編者の窓

左翼運動研究が一段落してしまった現在、ごく普通の人々までもが、反国家体制犯として検挙され、治安維持法違反ということで、実刑を受けていた事実を重く受け止めて欲しい。『治安維持法検挙者の記録』の編者、西田義信が文献から抽出した事例を公開する。


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 特高月報の始まりは、昭和5年3月というのが定説のようで、政経出版社の復刻版も、5年3月から始まっている。
 小森恵氏の「『特高月報』総目次集」の「資料解説」でも、「この資料の創刊時点については必ずしも明らかではないが今までの調査によると昭和5年3月が最初のようである。」となっている。
 私は、この昭和5年3月号の記述の中で、「1月分月報参照」(25ページ)「前年度年報乃至前号月報において、既に述べ来たりしごとく」(16ページ)の2つの文言を発見し、「昭和5年2月号」、「昭和5年1月号」、「昭和4年号」の3冊が実在したことを確信した。
 文献に詳しい数人の方にお尋ねしたのだが、どなたも、「そんなものは知らない」と、おっしゃる。

 私の作成中のデータベースでは、本書(治安維持法検挙者の記録)のサポートのために、文献の小森氏が取り上げている部分をすべてチェックし、間違いを正し、小森氏が割愛した部分を起こすことを優先的に行っている。さらに疑問が起きた場合、多くの文献を参照することも少なくない。結果的には、いろいろの資料に目を通すことになる。
 また、この作業は、結構神経を使うのだが、単純作業の繰り返しになることが多く、飽きてしまう。
 そこで、気分転換として、思想月報や特高月報で、小森氏が取り上げなかった内容(例えば疑似宗教)を取りまとめることも行っている。さらに、私の蔵書の中で、多くの犠牲者の記録をまとめて入力することもある。
 そのような作業の中で、探していた3冊を発見したのだ。
 東洋文化社が復刻した「社会問題資料叢書 第三輯」の第五分冊に、内務省警保局の「特別高等警察資料」の、「昭和4年12月号」、「昭和5年1月号」、「昭和5年2月号」の三冊が収録されている。
 この3冊の内容は、「運動月報」、「雑録」(運動日誌を含む)、「研究資料」、「付録」となっており、「特高月報 昭和5根3月号」以降と、まったく同じ構成になっている。
 これ以前の「特別高等警察資料」は、「第1輯 第1号 225ページ」の「特別高等警察資料編集方針及体裁」にあるように、まったく違う構成になっていた。
 この「昭和4年12月号」には、「特別高等警察資料編集方針竝体裁(改正)」があり、まさに「特高月報」の編集方針と構成が記述されている。
 考えてみると、「特高月報 昭和5年3月号」には、創刊号らしい記述がない。私は、以前から、これが疑問になっていた。
 ちなみに、冒頭にあげた文言の前者は、「弘前高等学校社旗科学研究会員の検挙」(昭和5年1月号32ページ)の内容を指しており、後者は、「昭和4年12月号」と「昭和5年2月号」の「学生運動の状況」で記述されている「学内研究会が、外部の実際運動に参加しつつある」という内容を指している。このように、発行元である内務省警保局は、両者を連続した同じ出版物として捉えられている。
 結論をいうと、「特高月報」は、昭和4年12月に内容を刷新した「特別高等警察資料」を、昭和5年3月に改題したものである。私の疑問は、まさに「灯台元暗し」であった。すでに復刻されたものだったのである。
 特高月報は、昭和10年10月号か昭和13年7月号までは、「特高外事月報」と改題しており、校正も少し異なっている。しかし、多くの場合、これも含めて「特高月報」と考えられているようである。
 今後は、「特高月報」は、昭和4年12月から始まる、と考えるべきであろう。そうしないと、冒頭で上げた文言のような記述を理解することができない。
 なお、昭和4年12号には、「詳細に付ては追って発行さるべき年報参照」(2ページ)という文言がある、先程の「前年度年報」という言葉と考え合わせると、これも気にかかる。

 本書(治安維持法検挙者の記録)との関連についていえば、小森恵氏の蔵書にも、「特別高等警察資料」があった。この中で、検挙者の名前があるところには、鉛筆で欄外に丸をつけてあるところが多い。

 多くの場合、すぐ見つかるように付箋が挟んである。小森氏は、この内容も記録して、本書に付け加えるつもりであり、志半ばにして、病に倒れたのだと思う。さぞ、悔しかったであろう。
言うまでもないことであるが、私のデータベースでは、小森氏の遺志を継いで、これらの内容を、すべて掲載する所存である。

 

西田 義信

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