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2009-10-18 23:59:12

「パイレーツ・ロック」

テーマ:海外映画・ハ行

『パイレーツ・ロック』
THE BOAT THAT ROCKED
(2009年・イギリス&ドイツ/135分)
公式サイト
UK-JAPAN枠試写会にて鑑賞
10月13日(火)開場/18:00 開演18:30
会場:東宝東和株式会社 試写室

退屈な音楽番組なんてくそ食らえ!

BBCはOFFにして、俺たちの熱い鼓動を聴いてくれ!

「もっと聴きたい」、「もっと聴かせたい」。

時代のニーズが生んだ海賊ラジオ局から

DJたちが毎日24時間流し続けた「音」たち。

彼らが人々の心に届けた珠玉の放送は、

その後のブリティッシュポップ&ロック40年の歴史の礎となる。


※以下画像は英国大使館広報部並びに東宝東和から提供を受けています。
ひょうたんからこまッ・Part2

<監督>
リチャード・カーティス
<製作総指揮>
リチャード・カーティス、デブラ・ヘイワード、ライザ・チェイシン
<製作>
ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、ヒラリー・ビーヴァン・ジョーンズ
<脚本>
リチャード・カーティス
<撮影>
ダニー・コーエン
<編集>
エマ・E・ヒコックス
<キャスト>
ザ・カウント:フィリップ・シーモア・ホフマン

カール:トム・スターリッジ

クエンティン:ビル・ナイ

ニュース・ジョン:ウィル・アダムズ

デイルシック・ケヴィン:トム・ブルック

アンガス:リス・ダービー

デイヴ:ニック・フロスト

フェリシティ:キャサリン・パーキンソン

サイモン:クリス・オダウド

ハロルド:アイク・ハミルトン

ドルマンディ:ケネス・ブラナー

ミスC:シネイド・マシューズ

マーク:トム・ウィズダム

デジリー:ジェマ・アータートン

トゥワット:ジャック・ダヴェンポート

ボブ:ラルフ・ブラウン

ギャヴィン:リス・エヴァンス

マリアン:タルラ・ライリー

エレノア:ジャニュアリー・ジョーンズ

シャーロット:エマ・トンプソン


ひょうたんからこまッ・Part2

1966年、イギリス。
世界中がビートルズやローリング・ストーンズに恋をしていた。

ブリティッシュ・ロック全盛期の時代!!

なのにお堅い国営放送は正統派のジャズを推奨し、

人々が本当に聴きたいロック&ポップが流れるのは1日たったの45分。!

日ごとにリスナーの不満は高まる中、

ご機嫌なビート&リズムを引っさげて、ついに「彼ら」はやって来た。
大海原の波に揉まれる船に乗り込み、
DJたちは人々が渇望する「音楽」を流し続ける。
「ヘイ!この熱い鼓動が聞こえるか!」
熱い男たちの「ハート」が刻む「ビート」は、
ラジオの向こう側のリスナーの心をシェイクし続けた・・・。
アメリカ出身のザ・カウント(フィリップ・シーモア・ホフマン)を中心に、
クールなDJたちは24時間人々の待ち望んだ音を放送しつづけ、
ロックの取締りをもくろむ政府は彼らの駆逐にやっきになるのだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


