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手のひらの中のアジア
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November 29, 2006

にび色のカイト

テーマ:◆旅の断片 バングラデシュ
バングラデシュ ストリートチルドレン

ストリートチルドレン。

彼らとは歩道橋の上で出会った。

一人が大事そうに胸元で抱えていたのは手作りのカイト。

自分で作ったのか、どこかで拾ったのか、見た目は少しすすけた様子の、にび色のカイト。

それを僕の前であげて見せてくれた。


十数回の失敗の後、うまくダッカ上空の気流に乗ってカイトは舞い上がる。たよりなさげにふらふらとしながらも徐々に高度を上げていく。

そこに何かの思いを託すかのように、カイトの姿を見つめる彼ら。

じっと空を見上げる、その目に何を映すのか。

そんな矢先、支えるには不十分だった細い糸がぱつんと切れて、力なくその糸だけが足元に落ちてきた。

カイトはダッカの遥か上空を狂ったようにぐるぐると旋回する。

それは自由と言うには程遠く、まるで解き放たれた瞬間、行き場を見失ってしまった迷い子のように。


「追え!!」


一人の少年の掛け声と同時に、彼らは一斉に歩道橋の階段を駆け降り始めた。


歩道橋の下の道路は、無数のリキシャと人で隙間もないほどに埋め尽くされている。見渡す限り向こうから続くその行列。ゆっくり、もぞもぞと動くさまは、まるで蟻の大群のよう。

一定の方向、こちらへと流れてくるその波に逆らって、少年たちはそれらの間を縫うようにしてカイトを追う。

ある者はカイトの舞う空へ手を精一杯に差し伸べながら、ある者は体を横にしてリキシャや人の波をよけながら、ある者は時々ぶつかって怒鳴られながら、それでも人ごみをかき分けて走る。ある者は皆に遅れをとらぬようにと、ところどころ飛び上がって先の様子を窺いながら、必死で後を追う。


にび色のカイトは、ダッカの深く巨大な灰色の空に呑み込まれてしまったのか、僕からはもうその姿は見えない。それとも灰色の空の向こうにある、太陽の光に辿り着いたのだろうか。だとすれば、彼らには見えるのだろうか。金色に輝くカイトの姿が。


少年たちは、リキシャと人のひしめくオールドダッカの渦をかき分け、カイトを追って夢中で走り続けた。


どこまでも、どこまでも。


その先にある、まぶしい光に出会うために。

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November 07, 2006

ストリートチルドレン 

テーマ:◆旅の断片 バングラデシュ

バングラデシュ ストリートチルドレン


少年の目はきらきらと輝いていた。


泥だらけ、穴だらけのシャツやズボン。

変色した肌、変形した爪、砂まみれの足。


痛々しいまでの裸足の少年。


なぜ、そこまで純粋な笑顔ができるのだろう。


「ねぇ、写真撮ってよ」


身振り手振りでそう話しかけてきた彼の手、

触れたその指は細く、硬く、そして冷たかった。


でも、目だけは死んでいなかった。


自分の置かれた環境を疑いもせず、

自身に受け入れているからだろうか。

それとも外の世界を知らないからだろうか。


画面に写し出された自分の顔や足を見て、

嬉しそうに笑うと、彼は裸足のまま、

裏路地へと走り去っていった。


少年に、夢や希望はあるのだろうか。


僕は、少年の目の輝く理由を知りたかった。


バングラデシュ ストリートチルドレン

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November 01, 2006

食卓のある風景

テーマ:(11)バングラデシュ
バングラデシュ 食卓のある風景

お世話になったルナ家を旅立つ日。


最後の朝、食卓の上に出てきたのはキチュリだった。


「雨の日にはキチュリを」


そう言われるほどバングラデシュではポピュラーな食事。しっとりした「カレーおじや風」と、ぱらぱらの「カレーピラフ風」と二種類あるキチュリは、体を温めるのに良いのだという。家庭によって違いはあるのだろうが、ルナ家のものは、どちらもカレーから想像する濃厚さ、辛味といったものはまったく無く、さっぱりして優しい味がする。


朝食にはよくこのキチュリか、またはルティ(小麦で作る薄いパン)と細切りにしたじゃがいもの炒め物が出された。甲乙つけ難いほど、僕はそのどちらも好きだったけれど、肌寒いこの時期、ダッカの灰色の空にはキチュリのほっとする温かさの方がよく似合う気がした。


いつもはサミィが作ってくれるのだが、最後のキチュリはルナがじきじきに作ってくれた。湯気を湧き立たせて出てきたおじや風のそれに、アチャールと呼ばれる甘ずっぱい漬物を混ぜて食べる。ほくほくのキチュリを一口頬張ると、柔らかい食感がじわっと広がり、でもそれと同時に僕は少しさみしくなった。


