曳家岡本のブログ

曳家岡本のブログ

東日本大地震以降、ご招聘いただきましたら全国で曳家・家の傾き(沈下修正工事)、家起こしなどをさせていただいている曳家職人・岡本直也の現場と時々(笑)子どもの悩みを書いているブログです。

Amebaでブログを始めよう!

久しぶりに、再建築不可物件の修復相談をいただきました。

都内には足立区や荒川区などに緊急車両は入れない奥まった場所に狭小住宅が残っています。

 

解体してしまうと、駐車場にも出来ませんので、持ち主や不動産会社にしてみると「なんとか直して賃貸に出したい」と考えます。

 

で・・そんな再建築不可物件が傾いて(沈下)していたので当職にご相談をいただきました。

 

あれれ?この不動産会社の方はまあまあ詳しいし、妙に物判りが良いぞ。と思ってますと・・

「もう見積もりを採るのは岡本さんで最期にするつもりです」と言われます。

自分に当るまで他に3社相談したのだそうですが。

2社は現場を見るなり「うちでは出来ないですね」と即、帰られてしまったそうです。

残り1社は、空き家再生の専門家だそうですが。

「傾きは床を貼りなおせば直せますよ」と言って、それ以外のリフォーム工事を含めてまずまずの金額を出してこられたそうです。

素晴らしく立派なパンフレットと共に・・

 

いやいやこの狭小戸建で1000分の40(1メートルに対して4cm。実際には幅4m程度の建物で両端で16cmの傾きが認めらる)を床で直すって??

(しつこく書きますが、今日初めてこのブログ読んでくださっている方もいるでしょうから)

床で調整して良いだろう範囲は1000分の5まででしょう!

 

そして床で調整しても建物本体は、斜めに傾いているわけですから、四隅のある1点に向かって荷重は集まったままですし。

壁や屋根を支えるべき柱が斜めになっているのですから充分に持っていません!!

 

さらに!この建物の場合は、モルタル塗りの壁なのですが、経年と沈下によりクラック(割れ)が入ってそこから水が入って、白蟻に喰われている範囲がまずまずあります。

 

こういう症状が出ていますと、

ある程度までスケルトンにしておいて、社寺や古民家を直すように柱を掴んで持ち揚げて、柱の根継ぎ+土台の入れ換えをしなくてはなりません。

自分は、ボロボロに白蟻に喰われた柱をドライバーでほじりながら、「まだ芯が残ってますから大丈夫でしょう」と言って、そのままその上にコンパネを貼って見えなくするような大工が嫌いです。

 

家は安心して寝ていただける場所であるべきです。

 

さらに、こちらのお家は、基礎が充分に造られていなくて、外周のみ布基礎。内側は独立基礎のようです。

出来ればすべてせめて布基礎にしてつないでやりたいものです。

 

「岡本さん。良い基礎屋さんはお知り合いにいませんか?」

 

「う~~ん。この条件で引き受ける基礎屋さん、いないんではないでしょうか?割高になりますけど・・うちがやるしかないかもです。念のために、うちが施工した場合の見積もりも書きますけど。やってくれる基礎屋さんいたら御願いして欲しいです」

 

との会話をしました。

 

賃貸ですから、4~5年で回収できないといけないでしょうから、周辺の家賃相場と比較して掛けられる費用をお考えになられると思います。

 

昨夜、仲間の大工さんと電話したんですが・・

工期を長く設定してくれるのなら、前向きにやってゆきたいな。と話し合いました。

 

 

 

ps

昨日は久しぶりに、同業のI社長からお電話いただいたんですが。

「えーー岡本さん!えらく都会な場所に住んでいるじゃないですか!!」と言われました。

病弱な次女の通学を考えて引っ越ししたことを話しました。

 

ここらへんは、駐車場代が高いので、通年、使わない(全国を転々としているため)、近隣のコインパーキングを使っているのですが・・

運が悪いと満車になっていて空くまで近くのイトーヨーカードーで時間を潰しています。

は~~仕事から帰ってきて自宅の駐車場に車を停めて、ノーストレスな生活をしたいぜよ!

 

岡山県倉敷市で行われた「木の家ネット」さんの全国総会にゲスト講演者としてご招聘いただいてました。

 

 

今まででの講演会と比べて実務者率が断然高い中でしたので、あまり甘いことを話して恥ずかしいことになっては行きませんし。

 

逆に暴走して皆さんを置いてきぼりにしてもダメですから、なかなか緊張しました。

 

結果は2名の大工さんから

 

自分たち大工も沈下修正の依頼を承けて工事することがあるけど、大工がやって良い範囲と専門に頼むべき線引きを考える機会になりました」

 

「曳家さんが、上部構造だけでなく、地盤や基礎のことなど全体を考えて検討していることを知って驚きました」

 

などの感想を頂きました。

 

また、懇親会後の分科会は、現地入りしてから知ったのですが、当職の「沈下修正編」のみとして頂いていて、お疲れのところ、またお話を聞いていただくという申し訳ないプログラムでした。

 

それでも、こちらのアンダーピニング工法、耐圧板工法、薬液注入工法、発泡ウレタン工法、サイドピニング工法、土台揚げ工法の現場レベルでのメリット、デメリットを解説したセミナーは、みなさんに新鮮だったようで,

 

「今まで、聞きかじりでしか知らなかった技術の概要を判りやすくまとめて話してもらえて、勉強になりました」と喜んでいただけました。

 

ですが、相当、緊張してお伝えした曳家技術についての解説の方が皆さんの心に訴えたような手応えがありました。

 

滋賀県の設計士の川端さんが他の施工事例の画像と比べて,

 

「岡本さんが、蚤の心臓だと言うことがよく判りました。」

 

とご指摘頂きました。

 

自分にとっても弊社の立ち位置を見直す機会を頂きました。

 

最後になりますが、ご準備や暖かいもてなしをして下さいました倉敷市在住の石場建てを専門とする建築士の和田さんに感謝を伝えます。

 

もちろん故郷高知の生きる伝説、沖野建築沖野棟梁と奥様のお気遣いも忘れてはなりません。

 

 

皆さま、ありがとうございました。