Mating Service Part1

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世の中には多種多様な職業が存在し、かつ、それらには全てにおいて、多かれ少なかれ需要がある。
だから、売上高や利益に差はあれども、商行為として成り立っているのだ。
人の命を救うためであったり、困った人を助けるためだったり、またそれらの逆であったとしても、仕事ということ自体にランクや次元の違いはない。
職業に貴賤なし、とはよく言ったものだ。
結局、金を稼ぐことに違いはないのだから。



よくよく考えれば、あれが始まりだったのだ。



いつもの居酒屋で、ひとりでチビチビ飲んでいるときのことだった。
カウンターの端に、最近よく見る顔があった。
俺はここの常連になって、もう10年になるが、その顔はこの半年、頻繁に見るようになった。
だが、会話を交わしたことは一度もなかった。
どこにでもいるようなサラリーマン風情で、俺よりも年齢は一回り大きく見え、、体格は一回り小さい、いわゆる中肉中背の中年男だった。



「お兄さんは身体を鍛えてらっしゃるんですか?」
あらかた客が引けて、カウンターに俺とそいつのふたりだけになったとき、その男が初めて声を掛けてきた。
俺は身長は185cmあって、肩幅も広い。
『なんだ、こいつ』と思い、ちらと見ると、その男の目には明らかに輝きが伴っている。
そういう趣味を持っている可能性が高い。
俺は嘘を付いた。
「いいえ、全然」



すると、居酒屋の大将が割って入ってきた。
「何言ってんだよ、翔ちゃん、謙遜にもほどがあるぜ」
『余計なことを言いやがって』と心の中で思った。
ビールをジョッキで2杯、芋焼酎をロックで5杯。
ようやく酔い始めたというのに、それも醒めてしまった。



「翔ちゃんはね、お客さんはご存知ないかもしれないが、都市対抗野球出場経験者なんだよ」
「そうだったんですか!翔さんはやはり、いい体格をなさっているわけだ」
なぜか中年男は喜んだ。
男色の気があるのだろうか。
俺は大将を窘めた。
「大将、個人情報は勝手に漏らすもんじゃねぇよ」
「翔ちゃん、いいじゃねぇか、自慢できる経歴だと俺は思うぜ」



俺にはそっちの気はない。
睨むような俺の視線の意味を、中年男が感じ取ったのだろう。
慌てて否定してきた。
「いやいや、私はそういうつもりでお聞きしたのではないのです!お間違えの無きように」
「じゃあ、どういうおつもりで?」
「実は私は、こういう生業の者でして・・・」
中年男が懐から名刺を出して、恭しく頭を下げた。




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