昨年1年間お世話になったUK-JAPAN2008の活動が終わりました。

1年間を通じてお誘いのあったイベントは、

音楽系のもの、芸術系のものと様々なジャンルに渡っていましたが、

映画の試写会へのお誘いは意外に少なく、

結局「バンク・ジョブ」の試写会に参加したのみでおわってしまいました。

しかし英国大使館主導のもと、その後もUK-JAPANとしての広報活動は続けられており、

私たちUK-JAPAN公認ブロガーも引き続き、

英国大使館主催のイベントに招待される機会をいただけることになりました。

その第1回目のイベントがこの『パイレーツ・ロック』の試写会でした。

試写会には全体で40名が招待され、

その半数の20人がその後のレセプションにも招待されていたのですが、

今回は幸運にもその両方への招待を受けましたので、

試写会後のレセプションに関してはまた別枠で記事書くことにしますね。


とりあえず、期待して試写会に臨んだ本編の感想を書くことにします。

高校を退学になったカール(トム・スターリッジ)が

この海賊船に乗船するところから物語は始まります。

海賊局のオーナーでカールの親名付け親でもあるエンティン(ビル・ナイ)に

カールの母親が彼を預けた理由は「更生のため」。

常識や秩序などとは「違う次元で生きている」ような男たちが共生し、

海上から海賊放送を送り続けている船上で更生とはいかに!?(笑。

まず船上の男たちのはちゃめちゃぶりに、最初からすっかり毒気を抜かれてしまった私です。

カールを更生させようと言う母親の目論見はさておいて、

カールはこの船で色々なことを「体験」し、

良い意味で男としての成長を遂げていきます。

溢れるようなサウンド、煙草の香り、愛、友情、青春、

ダンス!ダンス!ダンス!

地上の何物にも邪魔されない世界。

全てがそこにあり、全てが混沌と、船底に漂っていました。

いつの日か放送を続けることがが不可能になる日が来るまで。

イギリス中の殆どの人が熱狂的に支持した海賊放送。

毎日DJたちの声を聴き続けたリスナーたちにとって、

いつしか彼らは恋人以上、家族以上の存在になっていったのです・・・・。


まずは、とにかく音楽の洪水を楽しんでください。

映画を見た後に思わずサントラを購入したくなる人も多いのでは?

ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・キンクスなど、

60年代~70年代の懐かしいロックの名曲が、郷愁を誘います。


【送料無料(一部地域除く)】(CD)パイレーツ・ロック 
オリジナル・サウンドトラック/(オリジ...

このサントラの表紙や映画のチラシ・ポスターなども

実はこのCDをリスペクトして作られています。



サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド (リマスター)


とにかく懐かしい音楽が沢山登場します。

この楽曲を聴くだjけでも十分楽しめてしまう映画ですが、

その合間に散りばめられた「ちょっとシモネタがらみ」のコミカルなシーンや台詞が、

これまたかなり私たちの心をくすぐってくれてしまうのです。

海外の「お笑い」とはあまりウマが合わない私ですが、

どうやら「英国式コメディ」とは相性が良いらしく、

ちょっと下品なこの「笑い」ですが全然OKなのです。

周りを憚らず思わず声を出して笑ってしまったシーンもいくつかありました。

また、男ばかりのこの船に明るいカラーを加えてくれている

お嬢様方(女優たち)が、これまたキュートなんです。

勿論男性役者たちも良い味出していますね。

ラストシーンでばっちり見せてくれるビル・ナイのクールなダンス!

彼を含めて全ての登場人物が曲者ぞろいで、

愛すべきキャラの本質をどこまでも噛み砕いて演じています。

特筆すべきは、カール役のトム・スターリッジ。

何となく『重力ピエロ』の岡田君にも似ていて、個人的に要チェックな俳優でした(笑。


・・・テレビも、娯楽も、何も無い時代。

だからこそ、人々は私たちには想像のつかないほど深く英国ロックに傾倒しました。

その証拠に当時数100局もの海賊局がイギリスには存在していたそうです。

彼らの熱い鼓動こそが40年後の今、

健在な英国ロックを育て上げたのだと言っても過言ではないでしょう。、

音楽を聴くだけでも価値がありますが、

キュートで個性的な登場人物の衣装や、

ウィットにとんだ彼らの会話もどっぷり楽しんで欲しい作品です。

音響の良い劇場での鑑賞をオススメします。
「パイレーツ・ロック」の映画詳細、映画館情報はこちら >>


キャラデコ








2008-11-15 18:06:08

奪ったのはダイヤと王室スキャンダル~「バンク・ジョブ」

テーマ:海外映画・ハ行

『バンク・ジョブ』

THE BANK JOB

(2008年・イギリス/110分)

