田大学国際教養学部」の近年の入試問題について触れながら具体的に述べようと考えている。おや、ナデシコどん、もう眠いの? 雷がなりすぎて、ウンザリした?

 赤塚不二夫が亡くなって(080803参照)もうすぐ1ヶ月が経過するが、「おそ松くん」の「イヤミ」が連発する「ザンス」という語尾も、丁寧に予備校講師が説明してあげないと、21世紀の高校生などは何故「ザンス」なのか理解できないようである。今後「おそ松くん」が新しく映画化されるようなことになった場合、若い声優さんなんかだとよくワケもわからずに、ごく無味乾燥にローマ字風の「ZANSU」の発音で済ませてしまう可能性さえなくもない。
 しかし、それではダメなのである。「ザンス」はもともと、昭和30年代の上流階級の奥様たち、および上流階級に憧れる中流階級のオバサマたちの独特の言葉である。正確には「…で、ございますのよ」が転訛したものなのである。「…DE、GOZAIMASUNOYO」をまずできるかぎり早口で言ってみたまえ(昔は、ゆっくり話すと田舎者だといって笑われたのである)。早口にすると、弱い母音が次々と脱落する。特に2重母音の後半は脱落しやすいので、まず「…DE、GOZAIMASUNOYO」のうち「ZAI」のIが欠落し「…でござーますのよ」になる。有名な「ざます」「ざあます」の誕生である。
 さらに、口を大きく開けてをしっかり発音すると、見た目が下品で上流階級らしくないので(笑うとき片手を口に添える動作がその意識の名残り)、口をすぼめて発音する。すると必然的に母音がさらに弱くなって「dgZAmsn」に変化(母音を伴わない子音は子音自体が弱音化するので小文字で表記する)。ZAのAのみアクセントがあるので母音が残る。ただしハニカミと本来後ろにくっついているmのせいでフランス語の鼻母音のように変音する。こういう歴史があってdgZAmsn、カナまじりに書けば「dgざあすn」が誕生する。これがイヤミの「ザンス」である。おや、ナデシコどん、裏返しになって、そんなに眠いの?

 正しい発音は「dgざあすn」だから、いまや滅多な人間では発音できない。今後、講演会などで聞いてみたい人がいたら、ぜひ講演会直前か直後に私に声をかけていただきたい。さらに詳しい説明&実演を披露したいと思う。イヤミが「いやざんす」と言うときは、正確には「いやdgざあすn」。「きらいざんす」も「きらいdgざあすn」。「好きざんす」は「好きdgざあすn」。これらの実際の発音を聞けば、イヤミが何故イヤミなのか、イヤミの本質をもっともっとよく理解することが出来る。赤塚不二夫のギャグ精神もよりよく分かる。「マンガ学部」などのある大学なら、是非ここまで突っ込んだ研究をとりいれてもらいたいものである。

 4月22日、昨日書いた通りに、迷いに迷ったあげく選んだのが「RISTORANTE GIGLIO」(写真上)である。ガイドブックに載っていたとか、口コミ情報を聞いたとか、有名店であるとか、誰かに紹介されたとか、とにかくそういうことではない。何となく歩いていて、何となく見つけて、何となく入った、という店である。3年前、昨日のブログで書いた「人生で一番まずいパスタ」を食べさせられた翌日に、今日こそはリベンジしようと決めていて、夜9時過ぎに入ったのがこの店。あの時は隣の席を占めたイタリア人の大家族が私の方をジロジロ見ながら「日本人と中国人をどう区別するか」の話で盛り上がっており、彼らが次々とシャンペンを空けていくのを見て、負けじと私もシャンペンを2本あっという間に飲み干してみせたものだった(080624参照)。
 あれから3年経過して、店はすっかり古びてしまった。壁面も総ガラス張りで、あの夜はヴェネツィアの夜景に美しく映えていたものだが、まだ夕暮れに間がある時間帯だったせいかガラスの輝きが3年前に比較して何となくくすんでしまっていて、心高まるものが感じられなかった。店内の盛り上がりも今ひとつ。あの時のイタリア人大家族のような、ぶしつけで失礼でしかし豪快な集団がいればこちらも対抗上大いに盛り上がってみせるのだが、隣の席も、そのまた向こうの席も、遠慮がちにナイフとフォークを動かしている大人しいカップルばかりである。

 明らかに時間が早すぎたのだ。まだ19時を少し過ぎたところ。写真上は、翌日同時間帯のホテル・ルナ・バリオーニ。確かにまだ明るい。日も暮れておらず、ガラスの壁の向こうから覗かれ放題、夜が更ければ綺麗に見えるヴェネツィアも、夕方の明るい光の中では汚い建物の壁とゴミと汚い運河の水が丸見えで、これでは意気上がらないこと甚だしい。酒だって思い切って飲めない。最終的にはいつもと同じようにしっかり白&赤1本ずつボトルを(2時間かかったが)空けてみせたものの、とにかく観光客が覗き込みすぎ。店の外に広げたメニューと、中でやたらに酒を飲みふけっている東洋のクマさんの顔を見比べては、遠慮して立ち去っていく観光客が相次いだのでは、何となく店の人に悪いような気分である。写真下は、夕暮れのゴンドラ乗り場。せめてこのぐらいの時間帯から入店すべきだった。

