2013年11月20日

沖克洋のセオリー

テーマ:ヒューマニズム

以前取材をして頂きました。


男の矜持


料理への目覚め。

料理に目覚めたのは小学校かな。両親が共働きで、土曜日は両親とも仕事でいないから、お昼ご飯は自分で作るようになりました。
小学1年のとき、土曜に同じ鍵っ子の友達が遊びに来るんだけど、その友達の分も作ったりして。作るといっても小学一年生だから只のトースト(笑)。パンを焼いてバターを塗っただけなんだけど、でも「それだけじゃ芸が無いな」と思って、ある日ハチミツをその上からピューってかけてハイって出したら、普段その子の家ではしないらしくて、「うわー!」って喜んでくれて。そういうリアクションをみて、誰かが喜んでくれることにすごく感激したし、もっと喜ばせたい!って子供ながらに思ったんですよ。


Oki’s blog 


その後、小学校5年生の家庭科の実習で自分らで一生懸命作ったサンドイッチが、目茶苦茶美味しかった。その頃から「料理が楽しい」「やりたい」って思うようになりました。勉強は全然面白いと思わなかったけど、学校生活の中で一番一生懸命やったのが家庭科の時間だった気がします。高校の時にいろんなアルバイトをやったけど、最終的に飲食店のアルバイトに行ったのも、その記憶があったからでしょうね。


          

フレンチとの出会い。


いろんな料理がある中でフレンチを選んだのは、華やかだから(笑)。
やっぱ白いコックコートに高い帽子を被って、ブランデーでフランベをする、あれが夢でした、カッコイイでしょ?


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僕は昔から大胆で目立つことばっかりやってしまう性格だったから(笑)。

最初は、洋食屋さんみたいな所で働いてました。当時福岡にはちゃんとしたフレンチの店っていうのがあまりなくて、僕が働いてたのは"スパゲティといえばミートソースかナポリタン"みたいな、そんな洋食屋さん。パスタとかアルデンテとかいう表現がない時代でしたから。

その店を辞めて19歳の時初めて、福岡の大名にあるフレンチの専門店で働くことになりました。その時に、魂を抜かれましたね。今まで自分がやっていたものと全然違う…!って。それが僕の「洋食」から「フレンチ」への転換期ですね。

           

本気でやる。


この世界に入ったのが16歳。19歳でフレンチ専門店で働きだして、とりあえず経験も知識もないから、フランス料理に関して死ぬほど勉強、勉強、勉強。今みたいにネットもない時代だから、辞書とか本をたくさん買ったし、メモしたことは家でノートに書き写したり。フランス語の勉強もしないとメニューも読めないわけだから、文法がわからなくても単語くらいは知っておきたくて、フランス語もノートに書いてました。毎日そういう勉強をしていたけど、それが苦ではありませんでした。


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当時ライバルと思っていた人が知らないことも、僕は全部知っておきたいって思ってました。ライバルから、僕の知らない言葉がポンて出たときは、紙に書き留めて家に帰ってすぐに辞書で調べてたりしてました。「ああ~こういうことだったんだ。あいつは知ってたのに僕は知らなかった・・・。」それが気に入らなくて(笑)、自分が質問する側なのか、質問される側なのか・・・。そこでレベルが全然違うでしょう?

僕は、やるなら全部ホンモノにしたいんですよ。料理の腕だけじゃなくて、心もホンモノにしたい。人に負けたくないし、自分にも負けたくない。ホンモノの料理、ホンモノの心・・・"ホンモノの価値観"を身につけるのが大事だと思ってました。

殴られたり蹴られたりは当然当たり前のことだし、夜遅くまで鍋を磨いたり、掃除したり、そして家に帰ったら勉強する。それをやってきた人間は、まず精神力が違う。シェフになったら、料理の腕だけじゃなくて、人間力とか、まとめる力、信頼される人格とかが必要になって、それが実現したら、いつかオーナーシェフになってオンリーワンになれるわけです。オーナーシェフになれる人間、スーシェフ(料理長補佐)までの人間、それにもなれない人っているけど、スーシェフがバチッとできるやつは、絶対にシェフになれる。

つまり、10代20代は精神力を鍛えるしかないんですよ。アスリートと一緒。いい記録が出ても、次に向かって進んでいく・・・。「どうすればいいんだ?」って、ノイローゼになるくらい追い込まれるわけです。そこで何かをうまく見つけ出していくことが、成長のカギだと思います。

