2008年08月09日(土)

Thu 080807 最近見る夢について パルマ紀行1

テーマ:アーカイブ
 疲労が重なって、眠りが浅い。眠りが浅くなると、普段は考えもしないようないろいろな夢をきわめてリアルな形で見るのは、多くの人が経験することである。私の場合は、演劇の夢を見る。シェイクスピア「ペリクリーズ」または「コリオレーナス」を大学または高校の演劇部で演じている夢で、私は演劇部ではないのだが、夢の中では部員以上に大切な役割を持って演劇にのぞんでいる。演劇の最初で私が出演して、観客に向かって舞台右端に作られた約30メートルの大ハシゴを一気に飛び降りる役である。何だか分からないが、この役目には演劇そのものを成功させるか否かがかかっていて、どうしてもうまく飛び降りなければならない、という前提になっている。
 あとは夢物語に付き物の「空中浮遊」の話で、私は驚くほどうまくこの役割をうまくやってのけた上で、仲間たちのもとに戻って彼らの喝采を浴びるのであるが、眠りから覚めてよく考えてみても「ペリクリーズ」や「コリオレーナス」にこういう空中浮遊の話は全く含まれていないはずで、後は本来なら夢について、学者の皆様に意見を伺わなければならないのかもしれない。確かなのは疲れているということ、眠りが浅くなっているということ、これからしばらくはこういう夢をいろいろ楽しめそうだということ、そういう事柄である。

 4月19日、上の写真はパルマの駅前である。この日の朝は曇りで、今にも雨が降り出しそうな予感。しかしまずパルマに出かける前に、昨日と同じように「朝食をしっかり」を実行する。昨日のフェラーラでは「朝食をしっかり」が原因と思われるトイレ騒動がおこったのであるが、方針は間違っていないのだし、何かよくないものを食べたわけでもない。私がアレルギーをもつのはアワビとトコブシだけだから、昨日大惨事に至りかけたのは「何かの間違い」または「水分のとりすぎ」または「久しぶりに酒を飲まなかったせい」のどれかであろう。
 「ダイエット」の方針に従って、一昨日は一切酒を口にしていない。最後に飲んだのは、成田からローマに向かう飛行機の中での夕食の赤ワインである。最後の酒からフェラーラの悲劇まで、時間にして48時間ほど。酒が入ってこないことについて胃腸が驚き、または胃腸が不満から「酒よこせストライキ」を起こし、それが悲劇に至った可能性が最も大きい。だとすれば、今後トイレ関係での悲劇を起こさないためには「酒を飲むのがベスト」という言い逃れも出来そうである。
 酒を飲むためなら、自ら納得できない言い訳でもあえてしようとする。もしこの誘惑に負けて酒を飲もうとすれば、それはアルコール中毒である。私の偉いところは、この最後の誘惑に負けないところであって、その極めて強い精神力には自分でも脱帽するほどである。しかし同じ強い精神力が正反対の作用もするので、驚くほど強くて偉くて尊敬すべき私を、悪くてダラシなくて情けない私が説き伏せて酒瓶のほうに引き寄せようともする。ほぼ同じだけの強さの「偉くていい子で尊敬すべきツキノワさん」と「ダメで悪い子で唾棄すべきツキノワさん」の戦いは、戦いの主戦場である私本人から見てもたいへん興味の持てるものであったが、最終的には「いい子」が勝利した。
 朝からどうしても飲みたかったビールは冷蔵庫に残ったままになったのであるが、この勝利の決定的要因は、むしろ冷蔵庫の機能不全にあったといっていい。いつまでも互角の戦いが続くことに絶望し、震える右手についにつかんだビールが、生温かった瞬間を想像してみたまえ。これほどの葛藤を抑圧してつかんだ勝利の栄冠としてのビールが、ほぼ常温だったその瞬間を想像してみたまえ。源義経を一歩のところで捕らえ損ねた能登守教経も、これほど悔しがったとは思えないのである。

