庶民は知らないアベノリスクの真実 (角川SSC新書)/角川マガジンズ
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庶民は知らないアベノリスクの真実

森永卓郎

この本を読んで気になったことをあげる。

利権社会の到来

民営化されて株式が上場されたとき、世間の論調は、JTは禁煙のなかにあって未来は暗い。電電公社が民営化された日本電信電話(NTT)は情報化の波に乗って大きく発展するだろう。だからNTT株を買うべきというものだった。事実初値は160万円のNTT株はわずか2ヶ月で318万円まで急騰した。

ところが30年近く経過したいま、JTの時価総額はNTTの時価総額を1700億円(2013年6月4日時点)上回っている。NTTが参入した市場は急速に膨れ上がったが、同時に過酷な価格競争に巻き込まれ、経済学のいう完全競争に近づいて利益を上げられなくなった。JTの市場は縮小したが独占しているので利益を溜め込むことができた。成長戦略による独占はこのように、1部の人だけが利益を得られる仕組みを作ることなのである。独占権を持つ企業はボロ儲けができる。問題は、それがどのように選ばれるかとういことである。もちろん政府の覚えめでたい会社である。

たとえば東京駅周辺が、「特例容積率適用区域制度」に認定されたことで、東京駅ホーム上空のあまった容積率部分を周辺ビルに加算した。それで高層ビルが建てられるようになったのである。八重洲の高層ビルのグラントウキョウノースタワー、サウスタワーもそうだ。「特例容積率適用区域制度」に不正があったとうことではない。このような規制緩和が今後あちこちで行われたときに、新興企業でもフェアな競争ができるのかということである。

市場原理主義を拡大させる一方で、市場原理主義の働かないところで潤う企業なり人なりをつくるというのがアベノミクスの本質だから、心配なのである。

景気拡大は2013年7月まで(2013年226日)

金融機関への悪影響だ。国債金利が上昇すると、低金利時代に発行された国債の価格が下落する。例えば現在の1%の金利の国債は、3%の金利の国債が発行されるようになると、そのままでは売れなくなる。誰だって、金利の高い国債の方を欲しがるからだ。結局、金利の低い国債は安値でたたき売るしかなくなるだが、そのとき、大量の国債を保有している銀行に大きな損失が出る。日銀が発表した「金融システムレポート」によると、国内金利が1%上昇した時に大手銀行は3.7兆円、地方銀行は3兆円、信用金庫は1.6兆円の評価損を抱えるという。銀行全体の評価損は8.3兆円だ。もし2%金利が上がったら、損失は16.6兆円に達する。とても銀行業界が吸収できる損失ではない。

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ウェブで政治を動かす! (朝日新書)/朝日新聞出版
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ウェブで政治を動かす

津田大介

この本を読んで気になったことをあげる。

現代の騎兵隊になれ

記者クラブ解禁問題で奮闘したある議員は「インターネットで現代の騎兵隊になれる」という持論を持っている。

「選挙にインターネットを導入しよう、という動きはありますが、それだけでは終わらせたくない。私(この議員)は、究極的にはネットだけで政治家がつくれるし、政治家が動かせる、ということを証明したいんです。戦国時代、火縄銃の存在はどの武将も知っていましたが、それを使いこなすことができた織田信長が強かった。時は流れ、高杉晋作の騎兵隊の時代には、コストをかけず、誰もが銃を使えるようになりました。これは、インターネットによく似ています。昔はうまく使えたものが局地戦で勝つ、というものにすぎなかったものが、広く普及することで、全体像を変えることになる。インターネットという鉄砲を使えば、信長のように特別な人間でなくても、誰もが政治に意見できるし、誰もが政治家になることができる。インターネットで、本当の民主主義が実現できるんです。」

デジタルどぶ板選挙

ある議員は全国比例区の出馬ではない。そのため、選挙区を気にせずにネット戦略を推し進めるのではなく、票に直接結びつく、ある地方のツイッターユーザーのとつながるローカルな戦略をとらざるを得なかった。