            

自分という看板。


僕が修行をしていた頃は、とにかくみんなフランスの三ツ星シェフの料理集(レシピ)を見て真似をしてました。フランスで修行をしていた人でさえそうだったし、東京の有名店で修行して福岡に店を出した人も、みんながそうでした。
そして「フランスではこうなってるんだ!」とそれがあたかもすごいことのように僕たちはレシピを学び、その通りに作ることを教わったんです。最初は僕も「ああ、フランスではこうなんだ」って思ってました。

でも、レシピに忠実な人達って、「この料理にはコレがないと絶対ダメなんだ!」みたいに、変なところに頑固なんです。僕はそれにずっと疑問を持っていて、「じゃあ、あなたは何なんだ!?フランスのコピーになりたいのか?」ってね。

例えば美味しいと評判の高級ホテルで修行していたシェフが店を出したとします。その時にお客さんに「どこで修行したんですか?」
と聞かれて、「○○ホテルです。」って言ったら、「あ~、だから美味しいんですね。」っていわれるわけです。
自分の技術ではなく、高級ホテルや有名レストラン自体が褒められるわけ。僕に言わせたら、褒められているのは自分じゃないんですよ。
それが悪いとは思わないけど、多分こういう感じでフランス料理界は流れていくんだろうなって思って、なんかそこに違和感を感じてました。
そして、その頃からずっと「そのレールには乗っかりたくない」って思ってました。

僕には僕のオリジナリティーのある考えや生き方や料理をしていかないと、多分この業界では生きていけないだろうな、って思っていて。"残っていけない"っていうより、"それじゃあ面白くないな"って。


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僕の同期や後輩たちも、集団就職のようにみんな東京やフランスに行ったんですよ。先輩も、「お前も1度は東京かフランスに行って来い!」なんて言ってくれてたけど、「それも、なんか違うな」って思ったから、僕は行かずに、この福岡で修行を積んできました。

みんなが「店の看板を背負っていく」という時代だったけど、僕は「沖克洋」という看板を作りたかった。周りとはかけ離れてたかもしれないけど、"店の看板"じゃなくて"沖克洋"で勝負するっていうのは、僕らしいやり方だと思っていたし、自分という看板を背負うことは逃げることも出来ない。自分の料理だけじゃなくて生き方、考え方に自信をもって生きていきたいんです。
まあ、僕自身が目立ちたがり屋ってこともあるけど(笑)

             

Oki 流フレンチ。


初めて来たお客さんに、「顔の割には繊細な料理を作りますよね。」って言われることが多いです。香辛料やソースをドカンと効かしたトゲトゲしい料理は、僕には合わないらしくて。普段の自分とは違う、隠れた部分を表現できるのも料理の面白さですね。

僕が作るのは「Oki(沖)流フレンチ」。「正統派フレンチ」っていうのは、フランスの歴史、文化、習慣に添ってきちんと作らなくちゃいけないもの。「Oki流」っていうのは、沖の歴史、沖の文化、沖の習慣に沿って作るフレンチ。だから、「Oki流フレンチ」は、僕が作らないと意味が無い。同じ料理を作っても味が違ったりします、だって、全部僕の好みで作るから。

正統派フレンチでは、ブルゴーニュ地方のこの食材で作らないとダメっていうこだわりがある。郷土料理だからね。でも、正統派っていっても、本当のフランス料理が日本で味わえるわけないじゃん?フランスのブルゴーニュ地方で食べるエスカルゴにこそ「エスカルゴのブルゴーニュ風」って名前を付けれるわけで、福岡の博多でソレを出したら「博多風」やろ!?って僕は思う。そこに19の時から疑問を抱いてきて、それを解決してくれたのが"Oki流"でいこう!ってこと。「Oki流」にすれば、「"僕の"エスカルゴのブルゴーニュ風」って言えるでしょ。

でもそこには、多分半分コンプレックスもあるとおもいます。


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僕は東京とかフランスに行って修行してきたわけじゃないから、行けばよかったなーって思うこともありました。フランスに行ったシェフの苦労話についていけない時なんかにね。
でも、今からフランスで「Oki流」で店を出すっていうのもいいなぁ。なんて思います。そして、フランス人に向かって「本物の"Oki流"を食べたいなら、本場福岡の浄水通りの店に食べに来い」って言ってみたり・・・なんてね(笑)。1回フランスに行って、フランス人シェフとコラボをやってみるのもいいですね。

