2009年09月11日(金)

Wed 090902 ニューヨーク滞在記16 135丁目、アビシニアン教会のゴスペルの列に並ぶ

テーマ:アーカイブ
 2009年8月、135丁目を目指したのは、ちょうど日曜日だったこともあって、有名なアビシニアン教会のゴスペルを聞きにいこうと思ったからである。午前11時近く、すでに教会帰りのスーツで盛装した人々と行きあいながら、アビシニアン教会に向かった。彼らの盛装ぶりは驚くべきものである。80歳近いと思われるおばあちゃんでも、赤やピンクの綺麗なスーツをキチンと着こなし、杖をつきながらも、「教会に行くんだ」「教会に行ってきたんだ」という喜びを全身で表現している。おじいちゃんたちの色とりどりの帽子も可愛かった。
 アビシニアン教会に到着してみると、すでに長蛇の列である。少なくとも300人は並んでいて、「これじゃ、全員が教会の中に入れるわけがない(部分否定)」と一目でわかるほどである。もちろん地元の人々は別格なので、300人だか500人だか、教会の周囲に長蛇の列を作っているのは全て観光客である。耳を済ますと、聞こえてくるのはイタリア語が圧倒的に多い。他にはスペイン語、ロシア語、フランス語。英語帝国主義の真っただ中、英語帝国主義のお膝元で、英語はサッパリ聞こえてこない。やはりこのあたりも、どんどん観光地化が進んでいる証拠なのだ。

      (2009年8月。135丁目、アビシニアン教会 1)

 その列を目当てに、いろんな物売りが回ってくる。Tシャツ、帽子、焼き栗、得体の知れないお菓子、いろんな屋台からの物売りである。水を売りに、同じ男が何度でも回ってくる。アフリカ系の男独特の太く力強い声で「こおーるど、わだ」「こーおるど、わだ」と怒鳴っている。「冷たい和田君」などという下らないものを売っているのではもちろんなくて、waterは「わだ」なのである。これと同じようなオジサンはニューヨーク中にいて、ブルックリン・ブリッジでもセントラルパークでも「コオールド・ワダ。オオンーリ・ワンダーラ!!」と叫んでいた。ワン・ダーラは1 dollar、ワダとダーラで韻を踏むのである。
 物売りで最も印象的だったのは、アビシニアン教会のゴスペルを録音したものだというCDを自信たっぷりで売っていたオバサンである。私が並んでいたのは30分ほどであるが、その間ずっと「CDはあと3枚しか残ってないよ」「あと3枚」「3枚だよ」と叫んでいるのだ。イタリア人もロシア人もニヤニヤしながら聞いているのだが、たまにその「3枚」がたまに「4枚」に化けて、「とてもいいCD。とおってもいいCD。残り4枚しかないよ」になる。おお、時々1枚増えたりもする。しかも「CD-R」とかメーカー名を印刷した面に、マジックでタイトルを殴り書きしたような、そういうシロモノである。

      (2009年8月。135丁目、アビシニアン教会 2)

 このオバサンは300人並んでいる列の特に後ろのほうに目をつけたようだった。「こんな後ろに並んだって、どうせ中には入れないよ。サッサとこのCDを買って、別の教会に行ったほうがいい」「買わないと、碌なことにならないよ」と脅すような口調で叫ぶ。たまに「買わないと、呪われるよ」とも和訳できることも怒鳴る。確かに「別の教会」が目の届く範囲にたくさんあって、その「別の教会」からも盛んに豊かなゴスペルの声が流れてくる。後からきて私の後ろに並んだイタリア人観光客が、何十人もこのオバサンのいうことをきいて「別の教会」のほうへ行ってしまった。
 私自身、並んでいるうちに少し不安になって、道路を挟んで斜向いの「別の教会」の1軒に行ってみたが、入り口にたまっていた他の観光客とともに、あっという間に追い出されてしまった。追い出したのは、これまたおっかないデッカいオバサン。「ここは観光客相手の教会じゃないんだ、出て行って、出て行って。そんなところにたまられたら、ジャマになるだろ」という勢い。汚らわしいものを両手で追い払う、まさに食べ物にたかるハエを払うような、そういう動作と表情である。この勢いには、さすがの「何をされても暖簾に腕押し」という海千山千のイタリア人たちも恐れをなして、もとのアビシニアン教会の列に戻るのだった。

     (2009年8月。135丁目アビシニアン教会付近の消防車)

 ということは、有名なアビシニアン教会のゴスペルも、この地域ではすでに「観光客相手の堕落したもの」と見なされているのかもしれない。あまりの繁盛に、日曜日朝の礼拝を2回にわけ、9時からが1回目、11時からが2回目。そういうサービス精神で観光客の列を引きつけるのは、ハーレムにいくらでも立ち並んでいる「まっとうな教会」から見ると、「堕落」「パッチもの」「呪われた所業」、そういう目で見られているのかもしれない。
 再びCD売りオバサンの「残り、わずか3枚ですよ」と、お兄さんの「こおーるど、わだ。オオーンリ・ワンダーラ!!」に囲まれながら列に並んで、結局30分近くを無駄にすることになった。要するに「入れなかった」のである。11時半、なぜか突然列が乱れて、あきらめたイタリア人とロシア人とがみんな呆れたように肩をすくめて、三々五々ハーレムの街に散っていった。CD売りオバサンも「あと4枚!!」とまたまた1枚増やして絶叫し、絶叫を最後に姿を消した。

(2007年12月25日。グランドセントラル駅でのゴスペル。人々がどんどん集まって歌う姿に感動。警察官も楽しそうである。携帯のカメラで動画も撮影したが、ブログに動画を掲載する方法がわからないので写真のみにする)

 仕方がないから、アビシニアン教会の写真だけでも撮って、それから帰ることにした。教会の真ん前に回ってみると、ちょうど日本の祭の宵山か縁日のような情景。Tシャツの屋台、お菓子の屋台、サンドイッチやスイカの屋台、こおーるど・わだの屋台。金魚すくいと綿菓子とフランクフルトソーセージとチョコバナナ以外の全ての屋台が教会を取り巻いて、8月の強い日光を浴びながら、忙しく店じまいを始めたところだった。こういう無駄な場所には、中国系の観光客は決していない。どこにでも必ず大量に入り込んでいる彼らを、ここでは一人も見かけなかった。
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