笑いが絶えない成果発表

 

当日、小学校1年から3年までのクラスで開催された成果発表。筆者にとって興味深かったのは、プログラミングを通じて子どもたちが新しい表現方法を見いだしていたことだった。

3年生は1年生から3年間にわたりプログラミングを学んできた。その集大成が「夢のロボットを動かそう!」というテーマでの発表会だ。プログラミングを行う前に、まずはそれぞれが考える夢のロボットのイメージを決める。そして自分の描いた絵をタブレットに取り込む。いちばん多く目立っていたのは人間の手伝いをするロボットだ。

ある子は「疲れて帰宅するお母さんを少しでも休ませてあげたいので、料理ロボットを作った。最後にお母さんにありがとうと言わせるまでがそのロボットの役割」と発表していた。プログラミングは日常生活を便利にするツールとして自然な形で考えられていた。

プログラミング教育というと、使っているPCやデバイスに情報をインプットして終わりという形になりやすい。プログラミングが目的化され、「作品」がどんどんデバイスに蓄積されていくイメージだ。しかし武雄市の子どもたちが作るものは、それにとどまらない、より実用的で立体的なものだった。

 

かつては子どもたちが「夢のロボット」を思い描いても、たいていは夢で終わっていたかもしれない。しかしプログラミングが教育に入ったことで、自ら実現できる可能性が生まれた。テクノロジーの可能性に触れることは、子どもたちにとって大きな原体験になるだろう。自分の周りにある電化製品が、プログラミングされて動いていることを知ったら、日常の視点も変わってくるだろう。

3年間プログラミングの授業を受けた3年生たちの感想も興味深いものだった。

たとえば「失敗したけれど最後にはよくできた」と感想を述べた子がいたが、プログラミングの特性をよく表していると感じた。プログラミングは失敗をしながら作り上げていくところに醍醐味がある。一つひとつ変数を変えていくことで、違った結果が出てくる。試行錯誤を繰り返して、最後に自分が思ったとおりの動きになる。この繰り返しをすることで、最近話題のGRIT、つまり最後までやり遂げる力を養うことにもつながる。

「大人になっても、生活をプログラミングして考えたい」という子もいた。日常生活を自身の手で変えたい、変えられるという手応えも生まれたのではないかと感じた。

40代教諭の奮闘

 

精いっぱいやり抜くという力が身に付きました

こうした授業はいかにして実現したのか。武雄市では、1年生全部と2年生の大半を小学校の先生が授業を行い、2年生の一部と3年生については、ディー・エヌ・エーのエンジニアのサポートを受けながら授業を行った。民間企業のエンジニアが現場に入っているのは特殊なケースだろうが、それ以外は普段の担任の先生が教えることができている。

よく学校現場には若い先生でないとプログラミングは教えられないのではと危惧する声も多い。しかし、今回、そうともいえない事例に出合った。今回訪れた山内西小学校には、プログラミングの授業に積極的に取り組む40代の女性教諭の姿があった。副島泰子先生だ。

副島先生は、今年度からプログラミングの授業を担当しているが、それまではいっさい、それについての知識はなかったという。3年生の成果発表の授業も担当していたが、発表会後に行われた振り返りの会議でのその熱い姿勢に、参加していた関係者は皆くぎ付けになった。

「プログラミング授業で子どもたちが身に付けた力というのは、(1)プログラミングする力、(2)みんなと協力して取り組む力、(3)粘り強く考える力です。ブロックを使ってどのような順番がいいか変数を用いて考えたり、2人組、グループで、またクラス一丸となってプログラミングに参加したり、限られた時間で精いっぱいやり抜くという力が確実に身に付いていると感じます。失敗しても踏ん張って考える力もついています」

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