2009年09月16日(水)

Tue090908リーマンショック1年 ウォール街の人々の行儀のよさ(ニューヨーク滞在記22)

テーマ:アーカイブ
 リーマンショック1周年ということで、アメリカの人々はオバマ大統領が先頭に立って、さまざまな反省を試み、さまざまな言葉で反省を表現し、世界中のマネーをギャンブルにつぎ込んで遊びまくる経済なり金融なりのありかたを、根本的に変革しようとしているらしい。テレビで見ても新聞で読んでも、その反省は実に真面目なものであって、いまだに巨額の報酬を求めて子供のようにムクれているごく一部のワガママな人たちを除けば、みんなすっかりションボリして、シュンとして、マジメに頭を垂れて、この1年を過ごしたことになっている。
 しかし、大統領が10分も演説すれば、会場にいるヒト全員がいともたやすく納得し、素早く全員立ち上がって大喝采(と呼んで田舎臭ければスタンディングオベーション)している有り様をみて、その大政翼賛的な大喝采が(と呼んで爺さん臭ければ、再び「スタンディングオベーション」が)真に心の底からのものであるとか、真に反省の結果であるとか、21世紀のアメリカ経済が道義的にも人道的にも称賛してしかるべきものに変質していくだろうとか、素直に信じることは出来ない。

(ウォール街、NY証券取引所の前の巨大クリスマスツリー)

 むしろ、大喝采(スタンディングオベーション)の陰でくすぶっている「オレだけは別」「そんなこと言ったって」「ま、どうせまたそのうちに」のような、貪婪でしぶといニヤニヤ笑いが透けて見えるのである。リンカーンセンターのコンサートやブロードウェイのミュージカルを見たあとに感じる大喝采のおざなりさ(Sat 090829/Sat 090822参照)が、ここでまた蘇る。感動的なほど一斉に立ち上がって拍手し、歌い、叫び、泣き、しかしその涙を拭いてしまえば、驚くほどの敏捷さで家路につく(レストランへ急ぐ、バーに殺到する)人々の一見真剣そうな様子を、ウノミにしてかかることは出来ない。

(クリスマスツリーとNYSE)
 
 2007年12月、私を驚かせたのはウォール街のビジネスマンたちの礼儀正しさである。「ウォール街のビジネスマン」でイメージするような、傲慢で貪欲な様子が全く見えないのだ。マネーゲームに奔走しているはずの彼らが、昼食をとるのにケバブの屋台に長い行列を作っている。しかも、その行列は乱れない。彼らの「列を乱さない」という姿勢は、日本人でさえお手本にしたいぐらいなのである。
 イタリアやフランスの行列なら、あっという間に乱れて丸いオダンゴ状になる。いったん乱れてオダンゴ状になれば、もう割り込み放題。「列なんか存在しなかった」というシラバックレようは、お行儀のいい日本人の度肝を抜く(意外なことに、スペインは別格、少なくともマドリードでは、列も乱さなければ、信号も遵守する)。あのオダンゴの中にまぎれてしまったら、おしくらまんじゅうの真ん中でベソをかいている子供と同じ扱いになる。くれぐれもヨーロッパのクリスマス市なんかに寄り付かないことである。

(NYSE 2007年12月)

 ニューヨークでも、ケバブ売りたちの動作は緩慢で、日本の屋台のように「手際よく客を捌く」などということは一切考えない。一人の客にタップリ3分以上かけて、焼き方から好みのソースから香辛料からドリンクまで、「こんなに待ってるのに、わざと嫌がらせでもしてるんじゃないの」とイライラするほど時間がかかる。
 一つの屋台に店の人間が3~4人いて、売っている合間には仲間どうしの雑談も入り、そのせいでますますラチがあかない。1人で忙しくやっている店のほうが遥かに早くすむ。15人並んでいたら、1時間近くかかると思って間違いない。気の短い日本のクマさんなんかは、10人行列していたら、すぐに「屋台の昼食」を諦める。
 それでも、ウォール街のビジネスマンは決して文句も言わないし、列も乱れない。今井君なんか、最近すっかり行儀の悪いダメ人間になって、フランクフルトやイギリスの湖水地方で、ホテルのフロントのヒトに激しく食ってかかったりするような(だって、作業が遅すぎたり、納得のいかない部屋替えを言い出したりするのだ)こともするが、ウォール街のビジネスマンは「こんなに待ってるんだ、早くしてくれ」の一言も言わずに、じっと黙って列に並ぶ。従順なること、ヒツジの群れのようである。

(NYSE 2009年8月)

 そうして、ビジネススーツのよく似合う、カッコいい長身&足長ヒツジさんたちは、長い忍耐の結果ついに手にしたケバブランチやホットドッグランチにソフトドリンクを持って、公園に向かう。セントラルパークのような巨大な公園でも、バッテリーパークのようなところでも、たくさんのヒツジさんたちが旨そうにケバブランチやチリランチをかき混ぜているのだ。
 もちろん、マネーゲームにうつつを抜かし、
「ボクたち、何にも悪いことしてないよ」
「高額報酬は、契約書にあるんだから仕方ないでしょ」
「くれないなら、訴訟だよ。訴訟費用、たいへんですよ」
とニヤニヤしているような人たちは、この行列のあとの楽しいランチには参加していないのである。おそらく「ウォール街のビジネスマン」のイメージにピッタリのパワーランチで、そのテーブルでもまた激しくビジネスを進めているのだ。従順なケバブランチのヒツジさんたちは、「ビジネスマン」というより「サラリーマン」。従順なヒツジさんぶりも、立場の弱いサラリーマンに独特の諦めなのかもしれない。

(ウォール街とトリニティ教会 2007年12月)

 こうして、スタンディングオベーションの従順さと淡白さについて書いた冒頭部に戻ることになる。
「ま、拍手しておくか」。
「ま、さっさと大喝采して飯食いにいくか」。
「ま、難しい議論より、屋台に並ぼうぜ」。
「マジメな改革も変革も、オレには関係ナクネ?」
「そのうち、どうせまた元に戻るんジャネ?」
 諦めた従順なヒツジさんの喝采とは、それが多数派を占めると、むしろ絶望的なほど危険なものである。
 クマさんはいつでも「がおお」と叫びたい。納得のいかないことがあったら、たとえどうにもならないことでも、食ってかかりたい。クマさんが
「これは、ここでハッキリ言っておかないと」
「黙っているわけにいかないだろ」
といったん決意したら、その激しさはなかなか押しとどめることは難しい。だって、納得がいかないのに納得してしまうのは、相手にも無礼ではないか。大いに子供っぽく、大いにバカ正直に、クマさんは、がおお、ぐわ、ぐおお、天地も揺るがすばかりに、納得がいくまで激しく議論するのである。ま、アホなのだ。
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