病院の外に出て、
こてっちゃんと信男と美咲は
タバコに火をつけた。

アカシが無事だった事が分かって
安堵感もあったが、
緊張の糸が切れたせいか
皆疲れた顔をしていた。

こてっちゃんと信男は
目の下にクマが出来ていた。

俺も昨日から
頭の中が回転しっぱなしで
少し疲れていた。

こんなに考え事をしたのは
生まれて初めてだったと思う。

「とりあえず良かったッスね」

こてっちゃんが美咲に言った。

「鉄矢、信男、お前等帰って寝ろよ」

「ういッス」

「あんま居座るとよぉ、またアカシの母ちゃん泣いちゃうからな」

「そうッスね(笑)」

今度はこてっちゃんが
俺とワン公に向かって言った。

「達也、ワン公、お前等この後どうすんだ?」

俺はアカシのお母さんが言った言葉に
整理がついていなかったので、
聞いてみた。

「アカシの母ちゃんの言葉覚えてる?」

「ああ覚えてるよ」

「信男は?」

「覚えてるよ」

すると美咲が言った。


「達也ぁ、お前は自分がした喧嘩に恥ずかしい事なんてあるのか?」

「ないよ」

「俺はその気持ちだけでいいと思うよ」

なんだかスっと心のモヤモヤが取れた気がした。

「達也はなんでアカシの喧嘩見に行ったんだ?」

「強くなりてーから」

「お前も男見せたんだろ?」

「やられたけど…」

「男張って大事な物守ったんだろ?」

「…」

「大人の社会の喧嘩に比べたら俺達の喧嘩程綺麗なもんはねーぞ」

「どういう事?」

「正面からぶつかりあうだろ?」

「うん」

「嘘くせー言葉なんて言わねーだろ?」

「うん」

「拳を交えた喧嘩はお前等男に許された特権だと思うぜ?」

「女は喧嘩しない?」

「するよ」

「するんじゃん(笑)」

「頭の良さでも腕っぷしの強さでもいいよ。
大切な物を守れる強さは誰でも欲しいだろ?」

「大切なものか…」

アカシの窮地に
居ても立っても居られずに
飛び出した事を思い出した。

でも俺は
アカシの為に喧嘩をしたのか?

俺は俺の為に、
俺の決意を守る為に
喧嘩をしたのかも。

答えは出なかったが、
美咲の言葉は
アカシに似た説得力があった。

「悩む位なら喧嘩なんてすんじゃねー」

「…俺もそう思う」

「一生喧嘩しない人間もいる。
喧嘩しか出来ない人間もいるんだよ。
そんで喧嘩から
卒業していく人間もいるんだよ。」

「…なるほど」

「口も人を傷つける。拳も人を傷つける」

「達也ぁ、お前の喧嘩はまだまだ可愛いもんだよ。
わかる人間同士が拳を交えてるだけだろ」

「俺もそう思う。口で言ってもわからねー時は?」

「そいつも達也と拳で会話してーんだよ。多分な(笑)拳で語れよ」

次回
つづく