I am the eggman, they are the eggman | 陽炎の帯の上へちらりと逆まに映る鴉の影―どーすかΩ

陽炎の帯の上へちらりと逆まに映る鴉の影―どーすかΩ

この部屋の中にいるヤツに会いたいのなら もっと、寿命をのばしてからおいで


615 Name:Anonymous Coward@dosuka

Ghostから見ると、物理的身体は、本来どこにだって行ける

Ghostの限界点を規定するただの足手まといでしかない?


616 Name:Anonymous Coward@dosuka

高度に発展した脳化社会において、ということ?


617 Name:Anonymous Coward@dosuka

そう。


618 Name:Anonymous Coward@dosuka

夢の21世紀に到達した今日でも、人類のテクノロジーは

その生産物に独自のGhostを獲得させるまでには至っていない。

どころか、物理的身体の枠組みなしには既存のGhostの

維持さえできない。


619 Name:Anonymous Coward@dosuka
結局、Ghostはその発生過程でどうしても物理的身体に

依存するってわけか。


620 Name:Anonymous Coward@dosuka

その通り。


621 Name:Anonymous Coward@dosuka

うーん。でもさ、Ghostが物理的身体に依存することって

そんなに悪いことの様な感じがしないんだよね。


WWW以前の人間は、皆何かしらの時間的、空間的に

限られたコミュニティに所属していて、実に即物的な

バイアスの下でGhostが育まれたわけだろ?


僕はWebのインフラが整っていく、その過渡期に

子供だったんだけど、その時期って社会が

モナド資本主義に飲まれていく時期と重なってたんだよね。

核家族化、終身雇用制度の限界、地域社会の崩壊、

ついでにバブル経済の崩壊。


息遣いだけで気持ちが分かっちゃうような閉鎖的な

コミュニティってさ、プライバシーなんかどこにもなかったり

して残酷なんだけど、意外と安心安全で楽なんだよね。


そういう社会はかつて、確かにあったんだよ。

僕が過ごして来た時代にはまだその残滓みたいなものが

かすかに残ってたんだ。


だから僕は物理的身体、物理的世界にちょっと同情しちゃうし

幻想だとしても、触れるモノの温かさみたいなのを

無視できないんだよね。


622 Name:Anonymous Coward@dosuka

もしかして、それってBetaLevel-Realityに対する

パトリオティズム?


623 Name:Anonymous Coward@dosuka

あ、多分そうだね。MetaLevel-Realityはどんどん発達して

今や「もうひとつの現実」になりつつある。


伝聞による想起や追想の光景といった、本来齟齬をきたして

成立し得ないはずの夢の世界がパラレル・ワールドとなって

現実を脅かし始めているんだ。


僕は、相対化され微細な差異を追い求めるだけの

みじめなComplexの一部となってしまったパトリを前にして

かつての輝かしいハードボイルド・ワンダーランドに思いを

馳せる自分の姿を想像し、愛国の情熱に燃えている、と。


624 Name:Anonymous Coward@dosuka

じゃあ、もしかしてさ・・・。

人類がこれから先、未開の世界を発見してそこをコロニーに

するとするでしょ?それで独立しちゃって、それからその世界に

独自のエートスが生まれたら・・・。


625 Name:Anonymous Coward@dosuka

世俗主義とFundamentalism。近代を抜け出せない現状のまま

テクノロジーが発達していったら・・・ありうるかも。


626 Name:Anonymous Coward@dosuka

パラレル・ワールド・ウォーに突入ってか?

考えたくもないね。


627 Name:Anonymous Coward@dosuka

ここで僕達が話してるのは、それを防ぐためでもあるだろ。


話を元に戻そう。僕がちょっと感心したのは、ここに来て

"Ghost in the Cell"のメタファーが効いてくること。

Ghostがその発生過程で限られた空間ないし時間を必要とする

っていうのはまさに母胎そのものだと思わない?