公式サイト

「UK-Japan 2008」 公認ブロガー枠にて鑑賞

会場/スペースFS汐留

11月11日(火)開場/18:00 開映/18:30


借金まみれの人生に見切りをつけようと、

一攫千金を夢見た男たち。

銀行地下の貸し金庫に進入した瞬間から、

彼らの運命は予期せぬ方向に転がりだす。

強奪したのは宝の山と国家機密。

利用する者、利用される者、

欺く者、欺かれる者。

腐敗する者、腐敗を導く者。

・・・組織対組織対組織・・・。

転がりだした賽は止められない。

「盗まれた秘密たち」を巡り交錯する人々の思惑。

最後に笑う者は誰だ。


<スタッフ>

監督:ロジャー・ドナルドソン
脚本:ディック・クレメント、イアン・ラ・フレネ

<キャスト>

テリー・レザー:ジェイソン・ステイサム
マルティーヌ:サフロン・バロウズ
ティム・エヴェレット:リチャード・リンターン
ケヴィン:スティーヴン・キャンベル・ムーア
デイヴ:ダニエル・メイズ
マイルズ・アークハート:ピーター・ボウルズ
ウェンディ・レザー:キーリー・ホーズ
ハキム:コリン・サーモン
マイケルX:ピーター・デ・ジャージー
ガイ:ジェームズ・フォークナー
ソニア:シャロン・モーン
バンバス:アルキ・デヴィッド
フィリップ・リスル:アリスター・ペトリ
エディ:マイケル・ジブソン
イングリッド:ジョージア・テイラー
ロウ・ヴォーゲル:デヴィッド・スーシェ

貸金庫の銀行員:ミック・ジャガー


(画像は主催者からの提供を受け許可を得て掲載しています)


英国王室を震撼させたスキャンダル・・・。

封印された事件が今紐解かれる。

それは、たった一枚の写真から始まった・・・。

1971年、イースト・ロンドン。

ある朝、この町の銀行の地下金庫が破られた。

犯人たちの携帯電話でのやり取りを

偶然無線で傍受していた市民がいたことから、

後に「ウォーキートーキー事件」とも称されたこの事件は、

当時その全容の殆どが伏せられ、

未だに謎とされている部分が多く残されていると言う・・・。

 

発生から30年以上の時を経て当時の関係者の証言を元に、

事件は「ひとつの物語」としてスクリーンに再現された。

英国政府によって2054年までは国家機密にされているこの事件。

90%以上は真実の物語とする非公式情報もある中で、

何所までが真実か、何所までが虚構なのか・・・。

それは、それ。

 

 

ここにひとつ、観客にとってはワクワクするような

クライム・サスペンスが誕生したことは確かだ。

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物語の性質上公開前のネタバレは極力避けたい・・・。

このジャンルの作品のレビューでいつも悩む部分ですが、

極力爆弾を踏まないように作品の魅力を書いてみたいと思います。

 

作品の魅力の第1点は、

英国王室のスキャンダルだけでは無く議会・警察権力のタブーにまで踏み込んで

物語が描かれていることです。

もうひとつは、主人公がプロの強盗ではなく素人であったこと。

物語をありきたりな犯罪ドラマに終わらせていないこのふたつの要素が、

この作品の魅力の中核とも言えるでしょう。

 

カタギの男が一瞬にして別世界へとジャンプするスリル、

彼に付き合いながら私たちは最後までそれを味わうことになるでしょう。

特に物語前半の銀行襲撃までを描くシーンでは

分刻みのスリルが私たちを待ち受けることになります。

また、複雑にもつれ合っていく事件の後半では

笑ってばかりもいられないシーンも続きますが、

主人公たちの背後で二重三重に様子をうかがう、

敵味方の「組織たち」の存在もなかなか興味深いです。

 

誰が「狐」で誰が「狸」か。

「犯罪者よりもあくどい連中」や英国特務機関「MI-5」を向こうに回し

翻弄される主人公達の悲喜劇が、

もつれ合った紐の先でどのように解放されるのか。

 

一気に畳み掛けて物語をラストに導く監督の手腕が非常に見事です。

それもそのはず、

監督は『世界最速のインディアン』ロジャー・ドナルドソン

『リクルート』『13デイズ』なども手がけている監督ですが、

『世界最速のインディアン』のラストにも似た痛快さを本作でも感じました。

また色々な意味で反骨精神に溢れた脚本の魅力も大きいと思います。


 

そしてこの作品の最大の魅力、

それが主役を演じているジェイソン・ステイサムです。

素人集団を束ね、ある日いきなり強盗団を結成するテリー。

彼はその日まで、借金苦にあえぎながらも

愛する妻や子ども友人たちに囲まれ普通に幸せに暮らしていました。

妻には過去の女関係を疑われ、友をも巻き込みながらも

つい踏み込んでしまった犯罪への道。

ただの強盗のつもりが地下金庫で「パンドラの箱」を開けたばかりに、

知らなくても良い事件の『裏』を嗅ぎ付け、

国家組織・犯罪組織を相手に知恵で対抗することになる元中古車店主を、

彼しか持ちえぬ独特の魅力で描いています。

最近のジェイソン出演作では久々に魅力的な役どころで、

ファンとしては嬉しい限りでした。

 

それにしても高貴でお偉い方々・・・、

不用意に恥ずかしい写真を撮られすぎです!

