編者の窓

左翼運動研究が一段落してしまった現在、ごく普通の人々までもが、反国家体制犯として検挙され、治安維持法違反ということで、実刑を受けていた事実を重く受け止めて欲しい。『治安維持法検挙者の記録』の編者、西田義信が文献から抽出した事例を公開する。


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 『治安維持法検挙者の記録』を開いて、これをどのように利用するかを、お見せしよう。

 

張   楽洙  [チョウ ラクシュ]    T13-3-33 s12,8,21検挙 s13,3,31起訴 民族革命党員 上海特別工作員(長崎:朝鮮)
  同                     予審 --------  ・地判 s13,8,24

 

 まず、特高月報の「昭和13年3月号」の33頁を見る。
 犯罪理由は(目遂)である。このころは、1928年の治安維持法改正による「日本共産党の目的遂行」の意味で、やたらに起訴理由として使われていた。
 さらに、

 

 昭和10年1月1日に韓国軍人会に入会、昭和10年7月初旬民族革命等に加入

 

 とある、朝鮮国内での活動内容なので、この人物は、在日朝鮮人ではなく、検挙寸前に日本に来たのであろう。長崎で検挙されているので、入国して、間もなく捕まったのかもしれない。
 これは、判決文を読むしかない。本書の付録になっている「第一審判決一覧」を見ると、この判決文が「特高月報昭和13年10月号」の131ページにあることが分かる。
 特高月報を参照して、重大な事実を発見した。
 「朝鮮または台湾を帝国統治権の支配より離脱独立せしめんことを目的とする団体に対しては、朝鮮台湾及関東州に於いては、従来より之を治安維持法第1条結社と認め処断し居たるも、内地においては未だその例を見ざりしが、昨年八月上海より内地に潜入し来たれる不逞朝鮮人に対し長崎、福岡両地方裁判所に治安維持法違反として起訴し、本年八月長崎地方裁判所に於いて之に対する判決言い渡しありたるが、其の判決の内容次の通りにして内地裁判所に於いて民族独立運動を治安維持法第一条結社と認め処断せるは之を以て嚆矢とす。」
 民族独立運動を、「国体変革」とみなす、最初の判例である。重要な判例だと思うので、どのような論理かを、判決文から抽出する。
 「両者(「韓国軍人会」、「民族革命党」)が孰れも革命的手段に依り朝鮮を帝国統治権の支配より離脱独立せしめて民主共和国を建設し以て其の土に於いて我が君主国体を変革せんことを目的とする結社なることを知りながら」
 この2つの組織で、いろいろな活動(主として事務や宣伝)を列挙してあり、
 「被告人の…所為は治安維持法第一条第一項後段に該当する」
 ということである。この条文は
 「情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者又ハ結社ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ二年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁鋼ニ処ス」
 であり、この2団体が「国体ヲ変革スルコトヲ目的」とする結社であることを前提としている。
要するに、わが国の支配下にある地域が独立するのは、支配地域を減らすことになるから、「国体の変革」である、ということなのであろう。朝鮮における、最初の判例を見たいものである。
 重要なことは、これ以後、犯罪理由を(朝鮮独立)と記す起訴が増えてきたことである。これによって、膨大な数の在日朝鮮人が検挙されることになる。
 なお、この判決の裁判長は本郷雅廣、判事は松本正一、大里吉雄で、検事は市川季熊である。
 この判決で、興味ある内容に気が付いたのだが、長くなるので、次回に譲る。

 

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