628 Name:Anonymous Coward@dosuka

なるほど。閉じられたShellというよりもGhostを守り育む「胞」と

呼んだ方が、現世肯定的な僕達にはポジティブでいい印象を

与えるね。


629 Name:Anonymous Coward@dosuka

うん。僕はGhostがその真価を発揮するのはむしろ物理的身体の

中にいるときだと考えてるんだ。パラレル・ワールドが実現したとしても

結局それぞれのBetaLevel-Realityに干渉するには物理的身体の

インターフェースが媒介する他にないだろ?人間は意思決定の

最終局面において論理よりもGhostの囁きを優先するんだしさ。


630 Name:Anonymous Coward@dosuka

なんだか「天の浮橋」みたいだなぁ。


631 Name:Anonymous Coward@dosuka

なんだって?


632 Name:Anonymous Coward@dosuka

「天の浮橋」だよ。BetaLevel-Realityが「葦原の中つ国」でさ、

MetaLevel-Realityが「高天の原」。

パラレル・ワールドを橋渡しするんだから「天の浮橋」じゃない。


633 Name:Anonymous Coward@dosuka

『古事記』だな。確かにGhostが物理的身体を離れて別の

BetaLevel-Realityに渡っていく様は生き霊みたいだ。


634 Name:Anonymous Coward@dosuka
そうそう。『岩屋戸神話』において、アメノウズメの舞踊や神々の

笑い声といった一連の動作は「鎮魂祭」の儀式を表している

っていう説もあるんだけど、Ghostを物理的身体に

封じ込めるのってまるで「鎮魂祭」じゃないか。


電脳コイルやブレインダウンなんかによってGhostが抜けた

ただの記憶情報、ただの有機体になってしまった物理的身体に

再びGhostが戻ってくる瞬間はまるで死者が生き返ったみたいに

見える。


635 Name:Anonymous Coward@dosuka

世界の境界を越えるには、一度物理的身体からGhostが

抜けて擬似的に「死ぬ」必要がある、と。


636 Name:Anonymous Coward@dosuka
BetaLevel-Realityから見るとその人間は一人で死と再生を

演じるように見えるわけだけど・・・。

再びの生を与えられるという意味では「胞」という表現は

矛盾しないね。


637 Name:Anonymous Coward@dosuka
なるほど。生の存続に必要な「食べる」という行為が

僕達の意識の認識限界領域における、Ghostの

物理的身体への定着の明確な目印になっていたわけか。


638 Name:Anonymous Coward@dosuka
じゃあ、神話やなんかで、同じことを何回もしなきゃ

いけないのはなんで?


639 Name:Anonymous Coward@dosuka
イザナキが黄泉の国でヨモツシコメを退散させるのに

2回アクションを起こして、黄泉軍を退却させるのに

桃を3回投げたわけじゃない。

多分、境界を越えた場所で行動を定着させるのには

複数回同じことをする必要があるんだよ。


640 Name:Anonymous Coward@dosuka

うーん・・・そうか。


641 Name:Anonymous Coward@dosuka

ねえねえ。パラレル・ワールドどうしを常時自由に

リンクさせておくのはまずいんだよね?


642 Name:Anonymous Coward@dosuka

確かに、その世界に元来あったエートスどうしが混じれば

アイデンティティは融合してしまう。

そうすると「天の浮橋」は誰でも通れるというものでは

ないだろうね。


643 Name:Anonymous Coward@dosuka

そう。だから各々のBetaLevel-Realityはスタンドアローンな

機関として存在しているのがベターなわけじゃない。

でもさ、複数のパラレル・ワールド間の往来を制限するって

言ったって、無限にあるんだから管理できっこないよね。

パブリック・リンクを規制してもそんなのイタチゴッコだと思う。


戦争を引き起こす程の遠心と同じくらい、求心だってある。

パラレル・ワールドへのリンクはそれこそ地下水脈みたいに

広がってしまうだろうって思うんだ。


644 Name:Anonymous Coward@dosuka

うん?