そして銀行の貸金庫ってスキャンダルの宝庫なの?・・・(笑)

 

実は貸金庫の銀行員をミック・ジャガーが演じていたらしいです。

うっかり見逃し気付かなかったのがちょっと悔しい点ではありますが、

公開後の鑑賞をぜひお薦めしたい作品です。


 

11月22日(土)よりシネマライズ他全国順次ロードショー

 

 

★試写会当日の記事はここ です。



 



 

 

 

2008-10-26 23:56:30

僕はここにいてもいいの?~「BOY A」

テーマ:海外映画・ハ行

『BOY A』
(2007年・イギリス/107分)

公式サイト

10月17日(金)シネトレブロガー試写会にて鑑賞
会場:
シネカノン試写室/開映:19:30


脚本家マーク・アロウからのメッセージ

映画『BOY A』で、私たちがやろうとしたことは、
原作同様、観客に、彼が何をしたかを具体的に知る前に、
まず彼という人間に出会ってもらうことでした。

そして彼と感情の旅をしてもらいながら、
彼が過去に何をしたのかを少しずつ明らかにしていく。
はたして過去を知ることで、
それまで彼について感じていたことは変わるのか。
それがこの映画にとって最も大切な点です。
ですからどうぞ、先入観をすてて、主人公の青年を見てください。
そして、まだこの映画をご覧でない方には、

彼の過去を明らかにされないようお願いします。


シネトレ試写会でプレスシートをいただきました


2008英国アカデミー賞・4部門(男優賞・監督賞・編集賞・撮影賞)受賞

2008ベルリン国際映画際パノラマ部門エキュメニック審査印象受賞
<監督>
ジョン・クローリー/ Director :John Crowley
<脚本>
マーク・オロウ/Screenplay:Mark O’Rowe
<原作>
ジョナサン・トリゲル/Novel by :Jonathan Trigell 「BOY A」
<キャスト>
(ジャック)
アンドリュー・ガーフィールド/Andrew Garfield as Jack
(テリー)ピーター・ミュラン/Peter Mullan as Terry
(ミシェル)ケイティ・リオンズ/Katie Lyons as Michelle
(クリス)ショーン・エヴァンス/Shaun Evans as Chris

ひとりの青年の心の傷、希望、孤独を、胸が痛くなるほどエモーショナルに描く

ブリティッシュ・インディーズの新たな感動作。

 

主人公ジャックを演じたアンドリュー・ガーフィールドの

痛々しいほど瑞々しく透明感のある演技、

そしてミシェル役のケイティ・リオンズの包容力のある演技にも魅了されました。

2人の存在感を抜きにしては語れない作品です。

そしてそれ以上に心を打ち砕いたのは、そのストーリーでした。


言葉を失う・・・。
まさにその状態に陥らせてくれた作品です。

記憶に残るほど心を揺すぶられた作品との出会いは、
今までにも幾度かありました。

その作品を語るとき、
感情が素直に言葉になって溢れるほど湧き出すか、
逆に伝えるべき言葉に迷いすぎて表現する能力を失ってしまうか、

私はいつもその両極端でした。

素晴らしい作品に出会い、考えなくても心の中が次々と文字に変っていく。

・・・それは本当に至福の時。

でも私は時にその感覚とは紙一重の所で、言葉を失ってしまうことがあります。

『BOY A』 の鑑賞後に感じた感覚がまさしくそれでした。

心を鷲づかみにされてしまえばしまうほど、逆に言葉が出てこなくなる・・・。
その作品で感じた胸の痛みや鼓動をどう言葉にすれば人に伝わるのか。

どう表現すればその作品の魅力をデフォルメせずに伝えることが出来るのか。
考えれば考えるほど、適切な言葉を見つけ出すことが出来なくなって、

感情を言葉にしてを外に発信すること、

「感覚」を人に伝えることの難しさに改めて気付かされます。


一番最近では私が最も大好きな作品のひとつ

『約束の旅路』 を観た後にその状態に陥りました。
レビューを書きたくても言葉が全く出て来なくなってしまって、
文章を書くことに対して完全にスランプ状態に陥りました。
あの時と同じ状態の私が、今ここにいます。

