2008年08月20日(水)

Mon 080818 香川・屋島講演会 大転倒について

テーマ:アーカイブ
 福岡のホテルを10時半前にチェックアウトして、「ひかりレールスター」で岡山へ。JR西日本を走るこのタイプの新幹線車両には「サイレンスカー」というものが1両ついていて、たいへん快適である。これについては近い将来このブログで書くが、静かで快適なサイレンスカーの中で、福岡名物「梅が枝餅」のまだ熱いのを頬張りながら、原稿の仕事もはかどった。岡山からは「マリンライナー」で高松へ。宿泊は全日空ホテルクレメント高松。高松港を見おろす、眺めのいいホテルである。
 18時から香川県屋島で講演会。出席者150名強。7月中旬には300名も400名も集まる大規模なものばかりだったが、こういうアットホームな雰囲気の講演会も大好きである。特に今日の講演会は1校舎単独での開催。5校舎ぐらいの合同開催が普通だから、1校舎単独でこれだけの出席者を集めていただいたのは、まさに大健闘である。1時間半にわたって授業タイプの講演をしたが、最後まで雰囲気も非常によくて、大成功だったと言っていい。屋島校の皆さんに大いに感謝する。

 こういう時に「張り切りすぎる」のが私の欠点である。張り切りすぎれば、もちろんミスが出る。ミスと言っても、私は「失言が多発する」「暴言を吐く」「矛盾した発言をする」「むやみに延長する」「出席者をシラケさせてしまう」というようなミスをするタイプではないから、主催者側としても安心していただけると思うのだが、では今日はどういうミスをしたかと言えば、ステージの上でこの上なく激しく転倒したのである。生徒諸君の余りに熱心な大きな拍手と、「ホンモノだ!! ホンモノだ!!!」 という抑えきれない叫びとで、気をよくしすぎ、張り切りすぎたせいだったと思う。
 講演が始まって5分後。ステージ上を走り回っているうちに、思わず足を滑らせて(というより、10年前からずっと履いているイタリア製の靴の底が本当によく滑るのだ)前につんのめり、ベチャっと大きな音がしたのが自分でも聞こえるほどの激しい転倒。右手首と右膝を強打。右手首は夜中すぎには赤黒く腫れ上がり、湿布をしすぎて震えるほど寒くなり、頭から布団をかぶって眠るはめになってしまった。右膝の痛みも強烈。これを書いている時点で、こちらは青黒く痣になっている。泣きそうなほどだったが、それでも全く表情にも出さずにその後90分の講演をこなしたあたりが、さすがベテラン超人気講師(うにゃうにゃ)である。下の写真は、問題の右手首。帰りの新幹線の中で、左手で撮影。おお、これは痛々しい。