645 Name:Anonymous Coward@dosuka

もしかしてさ、君はまた・・・。


646 Name:Anonymous Coward@dosuka

とりあえず続けてよ。


647 Name:Anonymous Coward@dosuka

うん。それで、こんなイリーガル・リンクに対する呼称と

言ったらふさわしいのはひとつしかないと思うんだ。


・・・「井戸」さ。


648 Name:Anonymous Coward@dosuka

やっぱり・・・。言うと思ったよ。


649 Name:Anonymous Coward@dosuka

お前ほんとそれ好きな。「男は井戸だ!」なんて言っちゃって。


650 Name:Anonymous Coward@dosuka

えぇ~。だって「アイデンティティの古典的模索」は井戸を

掘るようなものじゃない。ずっと掘っていくと歴史に突き当たるの。

それで、井戸に水が湧きだすように、「今」がぶわぁって。


651 Name:Anonymous Coward@dosuka

アフォリズム、デタッチメント、ナラティブ・デザイン、

そしてコミットメント。

「アイデンティティの古典的模索」で思い出したけどさ。

「歴史」って普通、それを規定する最初の「歴史書」を通って、

世界のソトの全てが終った時点にいる予定説の神の下へ続く

直線のモデルで説明されるだろ?


652 Name:Anonymous Coward@dosuka

うん。歴史書がその権威や正当性を高めるために、

さらに別の歴史書から引用していくだけだね。


653 Name:Anonymous Coward@dosuka

そうそう。最近の物理学やらなんやらを見ていて

思ったんだけどさ、彼らは、明るいところを照らすだけの

論理によって世界を説明しようとすると発生する齟齬を

補うことをさ、より小さな粒子に求め続けてるんだよ。


「歴史」のモデルも同じようにさ、直線は直線でも

立体的に、内へ内へと伸びていく一本道だと思うんだ。


654 Name:Anonymous Coward@dosuka

the real realityの希求が、反って彼に外部への脱却を

諦めさせて内なる虚構へと追いやってしまう、

「アイロニカルな没入」。


655 Name:Anonymous Coward@dosuka

それがひとつ。もうひとつは、

「不来方のお城の草に寝ころびて/空に吸はれし/十五の心」


656 Name:Anonymous Coward@dosuka

石川啄木?


657 Name:Anonymous Coward@dosuka

「アイデンティティの古典的模索」も「歴史書」も

そうなんだけど、差異を探しているはずなのに、

無個性的に「連続性」を求める。


家にいるのにさ、なんだか、どこか遠くに本当の

「帰るべき場所」があるような気がする時ってない?

自分という存在の、連綿と続く確かなルーツを

どこまでも求めてしまう。


でもいつか、突き当りが来るんだよね。

僕達が言語ゲームによって世界を認識している以上、

一番最初に「言葉」を使ったニンゲンのところで行き詰る。


僕達にはこれが袋小路だなんてことは、

はじめからちゃんとわかってるんだ。


658 Name:Anonymous Coward@dosuka

それでも進むのをやめられない?


659 Name:Anonymous Coward@dosuka

そうさ。I'm crying, I'm crying.


660 Name:Anonymous Coward@dosuka

あのさ・・・。その、アイロニカルなホームシックってさ、

もしかしてGhostから湧いてきてるんじゃないだろうか?


661 Name:Anonymous Coward@dosuka

どういうこと?


662 Name:Anonymous Coward@dosuka

「鎮魂祭」、「タマフリ(魂振り)」によって物理的身体に

Ghostを封じ込めているっていう発想があった。

もし、それがGhostにとって非常に不自然な状態だったと

したらどうだろう?


663 Name:Anonymous Coward@dosuka

GhostにとってはMetaLevel-Realityの次元で複合体を

形成している状態が自然だった?


