Twitterで、ひどくたたかれている自治体がある。


始まりは、確か3月。

その自治体の動物愛護管理センターを訪れたあるひとが書いた2年前のブログ記事。
それを読んで憤った別人がTweetし、拡散させた。


そう。2年前の記事だ。





その記事から画像を無断で拝借し、
「ここに収容されているネコちゃんへの待遇はひどい! 
みんなで意見電話をかけて改めさせよう!」
というのが拡散の趣旨だった。


拡散され、センターは電話がひっきりなしにかかったそうだ。

収容されている動物の世話もおろそかになってしまうほどに。

引き出しの電話をかけたヒトが、
ずっと話し中でなかなかつながらず、焦ったほどに。




確かに、使われた画像はあまりにも哀れだった。

冷たそうな金属の 小さな箱。




それも、
伝染病蔓延防止のため。
人慣れしておらず、そのうえ環境の変化でパニックになって暴れる猫の怪我予防のため。

そういった理由もあったのだが、
それでもやはり、狭く小さな金属の箱は、
哀れに見えた。


その箱を、普通のペット用のケージに変えろ というのが
もともとのTweetの目的だったはず。


動物たちへの世話の時間、
迷子の問合せや里親応募への電話回線


それらを人質にとられたかたちで、
当該センターは金属の小さい箱で猫を管理することをやめ、
ペット用のケージ使用に切り替えた。

雌雄の確認さえできない、凶暴な猫もペット用ケージで管理されることになった。

それが、4月のこと。





だが、6月現在Tweetは拡散され続けている。









ここで、当該センターの動物管理状況をみてほしい。

愛護管理センター資料


確かに、27年度の殺処分数は多い。
乳飲み子の収容数が異常に多かったそうだが、
猫全体の収容数が昨年より200頭も多い。

そして、処分数は昨年度より50頭多い。


だが、この処分数には、負傷して収容され死亡した猫、
育たなかった乳飲み子も計上されている。

実は、そういった「死亡」した数は「処分数」として計上しない自治体も多いのだ。

2年連続で殺処分数ゼロを達成した神奈川県の管理センターも
「死亡」した動物は、「殺処分」の数に含めていない。


だが、この施設は、それも含めて「殺処分」として発表している。
ガス室で殺したのでなくとも、
人間の都合で施設に持ち込まれ、死んだのだから、
それは「処分」なのだという命への真摯な姿勢にほかならない。



そして、譲渡数をちゃんと見て欲しい。


譲渡数



昨年度の3倍なのだ。



他センターでは即殺処分となることも多い乳飲み子を
このセンターでは、広く一般から授乳ボランティアを募り、
職員の方々、地元ボラの方々が育て上げ、守った。

・3~5時間置きの授乳
・排泄の補助
・健康観察
・社会化のためのふれあいや遊びの相手
・授乳量や体重などの記録

命への責任と、惜しまぬ愛情。

それがあってのこの数だ。




そんなことさえ、理解しようとせず、

いまだ、捏造される中傷TweetはRTされ続けている。




「里親募集なんて頭からしないそうですよ。里親希望者の挙手が無ければ皆殺し状態です。」

「挙手無き場合は衰弱死するまで放置か殺処分❗」

「猫の団体が少ないため成猫は譲渡として生かすことができない
里親希望がない限り一週間で処分」


平然と流布されるあまりにも酷い虚偽の情報。


成猫譲渡


1歳の猫、2歳の猫も一般譲渡の候補として公式サイトに掲載されていた。

収容時に体調の悪かった猫も、治療を施され、譲渡候補として紹介されている。


それでも、そのアカウントは、
数ヶ月にも渡ってデマのTweetを流し、電話での抗議を煽り続ける。




そして、
そのデマを、なんの疑問も抱かずにRTするヒトたち。



必死で命と向き合い、必死で守ろうとしている方々の
心を傷つけ、名誉を傷つけ、
動物たちに関わる時間を奪っている。



この不当な中傷アカウントにまず対峙したのは、
長く愛護活動に携わってらっしゃる地元ボランティアの方だった。

ついで、愛護団体が反論の声をあげた。



これは、稀有なケースだと思う。


よく目にするのは、
「よくぞ言ってくれた!地元なだけに行政に対して
なかなか言えなかった苦言を代弁してくれて助かった!」

というパターンだ。


だが、今回のケースは真逆だった。


「殺処分ゼロ」を目指し、
日々自分たちの時間と体力と財力を削って活動しているボランティアの方たちが
行政を庇う立場に回った。

私設のボランティア団体は、
自らの団体名でそういった趣旨の意見文を掲載した。



その掲載場所には、センターへの激励のコメント、
捏造を交えた誹謗中傷tweetを垂れ流す無責任なアカウントへの非難などが寄せられている。


これらの意味を考えてほしい。

内情や裏側を知りつくし普通ならもっとも厳しく批判する側の人々が
中傷tweetに同調して非難するのではなく、
センターを庇っている現実の意味を。



間近で実際に目にして知っているからだ。
この自治体のセンター職員さんたちの努力を。









RTしている方たち、

あなた方はなにをしているのかわかっているのだろうか。






殺処分される猫の数を増やしているのは誰なのか。

誰を責めているのか。

今日も動物たちの世話をし、
私たちがパソコンのモニターやスマホの液晶画面を見ているこの瞬間も、
消えそうな命の炎を必死で守り、明日へとつなごうとがんばっている方たちを責めて
どうしたいのか。



もちろん、保健所や管理センターは、
飼えなくなった犬や猫を引取り、新たな飼い主をみつけてくれる場所ではない。



しかし、責めたいのなら、

子猫・仔犬のうちだけ可愛がり、飽きれば棄てる。

あるいは、

猫を放し飼いにし、帰宅できなくし、事故にあわせ、
保護する人間のいない子猫を産ませる


そんな人たちを責めろ。





そんな者たちさえいなくなれば、

殺処分など誰もしなくて済むのだから。