2006-07-03

第12回 ジム・アボット

テーマ:野球

ジム・アボットは、1967年生まれの、アメリカ合衆国出身のメジャーリーガーです。


アボット


アボットはカリフォルニア・エンゼルスやニューヨーク・ヤンキースなどで活躍し、

メジャー通算で87勝をあげた左腕ピッチャーです。


87勝。

ロジャー・クレメンスが340勝をあげているのに比べれば、確かに大した事の無い数字です。

日本人を代表するメジャーリーガー、野茂英雄でさえ120勝以上。

なんでこの「偉人・鉄人・有名人」に彼が選ばれたか。


彼には生まれつき右腕(右手)が無いのです。


この様に、片手が無い事を隻腕(せきわん)と言います。

ジム・アボットは幼い頃から右手が無い、というハンディキャップを乗り越え、ピッチャーとして

メジャーリーグで大活躍した名選手だったのです。


(言葉で説明出来るかわかりませんが)アボットはどの様にして隻腕で投げたのでしょうか。


アボットは投球の時、右手にグローブを引っ掛ける形で乗せ、左腕で投球をします。

投げ終わった後、すぐに左手でグローブをはめ、ゴロが転がってきた場合はそのボールを

キャッチします。すぐさま右手のわきでグローブをはさみ、左手でボールを掴むと、

それをファーストベースに投げます。


これを「グラブスイッチ」と言います。


以上の動作を、物凄い速さで行いますので、普通のピッチャーがゴロを処理する時間と

全く変わらなかった、どころか、平均以上の守備能力を持っていたと言います。


アボットの高校時代に、心無い対戦相手が「全てピッチャー前のバント攻撃」でアボットの

弱点を突こうとしましたが、これらのゴロを全て処理してアウトにしてしまった事もあるそうです。


小さい頃から右手が無かったアボットに対し、両親は「好きな事をしなさい」とアドバイス。

それで選んだのが「野球」だったのです。


高校時代のアボットは、ピッチャーとしてだけでなく、バッターとしても優秀な成績を残しています。

ホームランも7本打ったそうです。アボット自体も打撃は大好き、と語っています。


この後、メジャーリーグのトロント・ブルージェイズからドラフト36位で指名されますが、

アボットはこれを断り、ミシガン大学に進学する事を決めます。

この理由は、この指名が明らかに「興味本位、客寄せが目的」だったからです。


大学時代のアボットは全米チームにも選ばれ、日本や、世界最強と言われるキューバ相手にも

投げています。ソウルオリンピック代表として決勝戦で日本相手に投げ、後のチームメイトと

なる、野茂英雄と投げあった末、アボットの大活躍のおかげで金メダルを獲得します。


その年のドラフト(正確にはその年の6月)では、カリフォルニア・エンゼルスからドラフト1位

指名され、メジャーリーガーとしての第一歩を歩み始めます。


メジャーリーグでは当たり前の事なのですが、どんなに期待されて入団した選手でも、

実力的にプロに追いついていなければ、キャンプ等で結果が残せなければ、

メジャーリーグの下のマイナーリーグで訓練を積んでからメジャー昇格、が当たり前です。

しかし、アボットは実力を見せつけ、入団以来一度もマイナーを経験せずにメジャーに定着

しています。


1年目のアボットは12勝を上げ、実力を見せ付けます。

ただの話題集めだけでは無かったのです。


2年目に10勝、3年目に18勝をあげると、カリフォルニアのファンたちはアボットをエースとして

心より応援する様になります。


ヤンキースに移籍した1994年には、なんとノーヒットノーランを達成しています。

1本もヒットを打たれずに完封したのです。これはやろうと思っても中々出来ない大記録です。


結局アボットは、1998年に引退するまでに87勝まで勝ち星を延ばし、

惜しまれながらメジャーリーグを去っていきました。


人は彼の事を、「奇跡の隻腕」と呼びます。



【私にとっての"ジム・アボット"】


ジム・アボットの存在を知ったのは、私が中学生の時でした。

どんなに私が格好を付けても、

『ハンディなんて関係無い!腕が無い事なんて気にしない!』

なんて青臭い言葉は言えません。

彼に右手が無いのは事実なのですから、

そこから目を背けて話すわけには行かないのです。


『腕が無くたって、足が無くたって同じ人間なんだから、気にしちゃいけない!』


