曳家岡本のブログ

東日本大地震以降、ご招聘いただきましたら全国で曳家・家の傾き(沈下修正工事)、家起こしなどをさせていただいている曳家職人・岡本直也の現場と時々(笑)子どもの悩みを書いているブログです。


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熊本地震が起きて、益城町を中心として、古民家(石場建て)の建築物が烈しく壊れたことがマスコミで報道されました。


それゆえ、廃れ行く「伝統構法」を見直すべきだ。と活動されている「一部」の方が、

「伝統構法は、瓦や壁が落ちて被災が大きく見えるが、それはそうすることで地震力を「いなす」ものであり、免震構造ゆえの想定内の損傷です。ですので、直すことも簡単に出来ます」と云うような意味合いのことを発言されています。今からその発言に対しての批判を書きます。


初めにお断りしておきますが、自分は「伝統構法」の建物が好きです。だから、「一般社団法人 全国古民家再生協会」さんのセミナーなどにも参加させていただいて勉強もさせていただいています。

他にも「建物修復ネットワーク」さんも独自に実験等を行なっていますし。

レポートも発表されています。どちらも同様のことを書かれていますが、「全国古民家再生協会東京第一支部」の杉本支部長のお言葉を借ります。


「修復は難しいが、曳家など色々な専門職の技術により直せます」








以下、先日の「構造塾」佐藤先生のセミナーの内容を抄訳させていただきます。

※内容の誤りがありましたら、それは当職の理解不足ですのでご指摘ください。


「石の上(礎石)の上に乗っているだけですから、簡単に元の位置に戻せます」と云うご意見に対してですが、


その発言の前に「伝統構法の建物は、金具を使わず、ホゾやヌキでつながっているゆえ、地震力がかかってきても「変形する」ことで、力をいなす、免震構造です」と言ってます。


すると、「元の位置に戻す」際には、足元だけジャッキやワイヤーなどで押し戻したとしても、「剛構造」ではありませんから、「建物は変形したまま、」足元だけ戻っている。


※以上、佐藤先生のセミナーより


と考える方が自然です。






また私ども「曳家」は石場建ての建物の微調整を行う場合、そのまま、足固めや敷居にジャッキを掛けることを「良し」としません。

必ず専用の金具を使って「柱に穴を開けることなく」添え柱を取り付けて、ジャッキを斜めにしたり、反力が獲れるものがあればそこから「突き掛け」をします。


その上で上部構造も直してゆくのですが、経験の浅い建築士さんなどは、施主に「壁はそのままで直させますから」と安請け合いします。

しかし、それでは竹小舞と土壁が、筋交いになってしまってますので柱は動きません。


もっと言うと、地震で礎石からずれた建物を元の位置に戻す際には、先に建物を水平に直しておかなくては、指鴨居の仕口などが本来の位置から動いている可能性もありますから、まずは水平に直してからです。そうでないと仕口を傷めます。






再び佐藤先生のセミナーからの引用です。


「この家は先日の地震でも倒壊しなかった。だから安心して暮らせる、では無くて、なんとかこの前の地震では命を守ってくれた。でも地震により摩耗があるので、以前より弱くなっているので、一度、補強をしなくてはならない。と考えるべきです」


なかなか実際には、みなさん、大きなお金がかかることですので、簡単には行きませんが。

それでも私たちは「何が正解なのか?」を知っておいて、ご相談をいただいた際に、幾つかの選択肢をお教えできるようにしてゆかなくてはなりません。


ps

現時点での自分なりの回答としては、伝統構法の建物を修復する際に、傷んだ仕口を補強するのは、安価にするならば「耐力壁」等を入れてしまう。但しこの場合は「剛構造」になってしまいます。ですので費用はかかりますが、「「免震構造」のままにしておくためには、要所に免震ダンパーのようなものを取り付けるのはどうなんだろうか?と考えています。


ps2





社寺仏閣の場合、元々の使われている骨材が大きいです。さらに、欅や栗など硬い木が使われています。それゆえ、「400年前」のものなどが存在できます。

それと、3寸5分や4寸角の一般住宅を混同するのも良くありません。


ps3

高知の伝説の伝統構法の大工、沖野棟梁などは一般住宅であってでも5寸柱を使われるのは、そういう事情もあってだと思います。

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弟子と2人だけとは云え、「経営者」ですから、色々な方とお逢いすることも大切な仕事です。

このところ、建築に関わる色々な立場の方や勉強会で、新たな知識をいただいています。




18日(土曜日)は、「一般社団法人 全国古民家再生協会」関東地区大会のセミナーを受講させていただきました。

この中で東京第一支部支部長の杉本さんがされている「動的耐震診断」についてのご説明があったんですが・・これはなかなか良いものだな。と思いました。

通常は家の強度を測るには「新築時」のスペックをもとに計算するものですが、これならば、「現時点でのコンディション」の数値が出るわけですから、耐震改修を行う際の良い指針になります。


ただ、これは私たち曳家も同様ですが・・「動的耐震診断をしても、壁がきれいになるわけでも無いし、お風呂が新しくなるわけでもありません。何にも変わらないですから、それにお金を出すより他のものに費用をかけられてしまいます」と言われていたのが、印象に残りました。


