「O嬢の物語」 ポーリーヌ・レアージュ 澁澤龍彦訳
テーマ:書籍(外国人作家)
- ポーリーヌ・レアージュ, 澁澤 龍彦
- O嬢の物語
デカダンス系の女流作家のものも読みたいと思って手にとったのがこれだった。
切実な魂の叫びのような遊びの少ない、女性らしい甘美な小説。
やっぱりビレッジバンガード、澁澤コーナーからの一冊です。
Oと呼ばれるおそらく美貌の女性が、様々な男に奴隷として体と心を尽くしながらその幸福について悟り行く様を告白する物語。
恐怖と痛み、女として、男の奴隷として自由を奪われること、そのことに絶望と悲しみを抱きながら、それでいて幸福を痛感するその非合理を心のままに語り尽くす。
苦痛と快楽を一心に受け取る体、まさに奴隷として男たちに捧げられる体は、オブジェとして崇高である一方、次第にその痕跡を刻み付けられ、敬われるべき体は、逆に嫌悪の対象として汚されていく。
女の宿命を背負った美しく気高い生き様を描く、哀れで非情で悲痛なまでの悲しみに取り付かれた、
恐るべき恋愛小説である。
愛に溢れた健気で美しい女性が、その愛ゆえに自らの体を捧げる様は、本当に痛々しい。
あくまで愛という感情を大切にする反面、なぜこうも自らの体に対してはここまで無頓着になれるのか。
愛を求める代償なのか。
幸福に浸るための犠牲なのか。
快楽に翻弄されながらもその心情を冷静に綴る文体が、
ただの馬鹿な女としての特別な女を描いているようでいて意外にも感情移入できてしまう。
おそらく一般的にはあくまで狂気の一種であるといえる程の極度のマゾヒズムを、潜在的なものとしてその感情の所在を探ってしまうほど、引き寄せて考えさせられる構成が巧みだと思った。
始めは幸福とは男と女の一対一の愛情と信頼であるとする一般論のように見せかけておいて、
次第に男は尽くされることを愛し、女は支配されることを愛するということにテーマがはっきり変わって見えてくる。
誰かの所有としての不自由と安心感は誰にでもあること。
それが抽象化されて美しく、醜く、悲しみ深く描かれている。
描写が本当に美しいのも捨て置けないところ。
澁澤氏が極度に抽象化された描写とあとがきで書いているが、本当に色鮮やかで華麗で鮮明だ。
少し大味ともとれるけど、目的がはっきりしていてかえって清々しさをおぼえるほど。
それだからか酷い場面も醜悪すぎず、絵をながめるように読めてしまうわけ。
興味深く飽きずに読めるし、単純におもしろかったと思う。
序章で、
「読者に烙印を押し、読者をして、その本を読む以前の状態とは完全に違った、あるいは少しも同じでない状態に変化あらしめるような書物である。」
と書かれているが、私にしてみてもどうしてもセンセーショナルで、忘れられない印象を残すことになった。
私には悲劇としか思えなかったO嬢の生き方。
この論理でいくと、最上の悲劇が最上の喜劇となるはずだけれども、きっと、読者によって感想の全く違うものになるはずで、違った感想を聞きたいところ。
未読の方には是非一度読んでみて欲しい一冊である。






1 ■ある
作家の本に引用されてました。
興味持ちます。