「自分から「その地方に住んでいます」とツイートしてくれた人には、必ず返事をしています。また「東京にいるんですけど、実は実家はその地方の○○町で建具屋をやっていて・・」と言われたら、すぐさまその地方の事務所にいる秘書に、その建具屋に行くよう支持を出し、秘書から「ツイッターでお目にかかったので来ました」と挨拶をさせています。そういう地道なことをやらないと、支持は広がっていかないんです」

ソーシャルメディアという最新の技術を駆使しつつ、「挨拶」というアナログな手段で地盤を固める――地方の選挙は、往々にしてどぶ板選挙と呼ばれるが、その議員がツイッターを使って行っているのは、”デジタルどぶ板選挙”と呼ぶべき、注目すべき手法と言える。

「である」から「する」の民主主義へ

政治思想史学者の丸山眞男は「である」ことと「する」こと(岩波新書、1961年、「日本の思想」)のなかで、真の民主主義の実現の段階では、静的な状態である。「である」理論よりも動的な「する」理論への相対的な価値の転換が不可欠であると述べている。つまり、自らが何の職業であるか、どんな身分であるかといった問題よりも「何をするか」が近代以降の社会には重要であるというのだ。

政治は政治家の領分だと考える――この考え方こそ、宮台真司教授がたびたび主張している「お任せの政治」である。選挙への向き合い方に関しても日本人は、「自ら政治に働きかけたい」という意思よりも、そこに問題が生じて、「政治家にお灸を据えるために」投票する傾向があるという。

まずはわれわれ1人ひとりが関心を持つことができる分野から、政策に対する議論を知り、意思を表明していく――その下地をつくり”バッジなき政治家”を生み出すことに大きく寄与するのが、ソーシャルメディアを通じた行政のオープン化ではないか。

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知的財産法入門を読んで

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知的財産法入門

小泉直樹

この本を読んで気になったことをあげる。

会社は発明者にはなれない

企業内で従業員が会社の設備・資金を使用して発明しているのだから、はじめから企業を発明者としてしまえば、面倒な対価の支払いの仕組みなどいらなくなるのではないか、とお考えになる方もいるかもしれません。

実はこのような意見は、現在でも、一部の起業から根強く聞かれることがあります。しかし、特許法は、企業をはじめから発明者とするのではなく、あくまで、発明というものは個人(法律上は、会社などの法人と区別して「自然人」)だけが完成させることができる、ということを前提にしています。

一見迂遠な制度のようですが、個人には自分で出願して特許を取得するか、あるいは、出願権を会社に譲った場合でも、会社から対価の支払いを受けられる、という選択肢があることになり、発明へのやるきが刺激される、という狙いがあるのです。

日本版フェアユース導入論の背景

最近になって、著作権法の世界にも規制緩和の流れが及んでいます。

具体的には、官庁が主体となって関係団体等の利害を調整した上で著作権法改正を行う、というこれまでのスタイルから、問題が生じたら事後的に裁判所による解決にゆだねる方向へ転換をはかるべきである、という主張です。

その際のお手本と目されるのはアメリカのインターネット分野の新規事業者です。彼等は、まず新規事業をスタートさせ、万一著作権者に訴えられたら裁判所で争う、ということを厭わないとされます。

背景には、アメリカは訴訟社会であるという現実があります。

アメリカの事業者のようなスタイルでないと、日本企業は国際競争に勝てない、そのためには、現在日本には存在しない、アメリカに似たフェアユース規定が必要である、という提案へとつながります。

法・技術・裁判官

知財高裁が設置されるにあたり、各界から、いろいろな意見が出されました。そのうちの1つとして、従来のような司法試験に受かった法学部出身の裁判官ではなくて「技術裁判官」待望論というものがありました。理系出身で、裁判官に任官したらずっと知的財産を担当し、定年までずっと知的財産づけの裁判官というイメージです。このような制度を作ってほしいという議論でした。

結局、現在どうなっているかというと、知的財産だけ理系出身者が担当するというという意味での知財裁判所は成立していません。

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