一迅社文庫アイリス編集部

一迅社文庫アイリスの最新情報&編集部近況…などをお知らせしたいな、

という編集部ブログ。


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こんにちは!

今週、一迅社文庫アイリス4月刊が発売されます!
ということで、本日から4月刊の試し読みを実施します(≧▽≦)

第1弾は……
『双翼の王獣騎士団 狼王子と氷の貴公子』
王獣騎士団
著:瑞山いつき 絵:ミヤジマハル

★STORY★
地味顔だし、特別何かが優れているわけじゃない。王都へ行った義兄のジークは自分のせいで帰ってこないし――。と悩みをつのらせていた辺境伯公女エリカはある日、領地に出現した魔物のせいで窮地に陥ってしまった! そのとき、颯爽と現れた王獣騎士団が救ってくれたのだけれど……。帰城したエリカは、なぜか団長のラルフ王子と二人で樹の上で会話することになってしまって!?
男だらけの騎士団で未来を拓く、地味系乙女のラブファンタジー。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 枝が大きく揺れて、ラルフの膝にあった籠が、果物ごと地上に転がり、そして――
 エリカの足は、空中に投げだされた。

「…………え?」
「こんな状態で逃がしたら、男がすたる」

 ラルフの声が近い。
 エリカは確かに枝から飛び降りたはずだ。
 なのに腕を強く引かれたと思った瞬間、エリカは腰を抱かれ、ラルフの膝の上に横座りしていた。
 数秒遅れて、エリカの手にあった林檎が、ぽてりと落ちた。

「暴れるなよ。さすがに枝の上だとバランスが悪い」

 我に返って暴れようとしたエリカに、冷水のような警告がされる。
 その声が低くて、少し怖い。ラルフを自分の身体から離そうとしていた手が、ただその上着をつかむだけに変わった。

「…………あの、御不興を買ったのは、わたしの不徳のいたすところであり……大変申し訳なく思って――」
「だからその口調は止めろと何度も言わせるな。あと顔を上げろ。俺から目をそらすな。俺はエリカを傷つけたいわけじゃないし、自分で自分を傷つけてほしいわけじゃないんだ」

 命じる声に逆らえず、顔を上げて揺れそうになる瞳を定める。
 先程よりも近い位置にある精悍な顔が、むっとしたような表情を浮かべていた。
 からりと晴れた空のような瞳が苛立たしげに鋭く光って、エリカの視線を縫い止めてしまう。

「…………そもそもなんで『可愛い』で怒るんだよ?」
「世の中そんな言葉を喜ぶような女性ばかりじゃないんです。少なくともわたしは……惨めになります」

 ――口説かれたわけじゃない。本心じゃない。まともに受け取るな。

 聞いた瞬間に自分自身に繰り返した言葉に勝手に傷ついて、落ちこんで、泣きたくなる。
 ちょっとだけ認められたと思ってしまったから、それが本当に嬉しかったから、その落差に心が追いつかない。
 その説明をすることすら苦痛で、今すぐ逃げだしたかった。
 なのにラルフは容赦してくれない。

「……惨めになるってことは、俺の言葉が信用できないってことか? だから馬鹿にされたと思うのか?」

 たぶんまだ少し怒っているのだ。

「…………」

 違うとも、そうだとも言えずに目をそらす。
 ――それが、返答になった。
 無意識に首筋をなでるエリカを見たラルフが、苛立たしげに舌打ちした。

「傷痕があるから、自分には容姿を褒める言葉が相応しくないと思うのか?」

 息を呑む。

「なんで……そのことを……」
「原生林でジークが気にしていただろ。それに少しだけあいつの過去は聞いている」


『とうの昔に、そこの傷は完治してますよ』

『……思いあがらないでください。あなた程度の容姿なら、傷の一つや二つ拵えたところで差し障りはないのだから』


 そういえば、兄とそんな会話を交わしていた。

「俺もジークの言い方はどうかと思うが、要は『傷の一つや二つじゃ、エリカの価値は揺らがない』ってことだぞ」
「…………」

 それはいくらなんでも好意的に解釈しすぎだろう。

「傷がついて評価が変わる人物は、傷を受ける前の容姿が美しいからです。わたしは……元が地味だから、今さら傷があっても、受ける評価は大差ありません――兄が言いたかったことは、そういうことです」
「そうじゃない――言葉じゃなければ信用するか?」

 疑問の言葉と一緒に、手の平で包むようにして顔を持ち上げられた。驚く間もなく、スカーフの結び目をラルフの指がこじ開けてくる。

「ちょっと!」

 不安定な場所だということも忘れ本気で嫌がるエリカを力で押さえつけ、ラルフが無慈悲にスカーフを解き、ずっと隠し続けていた傷痕を外気にさらした。

「やだ!」

 唇を奪うような野蛮さで、ラルフの吐息がエリカの首筋に触れる。完治しているとはいえ、他よりも薄い皮膚は敏感で、柔らかな感触に背筋が震えてしまう。
 熱いのか冷たいのか、くすぐったいのかわからない感触に混乱しながらも、エリカはラルフの腕から逃れようともがいたが、より深く抱えられただけだった。


~~~~~~~~(続きは本編へ)~~~~~~~~
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