26日朝、関西国際空港。1週間のベトナム、シンガポール出張から帰国した大阪府知事の橋下徹は上機嫌だった。出張目的は経済交流だが、シンガポールで政治家がどのように国を動かしているのかを知ったことが何よりも収穫だった。「小さな国だから、課題を共有している。政治家が何をするべきかわかっている」。シンガポールと府を重ね合わせ、府と大阪市の解体・再編を進めることに確信を持った橋下は、今後はこの方向性に異を唱える大阪市長の平松邦夫と歩調を合わせることはしないと“決別宣言”した。

 府市をめぐる橋下の言動は、年明けを境に「連携」から「再編」に変わった。今月16日に行われた橋下の政治資金パーティーでは、来春の統一地方選で行われる府議・市議選で府市再編を争点に掲げ、新グループの旗揚げを口にした。さらに27日の記者会見では、大阪市営地下鉄の民営化や府市庁舎の一本化にまで言及し、「統一選で惨敗したら退場する」と言い切った。

 こうした言動は、府との連携を模索してきた平松にとっては寝耳に水の話だが、橋下は「平松さんはやれることをひとつずつやるタイプだが、やれないことをやるのが政治家だ」と突き放す。急速に冷え込む2人の関係の伏線は昨年からすでに引かれていた。

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 「このままだと水道事業統合は動かない。市長会に任せたら…」

 昨年11月26日、池田市で行われた合同防災訓練に参加した橋下に、地元市長の倉田薫が、こう耳打ちした。当時、府と大阪市が進めていた水道事業統合は大阪市以外の市町村の反発で暗礁に乗り上げていた。

 府市長会長を務める倉田は、橋下を援護するかのように、大阪市を除く42市町村で水道事業を担う企業団方式を提案した。府内の水道事業を統合する当初の目的と異なるが、効率化は期待できるプランだ。

 「結果として府水道部がなくなるなら、こだわりはない」。橋下は決断した。水道事業の府市統合が事実上、白紙に戻った。

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 都道府県並みの権限を持つ大阪市と府は以前から「府市あわせ(不幸せ)」といわれた仲だが、橋下は、府市の連携で同様の事業を整理し、「二重行政」を解消しようとしている。

 連携の象徴は「大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC)ビル売却」「水道事業統合」「府立大と市立大の統合」の3つ。水道事業統合は頓挫する可能性が強まったが、府幹部の一人は「最初から無理のある構想だった」と打ち明ける。また、大阪市幹部の一人は「大阪市には、府がなくてもやれる自負がある。府にも関西のリーダーという気持ちがある。互いのプライドが障害になっている」と分析する。

 ともに民間出身の橋下と平松の就任以降、府市の関係はこれまでになく良好といわれる中で、橋下が平松に決別宣言を突きつけ、統一選に“介入”する狙いは何か。橋下に近い府議はこう代弁した。「府市のエゴが原因で連携が進まないと痛感したのだろう。府市を解体して一つにしたら、やりたいことを展開できると悟った。それを選挙で問うつもりだ」。

       (敬称略)

     ◇

 2月6日に就任丸2年を迎える橋下知事。「政治的なアピールはできたが、施策で具体的な効果は出ていない」と自己分析するが、1期目の折り返しで見えた府政の課題は何か。3回にわたって検証する。

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