バングラデシュ キチュリ

自分の左手首に巻かれた手作りミサンガにふと目をやる。あれは僕がここにきて三日目くらい、やはりこうしてこの食卓で食事をしている時のことだった。


「ねぇ、これなに」


食べかけのポラオをほったらかして僕の腕をとるルナの息子ルーモン。


「これはタイ。これはラオス。これも。これもか。こっちは韓国。それとミャンマー」


僕の説明を聞きながら、腕を上にあげたり下にさげたりしてそれらをまじまじと見つめる。


「いろんな国の友達がくれたんだよ。フレンドシップバンド。友達の印ってこと」


「ふぅん」


なんだか不思議そうな顔をするルーモン。一緒になって覗き込むアキィとサミィ。しばらくして、奥の部屋へ入っていったアキィが五十個ほどの小さなビーズを手の平に載せて戻ってきた。サミィが裁縫道具箱から糸を取り出し、ビーズの真ん中に空いた針穴ほどの小さな穴へ器用に糸を通していく。三十分ほど経って食事も終えた頃、完成した物をルーモンが手に持って見せてくれた。すぐに切れてばらばらになってしまいそうだが、とても綺麗な手作りミサンガ。それを僕の左手首に巻いてくれた。


「フレンドシップバンド」


ルーモンが指をさして言う。


僕たちも友達だよ。そんな様子で微笑む三人。彼らがくれたささやかなプレゼント。こうして僕の左手首には、手作りミサンガとして新たに「バングラデシュ」の分が一つ増えたのだ。


バングラデシュ ベンガル料理

ぼぉっとそんなことを思い出しながらキチュリを食べていたら、ご飯粒が二、三粒、ジーパンの太ももの辺りにぽとりと落ちた。それを払いながら、すぐにまた別のことを思い出した。


思えばこのジーパンも僕にとっての宝物。僕がこれまで旅で履いてきたジーパンは、もはやそれがファッションとも言い難いほど穴だらけで、右足の部分は膝下がぶらんと垂れ下がるほどになっていた。自転車を漕ぐ時にはまくり上げてしまえば目立たないし、僕自身はそれほど気にせずこれからも履くつもりでいたのだけれど。


ルナは街へショッピングに出かけた時、ルーモンに新しい洋服、アキィに向日葵色のサリー、サミィに紫陽花色のサリー、ジンナーに白いパンジャビを買い、


「そんなズボンじゃみっともないでしょ」


そう言って僕にはジーパンを買ってくれたのだ。僕はこれから先、このジーパンを擦り切れるまでずっと履き続けると思う。


バングラデシュ ダッカ

最後の朝、食卓には僕一人だけが座っていた。


いつもルナがいて、向かいに僕が座った。その隣に毎回ご飯をいやがるルーモンがいて、食べさせようとするサミィがいる。そのすぐ傍で、呆れた様子で腰に手をあてながらそれを見ているアキィ。毎晩、夜遅くに帰ってくるジンナー。弟のヌルッジャマンやディルをはじめとして、入れ替わり立ち替わり訪れてくる兄弟や親戚、友人たち。ここはルナ家の家族が集う場所。


毎日のように賑わう食卓だったから、今、僕以外誰も座っていない光景は、なんとなく落ち着かない。それはまるで今日が最後の日であることを象徴しているかのようだった。


初めてのバングラデシュ。結局、訪れたのはダッカとタンガイルだけ。まだまだ行きたいところはたくさんある。チッタゴン丘陵方面にも行っていないし、世界遺産のバゲルハットもバハルプールも見ていない。シュンドルボンにも行きたいし、外輪船にも乗ってみたい。予定を変更して滞在を延ばすことは可能といえば可能なのだが、でも今回はこれで終わり。この場所だけで十分に気持ちが満たされたこともあるし、少々疲れたというのも正直なところ。なにせ、どこへ行っても厚すぎるほどの歓待ぶりだったから。いずれにせよ、旅の区切りやタイミングって毎回そんなもの。


またここには戻ってきたいと思う。アキィの恋の行方を確かめなければならないし、故郷タンガイルにももう少し長く滞在してみたい。カクリや他の子供たちの成長した姿も見たいし、ルーモンやヌルッジャマンをはじめ、たくさんの人との再会の約束もある。


「元気でね」


一階のガレージまで下りてきたルナが僕に言う。


「Bye…」


起きたばかり、というより起こされたばかりのルーモンが、眠い目をこすりながら、お母さんの隣で手を振る。その後ろで小さく笑ったサミィ。まだ皆が眠っている頃、三人に見送られて僕は出発した。


数週間のバングラデシュでのホームステイ。


ダッカをあとにする僕の心に思い浮かぶのは、みんなの笑顔と、食卓のある風景だった。


バングラデシュ 食卓のある風景
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