なんて事を平気で言えるエセ教育者が良くいますが、賛同出来ませんね。

第一、ハンデを持ちながら努力をして生きているその人に失礼です。

どう見たって同じじゃないです。同じじゃないのに、五体満足な人に比べて、

全く遜色が無い程に『何かが出来る』人が、

五体満足な人と『同じ』わけがないじゃないですか

ハンデを抱えた人に対し、大変失礼な言い回しです。


教育者(両親も含めてですが)は、ハンデを抱えてがんばっている人には、

素直に「あの人は凄いんだ」と教えてあげる事が必要だと思います。


ソウルオリンピックで見た彼は、私に強烈なインパクトを与えました。

上に説明した「グラブスイッチ」の素早さに驚愕しました。


当然、学校ではアボットのマネをしました。

野球部の左利きの同級生にグローブを借りて、グラブスイッチの練習をしました。

先に説明した様に私はサッカー部でしたが、野球部とは練習場が隣りなので、

良く野球部の人たちとも遊びました。


私は両利きです。

ご飯を食べる、字を書く、ボールを投げる、ボールを打つ、ボールを蹴る、受け取る、

等を全て両方で出来ます。

小さい頃に「石原慎太郎が両手で字を書いた」という話を聞いたのと、

左右均等に腕を使うと、脳味噌のバランスが良くなる、とどこかで聞いたからなのですが。


よって、私にとって左で投げる事は「不自然」な事でも何でも無かったわけです。

それを理解して頂いた上で、当時「許せない出来事」をお話します。


私は素直に「ピッチャーとしのアボット」に感動し、当然ハンデがある事を乗り越えている

そんな素晴らしさにも感動し、グラブスイッチを使いながら、サッカー部の練習が始まる

前の時間を、野球部の人たちと一緒に遊んでいました。


私が「健常者」であるのにも関わらず、「アボットのマネ」をしている事が許せなかったの

でしょうか、傍を通りかかった数学の先生(野球部・サッカー部どちらの顧問でもない)が、


「お前はハンデがある人を馬鹿にしているのか?」


と言いながら私を殴りました。


納得の行かなかった私は、

「何故ですか?単純にアボットが凄いと思ったから、アボットのファンになったから真似を

しているだけですよ?江川のファンなら江川のマネをするし、掛布のファンなら掛布の真似をする。」

と答えました。


するとその先生は、

「アボットはハンデがあるんだ。お前なんかにマネされたいとは思わない。きっとそれを知ったら

アボットは悲しむはずだ!大体お前は右利きだろ?右利きのお前が左で投げている時点で

不自然だ。馬鹿にしているからそうするんだろ!」

等と全くわけの分からない説明をします。


「アボットは自分の真似をする人間がいると知ったら、喜ぶと思います。

ピッチャーとしての本当の実力に目を向けないで、右手が無い事だけに拘っているのは、

つまりハンデがある人を馬鹿にしているのは先生じゃないですか?」


私がそういった瞬間、私はもう一度殴られました。


恐らくこの様な人は、乙武さんを見ても、『五体不満足』である事以外に何の取り得も無い

人だ、という感想を持ったんだろうな、と思います。


ちなみに私の奥さんの友人で、「義足のボクサー」がいるのですが、

最近フィリピンでデビュー戦を行い、勝利しました。彼は明るいですよ。

何でフィリピン?それは日本では義足では試合に出られないからですって。

この勝利の後、日本のボクシング協会が「レギュレーションの見直しをする」と

発表したそうですが、彼は、

「ああそう。だったら日本に戻ります!なんて言わないよ!ここで戦えるのが幸せ」

ですって。カッコいいですよね。

名前を土山直純と言います。みなさん、応援してあげてください。



最後に言います。

ハンデがある人は、自動的に「可哀想な人」では無いと思います。

自分で可哀想だと思う人は、「ハンデがある事」だけを武器に生きていくしかありませんね。

私だったらそんな人にはなりたいと思いませんし、

人から可哀想な人だとも思われたくありませんが。


なんていうか、何だか「思い出し怒り」をしてしまって、巧くまとまりませんでしたが、

右眼が殆ど見えない私だったら言う権利があるかな?と思って言ってみました。

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