664 Name:Anonymous Coward@dosuka

うん。元来、物理的身体に閉じ込められたGhost達は

その本来の居場所であるComplex(=MetaLevel-Ghost)と

引き合ってるんだ。


665 Name:Anonymous Coward@dosuka

だからこそ、人間をモナド単位まで細分化しその欲求を

解放すると、逆に、Ghostがそれを内包する物理的身体に

左右されにくい状態である「無個性化」が進み・・・。


666 Name:Anonymous Coward@dosuka

Stand-alone Complexが発生する。


667 Name:Anonymous Coward@dosuka

すると、Ghostどうしが共鳴するのは当然のことだった

ってことか。


668 Name:Anonymous Coward@dosuka

死による物理的身体の喪失がGhostの解放だとすると、

BetaLevel-Realityはそれ自体が悲劇・・・?


669 Name:Anonymous Coward@dosuka

そうなっちゃうんじゃないの?

そりゃあ、僕だって嫌だけどさ。


670 Name:Anonymous Coward@dosuka

いや、違うな。

「鎮魂祭」や「タマフリ」ならともかく、胎児にGhostが

宿るのはGhostの能動的な働きだと思う。

だから、Ghostと物理的身体の邂逅は互恵的なシステムの

上に成立しているはずだ。


671 Name:Anonymous Coward@dosuka

確かに・・・。

でも、Ghostにとってのメリットってなんだろう?


672 Name:Anonymous Coward@dosuka

GhostによるBetaLevel-Realityへの干渉は

物理的身体を媒介するしかなかったわけでしょ。

それしかないじゃん。


673 Name:Anonymous Coward@dosuka

つまり、BetaLevel-Realityにおける人類のテクノロジーや

思想のイノベーションが、Ghostの母体であるComplexの

成長、深化、発展の糧となる。

物理的身体に宿るGhostはそれを収集するアンテナの役目を

果たしているってことか。


674 Name:Anonymous Coward@dosuka

「なるほど、確かに世界の99%はインチキでできている

かもしれない。でもさ、目を凝らして残りの1%を見つければ

いいんじゃないか?」


675 Name:Anonymous Coward@dosuka

並列化、無個性化するStand-alone Complexの

絶望の中で、個を取り戻す可能性があるとしたら?


676 Name:Anonymous Coward@dosuka

好奇心かしら?・・・たぶんね。


677 Name:Anonymous Coward@dosuka

くくくっ・・・。


678 Name:Anonymous Coward@dosuka

あははっ。・・・たぶん、大丈夫そうだね。


679 Name:Anonymous Coward@dosuka

あ、そうそう。Ghostが結局MetaLevel-Reality上の

Complexに等しいのってさ、

仏教の「梵我一如」みたいじゃない?


680 Name:Anonymous Coward@dosuka

あー、たしかに。


681 Name:Anonymous Coward@dosuka

思えば、人類は昔からGhostの囁きを何とかして

聞き取ろうとしてきたんだよね。


「感情に身を委ね陶酔状態に置くことでGhostに近づく

アプローチ」か、「鉄の意思により感情過多を排し、

冷静な瞑想によってGhostに近づくアプローチ」。


682 Name:Anonymous Coward@dosuka

ちなみに、君はどっちがいい?


683 Name:Anonymous Coward@dosuka

それをここで聞くのかっ!


684 Name:Anonymous Coward@dosuka

あっはははは。いや、ごめんごめん。


685 Name:Anonymous Coward@dosuka

そりゃそうだよ、まったく。・・・くくっ。






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MetaLevel-Realityに体現される没個性的なComplexは

BetaLevel-Realityというテクストに対するエクリチュールだと

言うこともできる。


超意識的なComplexの一部分であるGhostは、物理的身体を

仲介者としてその物語を世界に囁きかけているのだ。



モナド化が進み無個性な灰色の世界に呑まれていく中で、

僕達に何ができるのか。

Ghostの囁きに耳を傾け個別のナラティブを

取り戻さなくてはならない。


Anonymous CowardはWisdom of Crowdsになりうるのか。


僕達は個を失わないままにComplexにコミットし、

「明日」を切り拓く芸術を生み出せるだろうか?


ポスト・モダンの運慶は他でもなく、

僕達自身の内に生き続けている。