シネトレ さん主催の「日本最速ブロガー試写会」で

この素晴らしい作品を鑑賞する機会を与えられておきながら、

2週間も経った今やっとその感想に手を付けようとしている私です。


 

 

実は本来はこの作品に余分な言葉は必用ないのです。

「先入観無しで、この映画を鑑賞してほしい。」
脚本家のマーク・アロウ氏の言葉、

これこそが作品を紹介するのに最も相応しい言葉だからです。


 

 

・・・ですからこの先は、

出来れば作品を鑑賞された後に読んで頂きたいと思っています。

とにかく伝えておきたいことはこの一言なのですから。

『BOY A』 は今年鑑賞した中でも最高峰に挙げたい作品のひとつです。

劇場での鑑賞を強くお薦めします。


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罪と罰。
その言葉の重みをあなたは今知るだろう。
・・・・・・・・・・

彼は悔いていた。

彼は努力した。

彼は生まれ変わった。
それでも。
・・・・・・・・・・・

罪を犯した彼の掌から、

簡単には刻印は消えなかった。
・・・・・・・・・・・・・

泣き叫ぶ少女の未来も、

自分自身の未来も、

残酷な程にあっけなく、

刈り取ってしまったあの時。
・・・・・・・・・・・・

それから先の人生は、

あまりにも長いトンネルの中。
その遥か先の出口に見えた光さえ、

幻なのか。
・・・・・・・・・・・・・・

生まれ変わろうともがく魂と。

それを許さなかった社会と。
・・・・・・・・・・・
彼の背中に天使の羽を見たのは、
命を救われた少女の無垢な瞳だけ。

・・・・・・・・・・・・・・
それはあまりにも脆く、
成人した少年が空を舞うには儚すぎた。

愛を得ようともがき続けた

居場所の無い孤独な魂の物語に

今は、ただ言葉を失っている。



『約束の旅路』『トゥヤーの結婚』『マトリックス』 『ダークナイト』
・・・そして『BOY A』
作品のジャンルは全く異なりますが、

私が好きな作品としてこれからも挙げていく事になるであろうこれらの作品には、

(その描かれ方や、表現方法にそれぞれ違いはありますが)
どれも主人公のidentityが深く描かれていることに共通項があるように感じます。

この物語の主人公ジャックは過去の自分とは決別し、
名前もそれまで生きてきた歴史も捨てて新たな人生の一歩を踏み出そうとします。

閉鎖的空間で過ごした決して短くは無い年月。

その「時間」がジャック自身のidentityにどう関わったのか。

その間の出来事はここでは触れられていません。
しかしジャックは生まれ変わったのです。
完全に過去とは決別して。
その日を境に、彼の前には幾通りもの未来が開けているはずでした。

ジャックには過去から彼をずっと支えてくれた一番の理解者テリーがいました。
また勤め先の同年代の成年クリスとも新たな友情を育むことが出来そうでした。

それどころか、人生で初めて恋人も出来たのです。

子どもの頃から家庭的にも孤独な環境で育ってきたジャックにとっては、

初めて彼を心から受け入れてくれそうな人々との出会い。

 

何もかもが新しく誕生したジャックを受け入れてくれそうでした。


でも、それはジャックの側からの視点・・・。

ジャックの「過去」に巻き込まれた側の人々の視点で見れば、

物語に対する感情的な部分はまた変って来るでしょう。
彼らの心を深く傷つけた「あの経験」は、

決して「ジャックたち」を許してはくれないのです。
私はこの作品を見たときに過去に日本で起きた、
未成年者によるいくつかの事件を思い出しました。
そしてこの物語「BOY A」の原作者ジョナサン・トリゲルも、