 もっとも、最近の生徒はたいへんシビアなので「ベテラン超人気うにゃうにゃ講師なら、もともと講演の冒頭で転倒したりするはずはない。自己管理が不十分」などと冷たいことをオッシャルかもしれない。実際、私も情けない。私はスキー歴がきわめて長いが、スキーでだって滅多に転倒などしないのだ。
 小学校に入る前から父・今井三千雄(080803参照)に連れられて、冬になれば毎週のようにスキーに出かけた。父のスキー指導は、ハッキリ言って「スパルタ」そのもの。いきなり山形蔵王の頂上に連れて行かれ「いいが、よぐみでろ」(山形弁&秋田弁ミックスの不思議な言語で「いいか、よく見てろよ」の意味)の一言を残して、彼は(当時職場のスキー部キャプテン)猛スピードで斜面を滑り降り、幼い私の前から父の姿は消え、私は蔵王の頂上の猛吹雪の中に一人取り残される。あとは「おどごだばずぶんでなんどがすてむろ」(アフリカ的な響きに溢れているが「男なら自分で何とかして見なさい」の意味。私見だが、アフリカ言語はB・D・G・N・Z音の多用が特徴であるように感じる)という指導だった。だから私は幼い頃から「おどごだがらずぶんでなんどがすてむる」という恐るべきズンセイグン(人生訓)のもとで育ってきたのである。スキーさえ履いていれば、どんな急斜面でも滅多に転倒などすることはないし、「おっがねくても、おっがねがらごそおもすれ」(和訳:おっかない状況でも、おっかないからこそ面白みがある)という真実を早いうちから会得できたと思う。安定した超一流企業にしがみついていなくても、予備校講師などというきわめて不安定な急斜面的人生にも、楽々対処できるのである。
 人前で派手に転倒したのは、ほぼ10年ぶりである。前回は代ゼミ代々木校75教室で、同じように授業の冒頭だった。「全国同時生中継」の授業で、当時「75教室」というのは「63B教室」と並ぶ予備校講師の晴れ舞台だったから、やはり張り切りすぎていたのだろう。教壇に上がる2段の階段の2段目に足を引っかけて前のめりに激しく転倒した。前にかかえていた大型のチョークボックス(いろいろな色チョーク合計50本以上が入ったもの)を前に放り出しながらの転倒。ラグビーのスクラムから出たボールを、スクラムハーフがスタンドオフにパスするのとほぼ同じ姿勢で、チョークケースを前に放り投げたのを記憶している。「全国同時生中継」を見ていた全国の受講生の驚きは想像に余りある。突然の叫びとともに、目の前の大型スクリーンには、黒板の前を華やかなチョークが緩やかな放物線を描いて乱舞する光景が映し出されたのだ。おお、痛かったダス。ホエホエ(080803参照)。
 あの時、目の前の生徒たちはどうしていいか分からず完全に凍りついてしまっていたが、彼ら彼女らももう27~28歳である。もうすでに人生で1度か2度はああいう大転倒を経験しているはず。10年に1度ぐらいなら、大転倒も楽しいものである。少なくとも、ブログに書く材料ぐらいにはなるだろう。「全国同時生中継」で生転倒を目撃していた生徒たちからもたくさんの励ましのお手紙をもらったが、残念なことに「今井宏御中、今井ファンとして、チョー、ウケました。めげずにまた転んでください」みたいな手紙ばかりだった(080815参照)。転ぶまでは、転ぶことの痛みと、転ぶことの楽しさは分からないのである。大いに転んで、大いに起き上がって、大いに転倒と不安定さを楽しんでほしいと思う。
 あの時と同じ靴を、今日も履いていた。10年同じ靴を履いている。よほど気に入った靴なのだが、靴の側では私を気に入っていないのかもしれない。虎視眈々と私の転倒を狙っている。そういうイタズラな所がまたこの靴のいい所なので、まだまだこの靴を手放したくない。それはちょうどボローニャの人が2本の斜塔を心から愛しているのと同じことであり、ピサの人があの激しい傾き具合をみては毎日仲間同士でニタニタしながらお互いお腹をつつきあっているのと同じことである。持ち主を転倒させてやろうと狙っていない靴など、何の醍醐味もない。まだ少なくとも5年は、こういう不安定きわまりない滑りやすい靴を履いて、滑りもしないつまらん靴で満足している生真面目な人々を、斜塔のように傾きながらニヤニヤ眺めていようと考えている。本当は、前歯の歯並び(080817参照)だってあのままにしておいた方がよかったのかもしれない。写真下は、前歯もボローニャの斜塔なみだった24歳の私のニヤニヤ笑い。安い飲み屋で小皿に醤油を少しあければ、あとはそれを舐めながらいくらでも酒の飲める仲間たちと、北海道旅行の最中である。おお、この泥酔しただらしない目を見てみたまえ。これこそ「風吹かば倒る」の楽しさを会得したころの、困った強靭な精神の発露。問題は、風が吹かなくても倒れてばかりいたことである。

 ただし、もちろん、転倒と、イタリアの斜塔と、靴と、自分の職業と、そういういろいろなものを微妙に引っ掛けて気楽そうに言葉で遊んで見せているのも、照れ隠しと強がりに過ぎない。実際には右の手首が痛くて、キーボードを打つのも余り快適ではない。

 講演の翌日、高松のホテルで、フェリーが入っては出て行く雨の高松港(写真上。向こうは源平の戦いで有名な屋島)を見下ろしながら書いたのだが、手首の湿布が邪魔になってなかなか先へ進めない。チェックアウト後、ホテル入り口で「縁の下」というネーミングの小さな彫像を発見(写真下)。その余りにベタで素直な発想に驚嘆するとともに、こういう立派な生き方は私にはとても出来そうにないことを痛感。駅ビルのうどん屋に入って、高松名物・醤油豆で冷酒を1本楽しんでから帰途についた。

 なお、イタリア旅行記は今日はお休みにする。クマさんは転んだ手首が痛くて、とてもハチミツをとりにいく気になれない。膝だって痛いのだ。ボローニャを出発して、パドヴァまで大きな荷物を引きずっていく最中なのだが、まあここはのんびり移動させてあげればそれでいい。

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