あいのうた/矢野絢子
¥3,000
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矢野絢子の4thアルバム「あいのうた」が、発売された

途中に契約の終了とかがあったため、3rdアルバムはメジャーではないけれど

またこうやって再び、レコードショップにこの人のCDが並ぶことが嬉しい


思えばラジオで最初に「てろてろ」を聞いてからずっと

矢野さんの歌には心を動かされ続けている

明るくなる曲ばかりじゃない、暗くなる曲だって沢山ある

でもその全てが自分の原動力になっている



愛こそは手のひらで伝えるべきだ 温度差なんてなくなればいい (福々屋大福)



この歌も矢野絢子の「燐光」という曲の情景が元になった歌だったりする

歌を聴くと何かが浮かぶ、それこそシャボンの泡のように

自分はこの人の歌から何を感じて何を作り出していけるだろうか



矢野絢子の短歌詩集「かなしみと呼ばれる人生の優しさよ」が発売されています

読んでみてくださいませ



矢野絢子オフィシャルブログ「あいのうた」

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『ハッ、ハッ、ハァッ、ハッ、ハッッ、ッツ、ハァッ、』




走る、走る、走る、暗闇の中を、ただ走る、

後ろから、黒いウサギが追いかけてくる、


身体も目もしっぽも全部黒い、まっくろ、




ああ、止まったら最後、あたまからバリバリ食べられる、




ちょっと気持ちいいかもしれないけど、




たとえ夢でも、死ぬのはゴメンだ、から、




そう、夢だ、コレはいつも見る夢だ、夢だ、


空では銀色の月が笑っていて、


足元はグラグラ揺れてキラキラ光る、


ウサギはいつも通り元気で活発で獰猛でよろしい、や、よろしくない、


すごい速さで走る、自分、


足の速さなんてクラスで中の下なのに、


ストライプのパジャマで、苦笑しながら走ってる、




…ヘンなの、




だって夢だ、コレは、夢、いつも見る夢、だから、




『ハアッ、ッハアッ、ハッ、ッハアッ、ハッッ、』




息が上がってきて、苦しい、もう走れない、駄目だ、




ウサギがものすごい速さでおいついて、




バリバリ喰われる、




いつもココで夢が終わる、足元にでっかい穴があって、自分は落ちていくのだ、


下は海で、ボートがあって、そこから世界一周の旅もしたことがあった、


ウサギは追って来れない、だって黒いウサギは泳げない、


だから助かる、この夢で頭が無くなることはない、ほら、穴に落ちる―










―落ちない、穴がない、何で?


何十回も何百回も何千回も見た夢なのに、なんで穴がないの?


喉がカラカラだ、日も照ってきてる、足が重い、動かない、もつれる、転んだ、


助けて、怖い、


ウサギが来る、大きい、黒い、何度も見た顔、ギラリと歯をむく、


助けて、怖い、






ニタリと笑った?






ぐあっと口を開け、私の頭を食いつぶそうと、食いつぶされる、


顔が、あったかくて、


助けて、助けて、助けて、助けて、






それでも、いただきますの瞬間は、来なかった、











『今日子? 今日子?』

ゆらゆら、頭が揺れる、まだちゃんと有るのか、




ん? 今日子?




気がついてみれば、母さんが目の前に、何してんのさ、


私の肩を持ってゆらゆら揺らしている、少し不愉快なのでムッとする、


目の前の母親もムッとした、何さ、


『…ずいぶんうなされてたのよ、…汗びっしょりだけど、大丈夫?』


ああ、心配してくれたんだ、ありがとうありがとう、うん、だいじょうぶ、わたしは、


『…だいじょうぶ…』


寝起きって声が出ないなぁ、


『…そのままだと風邪ひくから、シャワー浴びて、着替えなさい、』



私がコクリと頷くと、母さんは私の部屋から出て行った、


本当にパジャマまで汗でシミが出来ている、気持ち悪い、




で、のろのろ起きて、風呂場に行く、


わりと家の中はもう明るい、




肌にまとわりつくパジャマを、寝ぼけながら脱いでゆく、




…私は熱いシャワーが好きである、熱いおフロは嫌いだけれど、








サッパリスッキリ、モノをいつもよりは考えられる頭になった、

 

考える、前に、時計を見る、

 

時計の針は5時を刻んでいた、いつも最初に起きるのは5時半、

 

まあ、本格的に起きるのは6時半、

 

危なげな時は7時、




『…早起きしちゃった…もったいない…、』




まだ暗い部屋の中、仕方なく紅茶を入れることにする、




ティーポットの湯気、


何か良くわかんないけどホッとする、深く考えないことにする、




紅茶を飲み終わって、母親が起きてきた時、



今朝の夢のことなんて、サッパリ忘れていたんだけど、けどね、






(…続くか続かないかは不明、)

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