雑誌でもそうだけど、カテゴリは明確にしとかなきゃいけないから、僕の料理はフレンチという枠組みに入れられてるんだと思います。本当は「Oki流」っていうカテゴリを作ってそこに入れて欲しいんですけど(笑)。

                

料理に建前はいらない。


「Oki流」を意識しだしたのは20代くらいのまだ若い時。「Oki流」って、奥が深いんですよ。「Oki流」の説明をしようとしても、うまく説明できないし、だってまだ自分でもよく分からない(笑)。ひとつだけいえることは、「計算はない」っていうことかな。出たとこ勝負、表裏がない、全部本音(笑)。僕の生き方そのものを表す言葉が「Oki流」なのかもしれません。

僕達の仕事は美味いか不味いかだけ。そこに理屈はいらないんです。演出とか予備知識は必要ですよ。だからと言って、「農家の人がこれだけ一生懸命作った野菜です」って言っても、それがまずければ、ただのまずい野菜です。そこをごまかして商品化しようとするから、今のご時世ではいろんなところでバッシングされるんだと僕は思います。


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僕は、飲食店には絶対に建前はいらないって思ってます。むしろ、あってはいけない商売だと思います。
僕は、もともと建前がキライです。本音しか言わないタイプ(笑)。
そういう本音の世界だからこそ、僕には合ってるのかもしれません。

先日、本の出版パーティーで、僕が料理をやりたいと思い始めた小学5~6年生の時の恩師に会ったんですけど、「沖くんは、天性の仕事に就いたよ。」って言われました。先生は、僕がワガママだったり、人の言うことを聞かなかったり、人と違う事をしたがったりする性格っていうのを一番良く知っている人だから、本のタイトルに「Oki流」って付けたことも含め、お前は一番適した仕事に就いたなって感じてくれたんだと思います。規則や決まりなんか関係ない、本音で勝負したいっていう仕事のやり方が僕には合ってるんですよ。

世間一般では「料理人」っていうと、偏屈だとか頑固者っていうイメージがあるけど、こだわってるところが違う。僕は料理のやり方やレシピにこだわるんじゃなくて、僕のやり方でどう美味しくするか、お客様を喜ばせるかにこだわっている。
僕はそれが普通だと思っているし、そこの頑固さは変えようがないですね。

                 

沖克洋を支える原点とこれから。


修行時代はそんなに余裕もなかったけど、44歳にもなれば、人としての第一ステップを経験して、余裕も出て素直に「ありがとう」って言えるようになりました。今、アトリエオキに携わってくれている人や業者さんにももちろん感謝しているけど、僕は恩師や先輩っていう人も粗末にしたくありません。今の自分があるのは、親も含めて色んな人たちの手助けがあって、今の沖克洋ができあがってると思うから。それは料理と一緒。怒られた時もあるし、ぶん殴られたときもあるし、褒められた時もある。そういう人の手がかかって自分が成長したっていうことを、最近特に実感するようになったし、感謝するようになりました。

この人たちへの感謝や大切にする気持ちを忘れたら、絶対に僕はなくなると思ってます。だから僕は今後も福岡でやっていくだろうし、福岡じゃないとやっていけないやり方や生き方をしているとも思います。

僕にとって10代20代は、人から何を言われようと、良い事も悪いことも自分の信じるように真っ直ぐにやってきました。失敗ももちろん多くて。でも30代では、後輩もでき、色んな人と出会う中で信頼できる人間を見極める時だったと思います。そんな固いつながりで導かれた人達となにかをするのが、40代かな。20代30代に僕と共通点のある同じようなやり方をやってきている人って、「あ、こいつは間違いないな」って確信があるんですよ。そういう人達と組んで、これからもイベントなんかやっていきたいね。

そのためにもまずは、僕の店「アトリエオキ」でOki流の料理や店をしっかり守りたい。オーナーシェフとしては、商売が不安定だと、やっぱり暗くなるし、好きなこともできなくなるし、楽しむこともできないですから。

そして、これまでお世話になった恩師や友達を大事にしたいですね。だって胸を張ってお付き合いしたいですから。今の店をきちんとやって、今のお客さんを大事にして、喜ばせて感謝していきたい。それが沖克洋の原点ですから。

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エフタイムズ 男の矜持より(2008.10月)

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