 というわけで、昨日と同じ朝食をたらふく詰め込んだ状態で、どんより曇ったパルマに到着。15分ほど歩いて、パルマ中心部のピロッタ広場に到着。すでにこの辺りで私の胃腸は変調をきたし、どんより曇った4月の空に負けないほど、いつ降ってきてもオカシクない状況になっていた。
 ピロッタ広場を抜けて、Duomo前の広場へ。おお。何とみすぼらしく、何と平凡な外見のDuomoであろうか。広場にはヒトクセありそうなジイさんが黒い自転車を乗り回しており、暗い曇り空の下では、汚い灰色のDuomoと塔、そして晴れていれば美しいのであろうピンクのバッティステッロとが、ひっそり寄り集まって息を殺している様子だった。


 こういう暗い色彩が、酒を飲まずに我慢している私の胃腸には、おそらく決定的なものだったのだと思う。一刻の猶予もならないピンチがすぐに訪れた。これまでの長い人生で、これほどのピンチは数えるほどしかない。「全国同時生中継」をされてしまった講師(080806参照)だって、ここまで大きなピンチではなかったのではないか。Duomoまで行き着けば、何とかなる可能性はある。しかし、何ともならない可能性もある。ここはイタリアである。何ともならなければ、何ともならないのだ。これほどのピンチに立ち至った者としては、「どうにもならない」という可能性をわずかでも残した選択肢を、あえて選択するわけにはいかないのである。
 最後の決断を迫られた私の目に、Duomoに向かって左側のお土産屋が店を開けているのがぼんやり霞んで見えた。唯一、確実に私を助けてくれそうなのは、あのお土産屋だけである。10分の1の救いを求めて、ヨロヨロとお土産屋の方に前進することに決めた。生きるか死ぬかで救いを求めたのは、Duomoでも洗礼堂でもなくて、みすぼらしい1軒の土産物屋だったのである。しかも、そこに至る道のりの険しさは、前代未聞であった。きわめて歩きにくい丸い砂利がコンクリートに詰め込まれた道。黒い自転車のオジサンが立ち止まり、彼のイヌが吠えるかどうか躊躇し、広場にいる(わずかではあったが)ありとあらゆる国から集まった観光客が見つめ、空はどこまでも冷たく曇っている。絶望的な風景の中を、ただ「安心の小部屋」のみを求めて、哀れな東洋人の前進は続いたのである。
 私は、土産物屋の主人の、年老いた笑顔を忘れないだろう。土産物はあまり売れないに違いない。あとで手に取ってみた土産物はみなホコリをかぶり、絵はがきも絵本も日光に焼けてしまい、人形や置物も汚れが目についた。しかし、白髪と白ヒゲの店主は全く嫌がるそぶりを見せずに「トイレは下だ、気にせず使え」とニッコリ笑ってくれたのだ。ま、私の状況がそこまで切迫していたということだろう。水も流れず、紙もなく、便器ははずれ、荒れ放題に荒れたトイレであっても、大惨事直前の私を救ってくれたことは間違いないのである。

 Duomoの内部は、なぜ外側があれほど見栄えがしないのか不思議にならざるを得ないほどに、見事なものだった。尾籠な物語を延々と語った後でバチが当たりそうだが、とにかく内部の写真を数枚掲載しておく。ボローニャ周辺の教会のうちで、どうしても外せない教会であることは間違いないと思われる。


 ここに入ってきた時だけは、遠足の中高生がほぼ皆無だったのも、内部がより美しく見えた要因だったかもしれない。床にも壁にも天井にも、絶妙な割合で巧みにはめ込まれたピンクの大理石が美しかった。15分ほど経過して、正面入口から踏みつぶしそうになるほど大量のイタリア人中高生が攻め込んできたけれども、その前わずか15分の間に、このDuomoの中を心ゆくまで堪能できたのである。

1E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 6/10
2E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 7/10
3E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 8/10
4E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 9/10
5E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 10/10
8D(DvMv) 300

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