(Ⅵ) アフリート(16)

 それは月明りの夜、あらゆる物の影が伸びており、その樹の影が風に揺られながら地上に映っていた。枝が揺れるたびに、その影は伸びたり縮んだりした。伯母は、背負っている赤子が、彼を絞め殺そうとしている分身精霊に追いかけられていると信じていたので、当然、すでに恐慌状態に陥っていた。

 深夜にただ一人の伯母には、恐ろしい妖怪が伸びたり縮んだり、右に左に揺れ動いているように見えた。ナツメヤシの枝は、この妖怪が手にして彼女を打とうとしている、恐ろしい鞭に見えたに違いない。それは彼女を錯乱させるに十分な状況だったが、それでも彼女は気持ちを奮い立たせて走り逃げ、家のドアにまでたどり着いた。彼女は恐ろしさのあまり、力の限りドアをたたいて、中で眠っている人たちを起こした。彼女は死んだように静かになっている赤子を抱きしめたまま、入り口で気を失った。