車とかなら、車検とかあるんですが・・家は無いですものね。

ここらへんはお施主さんたちの意識を変えてゆく努力を建築関係者一同がしてゆかないといけないです。




20日(月曜日)は、「構造塾」の佐藤先生による、熊本地震による住宅の倒壊がどう起きたか?を(現時点で)延べ6日間、熊本に出向き調べられたデータをもとに「構造設計と施工管理の問題」を語るセミナーを拝聴させていただきました。

佐藤先生の素晴らしいのは、マスコミ等の協力も得ながら、実際の被災住宅の所有者の許諾をもらって、新築時の申請書類と現物とを照らし合わせながら、4号特例によって法的には建築確認が獲れているものの、壁が一部に極端に偏っている等、「構造計算をしていない」建物の問題点と「現場での施工不良」の洗い出しを丁寧にされていることです。


実際に倒壊した住宅のオーナーさんと、施工された地場のビルダーさんに行き「一緒に解体調査をして原因究明をしませんか?」と持ちかけたけど。

ビルダーさん側からは「10年も前の物件のことを今さら言われても困る」といったニュアンスの対応だったそうです。

逆にオーナーさんにしてみれば「まだ建てて10年」と思われるのは至極当然です。


セミナーの最期に質疑応答があったのですが、どうやら熊本からわざわざ来られたらしい工務店さんから「今回の地震で、築40年の住宅が傾いたのを改修費用も含めて500万円以内でやってくれ。と頼まれているのですが、どうすれば良いですか?」と云う質問がありました。


「予算の問題は常にあることですから、それはもう優先事項を決めて施工するしかないですよね。築40年ということは、家の自重で地盤はもう下がらなくなっていますから・・通常は5年もあれば落ち着いてますから。(注釈・地盤改良をすると一般的に400万円~からかかるのでそれは諦めるという意味です)、「土台揚げ」で水平に直して、残りの予算で改修をする。とかなら出来るんじゃないでしょうか?」




大都会の光景を見ながら・・

お付き合いいただいた「解体屋ゲン」原作者の星野先生と「もっと難しい話かと心配してたけど、意外と全部、理解出来ましたよね(笑)」と話しながら帰って来たのですが・・これはもちとんそれぞれの講師が判り易く説明してくださっているところが大きいことは判っていますが・・


それでも、自分は6年前には、今、聴いている話を半分くらいしか理解出来なかったんではないかな~~と思います。

今年56歳になりますが・・東京ではまだ6年生です(笑)素直に色々、勉強させていただけてありがたい限りです。


ps

佐藤先生が伝統構法の修復方法についてなかなか手厳しい説明をされていました。

たいへん為になりますが、長くなったんで、それはまた次回に書きます。


ps2

一時期より減りましたが、熊本からのご相談はその後もあります。予算、時期の問題があるので、すぐにご招聘いただけるわけではありませんが・・このこともまた書いてゆきたいと思います。少しはみなさんの参考になっているようなんで(笑)

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次の現場までのスケジュールが空いてしまいました。

せっかくなんで、この機会を利用して、色々な団体のセミナーや、ご紹介いただいた方のところにご挨拶に出向いている日々です。


前々から指摘されていることなのですが、「曳家や家の傾き(沈下修正工事)の相場が判らない」「判らないので価格で選ぶ」と言われます。


そりゃそうですよね。価値を理解できないものに大金は払えません。

お酒のディスカウントショップで見かける無名ブランドの安い缶コーヒーと、バリスタの入れるスペシャリティコーヒーを同列に考える人はいないと思います。


同じ「土台揚げ」でも、


基礎補修において、「モルタル」で詰めるのと「コンクリート」で詰めるのでは強度が違います。


同じく基礎補修で、モルタルを団子に置いておき乾いてから化粧するのと、型枠を組んでおいて「コンクリート」を小手などを使って強く強く押しこんで固めるのとでも強度は違います。


みなさんが気にされるアンカーボルトの再接合も、

「プレート」で基礎と土台を繫ぐよりも、「溶接」。しかしそれよりも「長ナット」で繋ぐ方が、強度と「せん断力」は確保されます。


一つ一つ書いてゆく、キリが無いので・・詳細は「曳家岡本」hpを見ていただくとして・・

「安心を買うためには手間を掛けて強度の復元にこだわらないといけない」「それには費用がかかる」と云うことをご理解ください。


下世話な話ですが・・blogの検索機能を使って、どんなワードで。このblogを見に来てくださっているのか?見ることがあります。

すると「珍しい職業 曳家 儲かる?」と云う検索履歴が出てくることがあります。


いやいやいや(汗)珍しい=仕事の需要が少ないから職人が減っている。わけですから・・儲かっているわけではありません。


そもそもセミナーに参加して、初対面の大工さんたちに、尋ねられるのが「専業なんですか?」です。


「専業ですよ。他のこと出来ないんで(汗)」と答えると皆さん驚いてくださいます(苦笑)


ピカソではありませんから、短時間で高額な作品を生み出すことは出来ません。

私どもがしている仕事は、芸術ではありませんので、決して高額なものではありません。

純粋に手間と経費を積算させていただいております。


熊本地震以降、色々な方々が、「にわか曳家」のようなことをblogに書いているのを目にしてしまいます。

こんなんで良いのかな?自分で考案してみた料理のレシピを公開するのと違って、家を傷めている工事内容を拡散するのって悪意は無くとも「悪」では無いのか?



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