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手のひらの中のアジア
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July 31, 2005

伝えたいことがあるんだ

テーマ:(8)ラオス2

やーとぅい

その人は、訪れた場所の空気や時間、人にすうっと馴染んでゆく。


まるで水に溶け込むように。


自分と対象物との間に距離を感じさせず、まるでそれが同じ性質を持つ者同士であるかのように、あらゆるものと一体化する。


なんとなしに向けたカメラ、そのファインダー越しに見た空間、それをシャッターを押したと同時に、一瞬のうちに自分の世界へと引き込む。そして彼というフィルターを通して「写真」になったその空間は、本来のありのままの姿を損なわずして、さらにそこへ彼の「思い」なるものが凝縮されて、独特の世界として表現される。


彼の名は「よしさん」。


よしさんとは、このムアンシンで出会った。カメラ片手に旅を続け、お酒をこよなく愛するフォトグラファー。初めて彼の写真を見せてもらった時、単純にすごいという枠を越えて、不思議な温かい気持ちになった。よしさんのことについてはまだ何を知っているわけでもないのに、写真を見れば、お酒片手にカメラを持って、気ままに写真を撮る自然体の姿や人柄がそのまま伝わってくるような気がした。


すでに今回の旅を終えて日本へ帰国しているよしさんは、自分のやりたいことのために、まずは写真エッセイを出版にこぎつけようと日夜悪戦苦闘しながら、それでも妥協せずに自分を信じて前へと進んでいる。


そんなよしさんの撮った写真を一般に公開している彼自身のサイトがある。数々の写真を一枚ずつ、エピソードを添えて綴っていく形で作られているそれを、僕は今も旅先ながらちょくちょくと拝見させてもらっている。


その何枚もの写真の中で、僕が一瞬にして惹き込まれた一枚の写真がある。現在トップページのTOP画像背景として使われている写真だ。撮影された場所は、僕の好きなラオス、ムアンシンである。


タイダム族の子供たち。(写真「アジアンワールド」より。 )


当然知っている子供であったというひいき目はあるかもしれないが、話はそれで終わらない。


ムアンシンへ戻る日の朝、僕はルアンナムターで最後のメールチェックをした。受信トレイには、日本にいるよしさんから一通のメールが届いていた。


「実は、気に入ったというその写真が、美術展で入選しました!!」


僕はとても嬉しいのと同時に胸が締めつけられるような気持ちになった。感情が一気に高まって、少しの間どうしていいのかわからないほど興奮した。


よしさんが撮った写真が賞を受けた。それは僕が一番好きだと思った一枚だった。そして偶然か必然か、僕がたった今いるこの場所はそのラオスという国。さらに、今から向かおうとしている場所は、まさにその写真の子供たちが住んでいる村なのだ。


ムアンシンへ出発するほんの数分前の出来事である。


この意味のある偶然、シンクロニシティともいえるこの知らせを受け、僕は興奮冷めやらぬまま、午前11時発のソンテウに乗り込んだ。


そしてこの日、その写真の子供たちとの再会も果たすことができた。


道端にしゃがみこんでシャボン玉を膨らましていたのは、お姉ちゃんの「ヤー」、10才。その正面に立ち、シャボン玉に手をかざしていたのは、妹の「トゥイ」、5歳。


この二人、実はあまり目がよくない。きっと生まれた時からずっとそうなのだろうが、正面を見た時に視点がずれてしまうのだ。その影響のためか、思いきり笑いたい時にもうまく笑えない。笑顔の表情はわかるけれど、大きな口をあけて大声で笑う他の子供たちと同じような、くしゃくしゃの笑顔というものは残念ながら見たことがない。


とぅい


お姉ちゃんのヤーは無邪気に走りまわったりもする元気な女の子だけれど、妹のトゥイは走ろうとするとよく転んでしまう。そんな妹のトゥイを、お姉ちゃんのヤーはとても大切に扱う。一緒にいる時には常に目をかけ、手を差し伸べる。そんな二人を見た時にはなんだか温かい気持ちになる。


再会した二人に僕は言った。


「ヤーとトゥイを撮ったよしさんって人の写真がな、日本で賞をとったんだぞ」


ラオス語をだいぶ覚えたとはいえ、これはわからなかったのですべて日本語だったけれど。


頭を軽くぽんぽん叩きながら言った僕の前で、ヤーは意味もわからずに照れ笑いして肩をすぼめた。トゥイは「ん?なぁに?」っていう顔をしてみせた。


もちろん二人とも理解できないことはわかっていたけれど、その後、そう告げた自分が何だか恥しくなった。なぜならヤーもトゥイも、ただ元気で無邪気な姿がここにあればいいのだ、と思ったからだ。日本での出来事なんて、彼女たちにとってはきっとどうでもいいこと。そしてよしさんもまた、わざわざ本人たちにそれを自慢したり、僕に伝えてほしい、などとは思っていないのだ。まったくよけいなことをしようとするのは僕ばかり。


でもそんなことを考えながらも、僕はあらためて思う。


それは、僕が戻ってきたこの村と人々はやっぱり最高に素敵だということ。


僕はこうしてだらだらと書き綴りながらも、「世界にはこんなに素朴な村があって、こんなに優しい人たちがいる。こんなに綺麗な風景もあるんだよ。素敵でしょ」といったようなことが少しでも伝わったら嬉しいな、と心のどこかで思っている。


よしさんという人は、それをたった一枚の写真で、多くを語らずしてそれを伝えられる力を持っている。


あの写真は、ほんの一瞬でしかないけれど、ヤーとトゥイの姉妹、その距離や体温、本来の二人のありのままの姿が現れていると思う。そんな写真を、僕以外の誰かが見て、何かを感じ取ってくれたから賞にも結びついた。僕としては、誠に勝手ながら、「戻ってきたくなる理由がわかるでしょ」と言いたくなってしまうほど、自分のことのように嬉しかったのだ。


この写真を撮った人がよしさんでよかった。よしさんに出会えてよかった。それがどうしようもなく嬉しくてヤーとトゥイにも伝えたくなってしまったのだ。


「トゥイ、いくよ」


まだ僕の前に立ってきょとんとしていたトゥイに、お姉ちゃんのヤーがそっと手を差し伸べる。


手を繋ぎながら、うちへと続く村の道を二人は歩き始める。


そんな姿がいとおしく、温かかった。

やーとぅい


※よしさんのサイトは、ブックマーク「たびびより」からアクセスできます。
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