一迅社アイリス編集部

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こんにちは!
試し読み第2弾は……(〃∇〃)

『恋と悪魔と黙示録 恋咲く世界の永遠なる書』

糸森 環:作 榊 空也:絵

★STORY★
「この世界でぼくだけは、レジナの望みを叶えたい」
人と獣の姿を持つ神魔アガルと契約をし、彼の恋人となったレジナ。人間と悪魔が争う中、《最古の王女》である自分の運命を受け入れたレジナは、魔王マグラシスと対峙する。
混沌とした世界で明かされていく真実、レジナとアガルが選んだ未来――そしてその先に待っていたものとは? 一途な魔物と乙女が織りなす大人気悪魔召喚ラブ★クライマックスの第九弾!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 アルテミシアでの生活が始まってから、一週間。
 その日の朝、目覚めると、寝台のクッションの横に『家出します。すぐ捜してください』という怪しいカードが置かれていた。レジナは唖然とした。そこは普通、捜さないでください、と書くものではないだろうか。
 こんなカードを置く者は、アガルしかいない。


 身支度をすませたのち、レジナは樹幹の外へ出た。
 アガルが怪しいカードを寄越した理由はだいたい想像がつく。この一週間、イリヤと八十階の音楽室にこもり、楽譜の清書や翻訳にかかりきりだったせいだ。カラシャから七十五階を自室にしていいと言われているが、眠りに戻る以外ほとんど使っていない。どうやらレジナの神魔は、すれ違い生活に寂しくなり、拗ねたらしい。たとえどんな状況であっても純粋な乙女精神を貫く存在だともうじゅうぶんすぎるほどわかっているので、今更驚かない。
 カードには家出と書かれているが、実にわかりやすい目印が用意されていた。樹幹を出てすぐの枝に、小振りのバスケットがぶら下がっている。枝から外してなかを確かめれば、瑞々しい苺が入っている。それを手に提げたまま進むと、ふたたび小さなバスケットを発見した。今度はビスケットが入っていた。さらに進めば蜂蜜入りの瓶、匙と皿と敷布、赤ワイン入りの銅缶、ジャムパイ、丸パン……とどう考えても朝食用としか思えないバスケットが次々見つかる。
 レジナはつい笑った。なんてかわいらしい家出だろうか。
 最後に発見したのは、赤い獣――大山猫の姿に変身しているアガルだった。地面を貫く巨木の枝の下で、つんと顎を上げ、お澄まし顔で座っている。

「捜しにきたよ」

 笑いかけながら、集めたバスケットを赤い獣の前に置く。
 赤い獣はやけに冷然とレジナを眺めると、おもむろに身を起こし、ぐるぐるとまわりを歩いた。その途中でなぜか、叱るようにぺしんとレジナの太腿を長い尾で叩く。わざとらしく溜息もついている。

「……。けもの。かなり感じ悪い」

 我慢できずつぶやけば、赤い獣は脚で地面を蹴り、土をかけてきた。なんの嫌がらせか。

「けもの!」

 レジナは腹を立て、きゅっと尾を掴んだ。すると赤い獣は髭と目をつり上げ、軽く伸び上がってレジナの腹部を額で強く押す。まさかの反撃に抵抗できず、その場に仰向けになる。

「ひどい! 昨日も雨が降ったから、土が濡れているのに!」

 この神魔を捜すため、シャツに胴着にズボンとあえて動きやすい格好を選んできた。なので、汚れてもかまわないといえばかまわないのだが、大変憎らしい。背中がどろどろだ。
 こうなると笑って水に流すことはできない。レジナも目を細くし、赤い獣をむりやりひっくり返して地面の上に転がした。毛を汚されてむかっとしたらしい、赤い獣はすぐさま身を起こすと、汚れた前脚でレジナのズボンを徹底的に連打した。しばらく大人げない喧嘩が続いた。

 ――おかしい! なんでわたしたちって、いつもこうなるの!?

