いぬはともだち
実のことを言うとダンナはずぅ~っと犬が怖かった。
小さい頃住んでた家のはす向かいに老夫婦が住んでおり、この家が茶褐色の大きな犬を飼っていた。
この犬はいつもガレージに置かれた犬小屋で鎖に繋がれていたのだが、その鎖が結構長くて門扉のないガレージだったものだから、犬はよく道路まで出てきてはダンナに吼えた。![]()
ダンナはそれが怖くていつも道路の逆側をどぶに落ちそうなぐらい端に寄って歩いていた。
10歳頃に今の実家に引っ越したら今度は50m位離れたところに同級生の女の子が住んでいて、この家がシェットランドシープドッグを飼っていた。
この犬はよくノーリードで散歩していて、下校途中のダンナを見ると猛然とこちらに走り寄って来ることが多く、その度にダンナは必死に逃げ回っていた。![]()
今思えば好かれていた気がする。クリクリッとした目の犬で顔は可愛かったと思う。
それでも当時のダンナにとっては犬の口から見える歯・舌・唾液を見るともう「獣」としての印象しかなく、駆け寄られればおしりをガブっとやられると思い怖くて仕方なかった。![]()
犬が怖くはあったけれども嫌いというわけでもなかった。
当時も見た目に可愛い犬というのは多くいたから、「アニメやぬいぐるみのように噛んだり吼えたりしない犬がいてくれたらいいのに」といつも思っていた。
このダンナの「犬観」は以後20年近く変わらず、犬が大好きな嫁さんと結婚してからもこれは変わらなかった。
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うちの夫婦が互いに30を過ぎた頃、色々と上手くゆかないことが多くなった。
自分は仕事が忙しく週に2,3日は家に帰らない日々。
嫁さんは嫁さんで仕事のストレスを持ち些細なことで喧嘩が絶えない。
何度かの深刻な衝突を繰り返す中でようやくダンナは「自分が嫁さんに無理を強いて追い詰めている」ということを認識し、「嫁さんが心落ち着く環境を少しでも作っていったほうが良い。」と思うようになった。
その方法の一つとして「犬を飼ってみるのも良いかもしれない」と思い始めた。
でも、いかんせんダンナの「犬観」は10歳の頃と変わっていないのだ。
自分の飼えそうな犬はいつもバーチャルな世界に求めてしまう。
だから犬を飼おうかということを嫁さんに言うときも学生の頃大好きだった「ジョジョの奇妙な冒険」という漫画に登場する人間味のある犬のキャラに頼ってこんな言い方をしていた。
「犬種がボストンテリアでイギーって名前をつけてよかったら犬を飼ってもいいよ。」
犬を怖いと思う気持ちは消えていなかったのに何でこんなことを言い出したのか未だに解らないが、言われた嫁さんの方は犬種を問わず犬が大好きであるから、ダンナが言い出したこの千載一遇の申し出に食いつかないわけがなかった。
「それでいいよっ!
」
と即答でこのダンナの申し出に応えた。
一応ダンナにも考えがあった。
この頃には嫁さんに付き添ってペットショップに何度か出入りしていたが、このボストンテリアという犬種には一度もめぐり合ったことがなく、そうそう簡単に手に入る犬種ではないと考えていた。
だから実際に遭遇することはなかなか無いのではないかと考えていた。
ところが、
ヤツはいたのだ。よりによって家から一番近いペットショップにたまたま立ち寄った際に。
「見て!見て!ボストンテリアだよっ
すごく可愛いよ
」
嫁さんはウインドウにかぶりついて大興奮である。
それを見つけた商売上手な店員さん(←E♭ママ)が早くもヤツを嫁さんに抱かせる手配をしている。
ことの成り行き上ダンナも恐る恐るヤツを抱いてみた。
ヤツのほうも緊張しながらダンナに体を預けた・・・・。
その時から全てが変わっていった。
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実際に飼ってみると、噛むは引っ掻くは吼えるは
は外すはでこちらの思い通りになることなんて何も無かったけれど、ヤツは決して「獣」なんかではなかったし、アニメやぬいぐるみなんかとは比べ物にならないほどの表情と感情に満ちていた。
ダンナの「犬観」はすっかり変わり、犬に対する怖さが消え去って今ではドッグランで見ず知らずのラブラドールを撫でてやったりしている。
こんな日が自分に訪れようとはダンナ自身が一番思っていなかったことだ。
イギーが自分にとって何かと訊ねられたら、世話がかかって可愛いのはやはり子供のようなものかもしれないけれど、ダンナの人生にとっては苦手だったいぬを「ともだち」にしてくれるきっかけを作ってくれたのがイギーなわけで、そういった意味ではイギーもダンナにとって大切なともだちなのである。
さて、イギーにとってダンナは何なのだろう。



















