 そこへ、日本人ツアーのお客様12名がご来店。おお、この店もとうとう日本人のツアーが訪れる店になったか。いい加減酔っ払って楽しい気分で観察してみると、ツアーには結構若いカップルなども混じっている。明らかに「新婚旅行です」というカップルも2組。残りは中高年のオジサマズ&オバサマズ。みんなすっかり仲良くなっていて、特にオバサマズは元気である。楽しげに花嫁サンズに声をかけては冷やかしたり世話を焼いたり、自分のダンナを叱り飛ばしたりコンダクターにいろいろ要求を出したりして、元気この上ない。
 ツアーの客への店の応対も見物である。とにかく早い。流れ作業で、おそらく来店前からほぼ準備の整っていた料理が次から次へと運ばれてくる。客に選択の余地など皆無なのだ。座ってすぐに「ビールか白ワインか」を挙手によって決めさせられる。ビールが多いが、「白ワイン」というのはもうデキャンタに入って待機していたらしくて、「白ワイン」は「白ワイン」であって銘柄とか甘口辛口とかそういうツベコベは一切なし。テーブルにデン!デン!!デン!!!と音がするほどの勢いでデキャンタが配られ、一行12人で一斉に「かんぱーい」ということになって、あとは出てくる料理出てくる料理との無言の戦いに挑む。
 とにかく出てくるペースが早い。いきなり12皿の「イカスミのパスタ」が並べられる。ちょっと疲れた日本人ツアーコンダクターが「イカスミのパスタ、これはベニスの名物ですね、どうぞ」と紹介すると、12人が一斉に無言でフォークを持ち上げ、一斉に食べはじめる。さすが学校給食世代である。出されたものに文句をつけたり「ボク、これキライ」とか「ボク、他の食べ物がいい」とか「アタシ、イカスミ、はずかしい」とか、そういう言語道断なワガママを言うことは全く想定外なのである。急いで食べないと、もう次の皿が壁の向こうで待機している。急いで食べないと、昼休みが始まって、5時間目が始まって、みんなが算数の勉強を始めても、食べ終わっていないと恥をかかされた世代である。おお、おお、早い、さすがに、早い。私が口をアングリさせて眺めているうちに、オバサマズも花嫁ズもみんな口を真っ黒にしてイカスミパスタとの一戦を勝ち抜き、次の皿に進んでいる。用意された料理をすべて食べ終えるのに20分もかからない。ビールもワインも「おかわりは?」とすら尋ねられない。
 ふと気がつくと、彼らは決められたアイスクリームかなにかの「デザートを満喫」中。次に気がつくとコンダクターが一組ずつお金を徴収、これはメニューになかったお酒の代金である。みんな大人しく10ユーロ札を出して、おつりを数えている。最後に気がついたときは、12人が今の食事を口々に讃えあいながら店を出て行くところだった。その間、私はワインを3杯ほど飲み干しただけ。おお、これが「ベニス一流レストランでディナーを満喫」「デザート付き、ロマンチックなディナーにご招待」の本質なのである。ま、いっか。でも、若い諸君には、もっともっと個人で旅行してもっともっと恥をかいてほしい。恥をかいて、後でその恥の経験について語り合うのが楽しいのである。
 店を出ると、外はもう真っ暗である。夜のサンマルコ広場も悪くないだろうと考え、写真を撮りにでた。その写真が下である。何だ、こりゃ。ま、グラッパも何杯かもらって、すっかり酔っ払ったし、これはこれでいいことにする。明日の夜は、カフェフローリアンのミニコンサートに最後まで付き合って、大いにヴェネツィアの夜を楽しむことに決める。

 それにしても、恥をかいて後で思い出すのは楽しいものだ。20年も前のこと、アテネのレストランで、もう帰ろうと思って「お会計してください」と言ったら、何故か店員がケチャップを手に持って現れ「お待たせしました」などというのもあった。別の店では「オススメは」と聞いたら「スランプだ」と言われ「え、スランプ?」と思って「ホワッツ、スランプ?」と聞き返した。私としては「何がスランプなのですか?」と丁寧に聞いたつもり。でも相手のギリシャ人は、ギリシャなまりの英語で「shrimpがオススメだ」と言ったつもり。しかも「ホワッツ、スランプ?」で「エビとは、何ですか?」と聞かれたと思った店員は大いに困惑、身振り手振りで「エビとは何か」を説明。おお。こういうのが楽しいのだ。20年前は、まだ米ソ冷戦という恐ろしいものがあってソ連上空を飛行機が飛べず「南回り航路」でアテネまで26時間かかった。成田から香港(空港職員に叱られるだけのトランジットあり)、香港からニューデリー(トイレで叱られるだけのトランジットあり)、ニューデリーからはイラン上空・イラク上空・ヨルダンとシリアの上空を飛んで地中海に出た。今考えれば恐ろしいルートだが、こういうのが楽しいのだ。ツアーで旅行、などというのは、こういう思い出が一つもできなくて、後になって寂しいのではないか。ま、そういうことを考えながら、ヴェネツィア第1夜は更けていった。

1E(Cd) Bruns & Ishay:FAURÉ/L’ŒUVRE POUR VIOLONCELLE
2E(Cd) Collard:FAURÉ/NOCTURNES, THEME ET VARIATIONS, etc. 1/2
3E(Cd) Collard:FAURÉ/NOCTURNES, THEME ET VARIATIONS, etc. 2/2
4E(Cd) Cluytens & パリ音楽院:BERLIOZ/SYMPHONIE FANTASTIQUE
5E(Cd) Lenius:DIE WALCKER - ORGEL IN DER WIENER VOTIVKIRCHE
6E(Cd) Bernstein & New York:BIZET/SYMPHONY No.1
OFFENBACH/GAÎTÉ PARISIENNE
7E(Cd) Prunyi & Falvai:SCRIABIN/SYMPHONY No.3 “LE DIVIN POÈME”
8E(Cd) Knall:BRUNNER/MARKUS PASSION 1/2
9E(Cd) Knall:BRUNNER/MARKUS PASSION 2/2
12D(DvMv) OCEAN’S THIRTEEN
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