新潟市の古町十字路にある老舗書店「北光社」(同市中央区古町通6)が1月31日、190年の歴史に幕を閉じた。古町の看板書店として親しまれ、待ち合わせの名所にもなっていた同店。最終営業日となったこの日、思い出の場所の最後を見届けようと多くの市民が詰めかけ、閉店を惜しんだ。【畠山哲郎】

 ◇思い出の場所

 午前9時半の開店後、最後の記念にと来店する客が徐々に増え、昼前にはレジ前に列も。混雑は夜遅くまで続いた。

 40年前から同店を利用していた新潟市中央区の主婦、佐藤りつ子さん(80)。長男が高校生のころ、一緒に古町に出かけた時の待ち合わせた場所だったといい、「楽しい思い出があり、閉店は残念です」と話した。

 中学時代に同店で坂口安吾の「堕落論」を買ったのが思い出という同市東区の会社員、古屋公章さん(32)は、この日、本を7冊買った。「本好きになったのも北光社のおかげ。古町が古町でなくなってしまうようだ」と無念の表情を見せた。

 店内には、古くから使われてきた店の判子を利用したスタンプコーナーも設けられた。購入した本にスタンプを押した新潟中央高1年の藤波詩織さん(16)は「店員さんの雰囲気が良く、来るだけでわくわくしました。ここにあったことをずっと忘れたくないです」と語った。

 閉店後の跡地利用を巡っては、地元の商店街組合などが江戸後期の禅僧、良寛の資料や文献を展示する施設をつくる構想を検討している。「新潟良寛会」の柳本雄司会長によると、計画案を既に新潟市や地権者に提出したという。

 ◇メッセージ

 <私は80才、いま癌(がん)と闘病中です。北光社から母が買ってくれた英語の辞書を今も保存しております>

 店内の記入スペースや郵送、電子メールで募った市民からのメッセージ。ショーウインドーや店内の壁に飾られた中の一つに病床からつづられたとみられるものもあった。

 <貴店の閉店を聞いて涙が出ました。青春、壮年、老年を通じて北光社の書籍でどれほど知識を深めたことでしょう。私は間もなく消えゆく運命にありますが、北光社の再びの開店を祈念しております>

 集まったメッセージは500通以上。斎藤幸成社長(50)は「店を閉めることになり申し訳ない気持ちでいっぱい。今まで利用してくれたお客さんに心から感謝したい」と最後に語った。

 ■ことば

 ◇北光社

 江戸後期の1820(文政3)年、旧水原町(現阿賀野市)で「紅屋潤身堂」として創業。1898(明治31)年に古町へ移転し、社名も「北国に文化の光をともす」という意味の現在のものに変えた。一時は市内に6店舗を展開していたが、75年の大型書店進出の対抗策として行った店舗の増床が裏目となり、負債を抱えることに。売り場の縮小や店舗数の削減などで8年前から黒字に転換したものの、昨年12月に取引先の企業から支援打ち切りを告げられ、閉店が決まった。

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