 息を荒くしつつ睨み合っていたら、赤い獣がふいにその姿を溶かした。いつにも増して藻髪具合が凄まじい土まみれの美青年がそこに現れる。青い瞳に、透き通った涙が浮かんでいる。

「ぼくをこんなに汚して満足ですか! あなたは他者を辱めることに喜びを見出す人なんですね! 変態!」
「変態!? というよりアガルが最初に土をかけてきたんでしょう!」
「そんな色気も優雅さも皆無の武骨な格好をしてくるほうが悪い!」
「ドレスだと動きにくいもの!」
「淑女の心はどうしたんですか!」
「アガルが持っているからわたしには必要ない!」
「もう悪女であることを隠す気もないと!? 信じられない……っ」
「なんでそうなるの!」

 アガルはいかにも傷ついたという風情で頬をうっすらと赤くし、震えている。本当におかしい。女の自分より儚げで可憐とは、どういうことなのか。

「この頃のあなたはろくに眠らず食べもせず、あの眼鏡といやらしく密会ばかりしているでしょう。身体に悪いと心配になったから、今日はきちんと朝食を取っていただこうと思っていたのに!」
「色々間違っているけど、わたしすごく悪者みたいじゃない!?」

 この家出は、レジナのために計画されたものだったらしい。

「そんなに眼鏡が好きなのですか。ぼくにもあれをかけろと?」
「なんの話!?」
「ぼくは、この世に存在するすべての眼鏡を破壊したくてたまりません」

 とうとう他の眼鏡まで破壊対象にされた。

「……ありがとう、アガル。ビスケットをいただいても?」

 もう今更だが、レジナはぱたぱたとシャツやズボンの泥を払い、バスケットから取り出した敷布を広げて、礼儀正しく尋ねた。「どうぞ」とアガルが怒りながらも答える。
 レジナはかりかりとビスケットを食べた。
 ぎょっとするほど、しょっぱい……もしかしてアガルが作ったのだろうか。
 衝撃に打たれる。料理ができるようになった? 自分の知らない五百年のあいだに?

「それで、あなたはこのあとも性懲りなく眼鏡と密室にこもって淫らに囁き合うんですね?」

 ビスケットを喉につまらせそうになった。胸に広がりつつあった感傷が一瞬で消し飛ぶ。

「音楽室で楽譜の清書をするだけ!」
「ああ、いやらしい……」
「なんで!?」
「ぼくとすごす時間より、眼鏡と秘め事に耽る時間のほうが断然長いじゃないですか」
「カラシャとの取引のためだよ!」
「楽しんでいるくせに」
「まさか!」
「書物を抱えながら至福の表情で音楽室に入り浸っているくせに」
「……。本への情熱は見逃して」

 レジナは敗北を悟った。自分が悪い。清書済みの楽譜をイリヤに確かめてもらうあいだ、翻訳用の書物に目を通す。ぐんとのめりこんでしまう。外の戦争も、大事なものも全部忘れ、文字だけが自分の世界になる。もはやそこには、誰より愛しいアガルでさえ入れられない。たとえるなら、聖陰書――神の背の皮で作られた悪魔の生態解明書を収める特殊な空間だ。

「あなたは昔からそうでした。ぼくを平気で置き去りにする」
「でもアガルだって、本が好きでしょう」
「あなたが好きだったから、ぼくもいつしか惹かれるようになったんです」

 その言い方にひっかかる。いつしか、ではなく、彼は最初から読書を楽しんでいたはずだ。
 アガルも自分の言葉に違和感を覚えたらしい。戸惑ったように視線を揺らす。

「変だな。……あなたとこうして、木の下で朝食を取ったことがありませんでしたか?」
「リシュル地区の屋敷のそばに立っている木の下で? それなら何度もあるよね?」
「いえ、世界樹で」

 アガルは眉をひそめ、考えこむ顔つきで頬に指を当てる。

「たしか、そこでもあなたはぼくを忘れて本に熱中したから、腹が立って手に軽く噛みついたことが」
「……浮気者」
「はい?」

 低い声で非難すると、遠くを見やっていたアガルが驚いたように振り向く。

「わたしには、そんな記憶ないけど?」
「え、そうでしたか?……ですが、あれは間違いなくあなただ」
「ないけど?」
「……」
「誰と食べたの? 女の人なんだよね? へえー……。その人はちゃんとドレスを着ていたんだ。髪も飾って? どうせわたしは色気も優雅さも皆無だし淑女でもないし。ふーん……」