「ある日本の事件にヒントを得て」物語を執筆したそうです。

 

 

あの少年たちが成人の歳を迎えたとき、私たちは何を思ったでしょうか。

私自身、正直に言ってしまうと、

ある種の「恐れ」「不安」を感じていたことを否定出来ません。


この作品に描かれている「ジャックを取り巻く周りの社会」に、

実は私たちは住んでいます。

罪を犯した人々の社会復帰を危惧する者、

彼らの更正に疑問を投げかける者。

そして今現時点での彼らのありのままの姿を見つめようとしない者。

・・・現実では、それが私たちです。

 

「好奇心」「偏見」で瞳の濁っている私たちは「生まれ変わった彼ら」の背中に、
もしかしたら「天使の翼」が生えていることに気付けないでいるのかも知れません。


 

でも、

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

でも。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

ジャックを追い詰めた社会に住むひとりとして、

私はこの作品からは様々な啓示を受けました。

 

 

 

ジャックがかつて抱えていた孤独と、

ソーシャルワーカーのテリーの息子ゼブが抱える孤独は、

同一線上にあります。

いったい何が彼らを塀の「中」「外」に分けたのか。

何がジャックに「その一線」を越えさせたのか。

ジャックには孤独な傷を舐めあう似たもの同士の危険な友がいたから?
ひとりでは出来ないことも二人なら出来たから?
それだけでは説明はつきません。

 

 

いつでも交差することの出来る「その一線」

状況次第ではジャックとゼブの立場が入れ替わる事も有り得たのです。

そこにもこの問題の深い闇が見えてきます。

ひとりの少年をの心を救ったテリーだったのに、

自分の息子の心は救うことが出来ませんでした。

大きな愛でジャックを見守っていたテリーなのに、

自分の息子の孤独には無頓着過ぎたのでしょうか・・・。

ゼブの持つ孤独の闇がジャックの孤独を上回った時、悲劇は起きます。

 

 

結果的に「2人の息子」の未来を見失うことになるテリーが、

この先心に背負い続けることになる重い十字架。

「外界の重圧」に耐えながらジャックを庇護し続けた

優しいテリーの未来にも思いを馳せた時、心が痛みました。

そしてそれ以上に衝撃的なラスト。

ジャックの選択に私たちは何を思うでしょう。

 

海辺の街での「再会」・・・あれは現実なのか、
あるいは神様が束の間ジャックに見せた淡い夢だったのか。

 

犯罪者の心に良心が戻り自分の罪深さをきちんと理解できた時、

その瞬間から感じ続けるであろう「心の痛み」こそが

彼にとって一番の「罰」になるのではないかと常々私は考えて来ました。

自分の犯した罪を理解できないまま服役しようと、そして「例え極刑になろうとも、

それは彼らにとって何の贖罪にもなりはしないのです。

 

 

 

例えばジャックが少年時代に出会ったフィリップ。

同じ罪を犯した彼は何も理解しないまま「罰」を受けました。

それが受動的なものであろうと、他動的なものであろうと、

彼は既に「罰」を受けました。

でもそれは自分の罪を何も理解できなかった彼にとって、

贖罪とはならないのです。

少なくともフィリップよりは強い心の持ち主だったジャック。

 

確かに犯罪に走った少年は罪を問われるべきです。

しかしその後の彼は強い意志と努力で、

灰色の繭から「ジャック」と言う名の蝶になって孵化しました。

ソーシャルワーカーのテリーが誇りにすら思うひとりの青年に。

明らかに美しく生まれ変わった彼のその後の人生を、

再び罰する権利を私たちは持つでしょうか。

様々な側面から見たとき、答えは幾つも用意されている作品です。

それでも鑑賞後の私は素直な気持ちでこう感じています。

ジャックたち真新しいスミーカーをプレゼント出来る社会でありたい。」・・・と。

 

この物語に描かれていることは閉鎖的な日本社会だけではなく、

世界各国に共通するテーマであることにも気付かされました。

ひとりでも多くの人に鑑賞して頂き、

それぞれの立場で深く考えてもらいたい作品です。


『BOY A』 のオフィシャルコミュニティサイトとして、

今回はシネトレ が参画しています。

今回も素晴らしい作品の試写会に招待いただき、感謝しています。


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