2009年09月07日(月)

Fri 090828 ニューヨーク滞在記11 まず、リンカーン・センターでオペラを観る

テーマ:アーカイブ
 ちょっと高学歴な日本人のオジサンは、中年になると何故かみんな「オペラファン」などというつまらない背伸びをして、高いオペラのチケットを買っては、単なる居眠りに出かける。何十年も前の就職活動のとき、趣味の欄に「読書」とか「音楽鑑賞」とかウソを書いて、「ちょっと知的」なフリをしていたオジサンは特にそうである。渋谷や千駄ヶ谷の能楽堂にはそういうオジサンとオバサンが溢れていて、「松風」でも「井筒」でも、始まって15分もしないうちに大半が幸せそうに舟を漕いでいる。能楽堂はオペラホールより遥かに意地悪にできていて、他の観客の様子をしっかり観察できるような配置になっているから、どのぐらいの人が居眠りしているか、パーセンテージまでわかってしまうが、若い人たちはこれからの人生の参考のため、ぜひ一度能楽堂に見学に来たまえ。「知的なフリをする」ということがどれほど恥ずかしいことか、わかっておいたほうがいい。
 つまらないものはつまらない、興味のないものは興味がない、素直にそう言ったほうがよくて、さっさとプロ野球やお笑いライブに出かけたほうがずっとカッコいいのである。海外旅行をしてまで美術館や博物館に出かけ、あまりのつまらなさに夫婦ゲンカしているヒマがあったら、ホテルで寝ているほうがどれほどマシかわからない。「にわかワイン通」も一緒。暑い夏ならビールでいいのに、渋くて酸っぱい赤ワインを揺らしながら、「うーん」とか「ははあ」とか言って渋い顔を歪めてみても、あんまりカッコよくはない。

       (リンカーンセンター前のクリスマスツリー)

 そう言っている今井君自身が、ニューヨークではリンカーン・センターなんかに出かけてカルチャーに触れてみる。2007年12月の滞在では、「仮面舞踏会」とヘンデルの「メサイア」を見るために、ご苦労なことに2回もリンカーン・センターに通った。しかし、ここで一番気に入ったのは仮面舞踏会でもハレルヤコーラスでもなく、噴水前に飾られたクリスマスツリーである。気温は開演前に0℃以下に下がり、「噴水なんか、できれば止めてほしい」という寒さであったが、このクリスマスツリーだけは、寒くなれば寒くなるほど、空気が冷たく張りつめれば張りつめるほど、その分だけキレイに輝いて、できれば仮面舞踏会やメサイアよりこの光を見ていたい、平凡なオジサンでもそういう気分になるのであった。

       (リンカーンセンター前のクリスマスツリー)


 「仮面舞踏会」のほうは演出も平凡、演奏も平凡、全てが平凡であって、言うべきことは何もない。あえて何か言うとすれば、「これほどの寒い夜に暖房が入っていない」という驚きの事実ぐらいである。あのころ(1年半前)、それほどにアメリカ経済は冷え込んでいたのだ。または「エコ意識」という名のヤセ我慢大会だったのかもしれない。暖房はつけない、観客はコートを着たまま、寒さをコラエてオペラを観る、そういう合意になっていたのである。

      (一見暖かそうなリンカーンセンターの明かり)

 ヨーロッパなら、ウィーンでもミュンヘンでもベルリンでも、冬のオペラホールでオバさまたちが最初にすることは「クロークに毛皮の豪華なコートを預ける」ということである。エントランスの階段の踊り場で汚い長靴を脱いで、見るからに痛々しいピンヒールに履きかえるのだが(外は雪の結晶がいつまでも綺麗に見えるほど寒いのだ)、クロークにコートを預け、係の人間にチップの小銭を手渡し(観察したところでは50セント硬貨2枚が定番のようだった)、60歳がらみのオバサンでも胸がガバッと大きく開いたドレス姿になり、いい年をしたオジサンたちの視線もその何とも言いがたい胸に釘づけになり、どうやらその「釘づけ」こそが正しいマナーであるといったご様子。場内はそれでも汗ばむほど暖房がきいているから、そういう胸でも(おそらく)全然寒くないのだ。

         (ビジネス街のクリスマスツリー)

 ところが、あの冬のニューヨークは、状況が全く違って、暖房を一切入れないのである。だから、だれもコートを預けない。足首まである長いダウンコートを来たまま、毛皮のコートにくるまったまま、マフラーをぐるぐる巻きにしたまま、みんなそういうモクモクした格好で、3時間も4時間もオペラに見入るのである。狭いシートはモクモクおじサマとモクモクおばサマでいっそう狭くなり、舞台のオペラ俳優たちが寒そうで可哀想で見ていられない。

    (2009年8月、酷暑の中で工事中のリンカーンセンター)

 このオペラホールに、もう一人可哀想なオジサマがいた。他でもない今井君である。ヨーロッパと同じ「オバさまたちの胸でポカポカ」と勘違いして、安物のジャンパー(死語です?)を張り切ってクロークに預けてしまったからたまらない。しんしんと冷え込むニューヨークの真夜中(終演は真夜中、日付が変わる頃なのだ)、ワイシャツ1枚にネクタイだけ、周囲はみんな毛皮のコートでモクモクしているのに、怪訝そうな顔のクローク係にチップを1ドルも手渡して、強盗に身ぐるみ剥がされたアジア人よろしく、平凡な仮面舞踏会にアクビ一つ出来ないほどブルブル震えながら、ひたすら終演を待ちわびたのであった。
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