 ここぞとばかりに責め立てると、アガルは呆気に取られ、それからあたふたした。

「な、なにを言うんですか。ぼくはいつでもあなた一筋です」
「言葉って、虚しい……」
「レジナ!」
「はあ、いやらしい……」

 先ほどのアガルを真似て、深々と溜息を落とす。
 聞き捨てならないというように、アガルは声を張り上げる。

「ぼくがあなた以外に噛みつくと思うんですか!?」
「実際噛んだんでしょう? 手」
「だから、それはあなたで!」
「まったく記憶にないもの」


~~~~~~~~(続きは本編へ)~~~~~~~~

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こんにちは!

今週は半ばには一迅社文庫アイリス7月刊が発売されます!
ということで、本日から試し読みを実施します(〃∇〃)

第1弾……
『箱庭の息吹姫 ひねくれ魔術師に祝福のキスを。』
箱庭
著:瀬川月菜 絵:紫真依

★STORY★
触れるものから植物を芽吹かせる、奇跡の力を持つ巫女姫ルーレ。彼女はある願いのため、『世界を滅ぼす』魔術師アンドゥルラスに助けてもらおうと聖域を抜け出した。そして、出会った直後に、帰れと言われてしまったアンドルゥラスにすがりつき、なんとか助けてもらえることになった翌日――

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 空気が動き出し、夜の気配は地面の低いところに追いやられていく。
 朝日が昇ると夜の気配は消えていき、空は刹那、金色の光を放つのだ。そうして光を浴びた植物たちは、大きく呼吸しながら、ゆっくりと目覚めていく――。
 ――馴染んだ気配を感じて目覚めたルーレは、帳から漏れる光に朝の訪れを知る。深く息を吐き、違和感を覚えて、何度かまばたきをした。

「…………?」

 破れのない真っ白な寝間着。
 緑の染みがない美しいシーツ。

「…………っ!」

 勢いよく起き上がって部屋を飛び出す。
 厨房には焼きたてのパンと、脂たっぷりのベーコンの香りが漂っていた。それを盛り付けていたウルルがこちらに気付き、恐らく朝の挨拶を言いかけたが、目を丸くし「わー!?」と叫び声を上げた。

「なんだ!?」
「どうしたの!?」
「あっ、おはようございます! 魔術師さま、ランさま!」

 かんかんかんかんかん。

「おはよう……?」と返してくれたランだが、周りには疑問符が浮かんでいる。彼の隣にいるアンドゥルラスも、入ってきたルーレを避けて壁に張り付いているウルルも同様だ。

「ルーレちゃん……どうして、やかんを叩いてるの?」
「うれしくて!」

 ランの疑問は解消されなかったらしい。大きく首を傾げられたので、改めて説明した。

「すべて夢だったらどうしようと思いながら、昨夜は眠りについたのです。目が覚めたら、寝間着は身につけた時のまま、寝台は緑に覆われていなくて……まだ都合のいい夢を見ているのではないかと思って、何かにさわってみようと、やかんを」
「なんでやかん」
「そこにあって、きらきらしていたので」

 でも夢じゃなかった。ルーレは呟き、やかんをぎゅっと抱きしめた。

「これが日常になるように、力を制御できればいいのですよね。わたし、頑張ります!」
「うんうん、頑張ってね。でも先に着替えておいで? さすがに年頃の女の子がその格好でうろうろしてるのは、ちょっと犯罪的かなあ」

 ずる、と肩から寝間着が落ちそうになる。
 ルーレの身体に少し大きな寝間着は、離れからここまで駆けてきたせいで、ただ巻きつけているという状態になりつつあった。しかも裸足だ。

「アンディ。ちらちら見るのはやらしいよ」
「みみみ、見てねーよ! っていうか、はっきり見る方がいやらしいだろ!」
「時と場合と、見る側の意識によりますぅ。アンディはやましい気持ちがあるからだめー」
「聖域でのくせが出てしまいました。すぐに着替えてきます。お目汚し、失礼いたしました」
「お目汚しじゃないね。目の保養だね」

 どういう意味か知りたくて会話を続けようとしたルーレに、ランは「いいから着替えておいで」と手を振った。


~~~~~~~~(続きは本編へ)~~~~~~~~
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※販売開始日は店舗様によって異なりますので、詳細は各店舗様にお問い合わせ下さい。
在庫数や販売開始日・方法について編集部にお問い合わせいただいても、お答えすることができません。
※また、商品に関しましては限定数のため無くなり次第品切れ、終了となります。
品切れの際は申し訳ありません。
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