斉藤薫さん
美容自身より。

悪循環な人生か、良循環な人生か、みんなどちらかを生きている。

占いを否定するつもりはないけれど、毎日の星座ランキングを見て、その日その日の行動を決めていくような生き方のパターンは、やはり間違いなのだろう。なぜなら人の人生は、つねに連鎖しながら形作られていくものだからである。

つまり、人生は”1 話完結のドラマ”ではなく、延々と終わりのない続きもの。だから勢いよく走っていけば、いきなり止まることなく惰性で走り抜けてしまえるように、人生はずっとつながっていて、前の日、前の月、前の年の影響を良くも悪くも受けながら進んでいく。だから、どうしようもない悪循環に翻弄される人生か、良循環に高められていく人生か、全員がどちらかを生きていることは間違いがないのだ。

たとえば、恋をすると仕事がうまくいく……これは生理学的な裏づけもある良循環。もちろん、恋の始まりは体がふわふわ浮き上がるようなトキメキに全身を支配され、それこそ仕事など手につかなくなるが、やがてその興奮状態がおさまったとたん、ある種の鎮静作用を持ったホルモン、β-エンドルフィンが分泌されて心が満たされた充実した状態になり、仕事にも打ち込める。人にも優しくなれて、なんだか知らないが几帳面にもなって、それまでグチャグチャだった部屋を整理し始めたりして、身も心も一気に浄化されていくのだ。

それが証拠に、仕事が極めて順調な時にさらりと結婚してしまう女優は少なくないが、米倉涼子さんの電撃結婚はその典型的なケースだったと思う。逆にこの人の場合は仕事が思い切り順調だからこそ、パートナーと一生一緒に生きていく覚悟ができたということなのかもしれないが、到達点は一緒。そして今や女も男のように、私生活が充実して心の支えができるともっと仕事に没頭でき、その人の人生そのものがそっくり充実していくという良循環が起きるのだ。

一方、逆に悪循環を断ち切ったのかもしれないのが、自ら家を出て、強い意志を持って離婚訴訟に踏み切った三船美佳さん。恋愛でも、”この人と別れないと人生が進んでいかない”と分かっていても別れられないケースがあるはずだけれど、まさにそういう時の人生の停滞は”悪循環”そのもの。恋愛がうまくいかないと自信がなくなり、自信がないと余計に、この人と別れたらもう一生”一人”かもしれないと思って別れられない。そしてなんとか関係を修復しようともがくから他の事のすべてがおろそかになり、その結果生きていく不安にも見舞われ、もっと相手にしがみつく。だから修復はさらに難しくなる、という悪循環。ともかくいろんな悪循環が絡み合うのだ。こんがらかった毛糸は、ほどこうとするともっとこんがらがるように。

それが相手と別れた途端、すべてがパーンと弾けてリセットされる。自ら作った魔窟から抜け出した開放感と達成感で、体の中に既にエネルギーが充満しているから、ゼロからのスタートじゃなく、もう助走が始まっていて、ものすごく高く飛べてしまう……そういう良循環が始まっているのだ。三船美佳さんの場合も、早くもその助走が始まっているかに見えた。悪循環も自分の意思ひとつで、一瞬のうちに良循環に変えられるのだ。




結局、すぐ立ち上がれる筋肉がないと、人生、悪循環になる

しかし、多くの人は自分の人生が悪循環に陥っていることに気づかない。木を見て森を見ず、目の前のことしか見なければ、悪循環など見えるはずがないのだ。でもなんだかうまくいかない、思い通りにならない、ちゃんとやっているのに報われない……そう感じる人は、悪循環を生きている証。原因を一日も早く取り除くこと。その原因がパートナーだったりすればいっそ解決も早いのだが、問題は原因がもっとはるかに分かりにくい時。たとえば、”前向き”になれば、一見何もかもが良い方向に進み、良い形で巡っていきそうだが、それがそうでもないという話をしたいのだ。


”前向き”とは、悪いことが起きた時にも良いふうに解釈して、前に進むこと。しかしドンマイだけで前に進んでしまうと、何も学習しない。”後ろ向き”になりましょうというのではなく、その度に自分のせいにすることが大事なのだ。自己批判がそこにないと1周回って元に戻ってしまい、前にも上にも行けない。ましてや必ず誰かのせいにしてしまう人の人生は、血液がドロドロになって血の巡りが悪い悪循環のようなもので、あちこち問題が起きてくる。そして後退していく。挫折を経験しないのが問題なのは、”自分のせい”と思うチャンスがないからなのだ。

ただ最大の悪循環は、多分億劫がって動かずにいることなのかもしれない。人の人生は、人間の体と同じ。動かないでいるとだんだん体が鈍ってきて、もっと動きたくなくなる。それは筋肉が減っていくからで、筋肉がないと立ち上がりたい時にスッと立ち上がれない。ぐずぐずするか諦めてしまうか、どちらにしてもさらに筋肉が減って動きたくなくなる悪循環。よく”気力を作るのは筋肉だ”と言われるけれど、それも気力は筋肉を借りて行動を起こすからだし、根気よくやり遂げたり、くたびれずに立ち続けたりできるのも、すなわち筋肉なしには成立しない気力の仕事なのだ。


人の人生もひょっとしたら、そのものズバリ、筋肉がないと動いていかないのかもしれない。何かを面倒と思ったら、何も動かない。気力がなかったら、何も続かない。人生もやっぱり筋肉がないと何もやり遂げられないのだ。ましてや動かないといろいろガタがくる。運動不足がいろんな病気の原因にもなったりする。とすれば、良循環の源も筋肉? そう考えてしまえばいっそ分かりやすいし、人生を立て直しやすいはずだ。

だって考えてもみてほしい。人生を成功させている人に決定的に共通しているのは、とても当たり前だけれど、一生懸命。諦めないということ。成功していると女優は、ひとえに一生懸命だから売れる。諦めないから支持を得る。口幅ったい言い方だけれど、無心に努力する人には絶対かなわないのだ。そういう一生懸命や努力や熱意を生む力が、いつどんな時にも億劫がらずに、スッと立ち上がれるチカラだとすれば、大切なのはやっぱり筋肉ということになる。見せる筋肉ではなく、気力のための筋肉……。血管を詰まらせるような原因を取り除いて人生をやり直す時も、結局は立ち上がる力がすべてなのだから。

そんなこと? と言うかもしれない。でも悪循環と良循環を分ける最初の差など、所詮はそんな些細なものなのだ。しかしその差がみるみる膨らんでいって運命の明暗さえ分けてしまうのが、人生における連鎖なのである。それに早く気付かないと、本当に人生レベルの損をする。その程度の違いで、幸不幸の何割かが決まるのだから。一日も早く、良循環に切り替えて。


人の人生をうまくまわしていく鍵は、
驚くことなかれ、実は筋肉。
すぐ立ち上がれるか否かの差が、
みるみる膨らみ、明暗を分けるのだ。