神通峡は、神通川が飛騨の山あいから富山に入って平野に抜け出るまでの、距離にして20km弱の渓谷部分。
その区間、神通川は3つのダムによってせき止められ、谷あいに深緑の水を湛えている。
ダムの両側には急峻な山々が聳えて連なり、自然が形成する巨大な通路のような景観になっている。
そこを、夏場には高山盆地から富山湾に向かって南からの風が吹き下ろし、冬場にはその逆向きに雪混じりの冷たい北からの風が吹き上がっていく。
神通川を挟む両側の急斜面には旧飛騨街道が東路と西路に別れて走り、その街道を人と物資が往来していた。
また、戦いや文化、信仰といった、形は無いものの人間にとっては大きな存在がこの神通峡を足早に、あるいは土地に馴染むまでゆっくりと時間をかけて行き来していた。