中学3年の1年間、通訳の特訓 らしくない通訳レッスンを毎週1回受けた
が、高校1年になる直前にレッスンを授けた宣教師が私に衝撃的なことを
言った。「来週の日曜日、あなたは私の英語のメッセージを日本語に通訳し
ます」と。お願いでなく宣言だった。「そんなことは無理です」と答えると、
英語の原稿を予め用意するから、1週間かけてじっくり準備すれば出来る
はずだと言って、宣教師はその決意を曲げなかった。あせった私は、その
英語の原稿を全て日本語に翻訳し、暗記するほど繰り返し読んだ。やがて
恐怖の日曜日がやって来た。私の頭の中には日本語に翻訳した文章だけし
かなく、英語をじっくり聞く余裕はなかった。でもほとんど暗記していた
ので、口だけはスラスラ動いていた。聞いていた会衆は「天才少年が出現
した」と思ったかも知れない。でも彼らが気付かなかったことは、時々私
の日本語が先行し、宣教師が後からそれを英語で言っていたことだ。すな
わちシーソーゲームのように、英語が先行したり日本語が先行したりして
いたのだ。こうして私の人生初の通訳は、支離滅裂状態で終わった。
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私は、小学校6年生の2学期から英会話のレコードを聞くところから
独学を始め、中学校1年生になった時にアメリカ人宣教師と出会った
こともあり、中学校2年生のころには日常会話 にさほど苦労しなくな
った。中学3年生になる直前にその宣教師から思いもよらぬことを言
われた。「あなたは通訳者になりたいですか?」と。なぜか知らないが
気持ちが高揚してとっさに “Yes”と答えた。その結果中学3年生になっ
た週から、毎週水曜日の放課後その宣教師のお宅に行き始め、通訳の
特訓が始まった。でも通訳に関して何の知識も持たない私にも、やって
いることが通訳の訓練には思えなかった。彼は1時間かけてやったこ
とは、英語と日本語の対訳聖書を開いて、その背景をひたすら英語で
解説することだった。おかげで語彙や表現も増え、聖書の内容もだいぶ
わかるようになった。「いつになったら通訳の訓練が始まるのだろう?」
と思っている内に、1年が経ってしまった。今考えると、その宣教師は
通訳のノウハウを全く知らなかったようで、彼の本音は別の所にあった
ようだ。
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