『法人税がわかれば、会社にお金が残る』をご購読くださった方から
ご質問をいただきました。
103ページの税率のグラフが、所得税の税率表と異なるのはどうしてですか?
というご質問でした。
これは、役員給与にかかる社会保険料については、
会社負担分を加味していることと、
給与所得控除を加味していること、
がその理由です。
保険料がかかります。
合計すると26%くらいです。
これを会社と個人とで折半すると13%くらいずつ負担することになります。
103ページのグラフでは、両方を織り込んでいます。
さらに、会社負担分の税効果も加味しています。
ですので、所得税の税率表とは異なり複雑な負担率を表示しています。
2010-08-04
2010-08-03
2010-08-02
法人税の基本的な枠組みを見ながら「会社にお金が残らないカラクリ」を7つ紹介してきました。
こうして説明されると、「そんなものかな」と納得してしまわれるかもしれません。
しかし、中小企業の経営の肌感覚と法人税のルールがズレている箇所については、きちんと理解しておく必要があります。
次の三つの点に集約できますので、本章の最後に整理しておきましょう。
一つ目は、法人税は手元資金の余剰にかかるのではなく所得にかかるという点です。
所得は資金余剰よりも大きい金額になることが多いため、会社は納税資金の準備に頭を悩ますことになります。
二つ目は、会社が儲かっていなくても法人税を払わなくてはならないことがあるという点です。
それは、交際費のように会社からお金が出ていってしまう経費であるのに、損金に算入されないものがあるためです。
三つ目は、固定資産を購入した場合、通常ですと購入した年に代金の全額を支払いますが、会社の法人税の計算に当たっては、購入した年の損金として全額を落とすことはできないという点です。
減価償却の手続きを経て何年もかけて損金にしますので、支出が法人税を減らすには何年もかかるのです。設備投資にあたっては、この点を理解した上で資金計画をたてなければ資金ショートしてしまいます。
この三つを念頭において会社を経営すると、余計な在庫や不動産を持たず、代金回収に努め、ほとんど飲みに行かない筋肉質な経営になれます。
このブログは、法人税の一般的な情報を整理した読み物です。税実務に供することを前提として執筆されていないため、法人税法その他の法令の精緻な再現を徹底しておらず、申告業務にご利用いただくことはできません。このブログの内容は可能な限り信頼性の高いものとなるように努力していますが、執筆者は、内容の適法性、現行法令との整合性、真実性、特定目的への適合性、適時性、完全性、網羅性、正確性を含めいかなる保証も致しません。また、提供されている情報は、税務その他の専門的アドバイザリーサービスとして用いられるものではなく、また、それらに代るものではありません。執筆者は、いかなる者に対しても、その原因の如何を問わず、このブログの利用から生じるいかなる損害についても責任を負いません。税務については、税理士にお問い合わせいただくか、最寄りの税務署に直接ご相談下さい。
もし、あなたが購入した不動産や有価証券が値下がりしたら、損をしたと思いますよね。
経営者は、値下がりして損をしたという感覚があるのに、税法では残念ながらこの損をすぐには認めてもらえません。
つまり、持ってる資産が値下がりしただけでは、原則として、税金が安くならないのです。
自分の手金で、不動産や巨額の株式投資を購入する人は少ないでしょう。会社の場合は、ほとんど借り入れをしています。
そうすると、どういったことが起こるでしょうか?
借入金は減らないのに、資産価値だけが下がることになりますよね。たちまち、銀行から追加担保を求められます。
不動産を買って順調に元本を返済するためには、不動産の減価償却費の金額の範囲で返済するのが得がたい方法です。
普通の会社だと35年ローンというのはありませんから、もっと短い期間でローンを組みます。ところが、購入した不動産の減価償却の年数は40年だったりします。不動産の減価償却費の範囲でローンを返済しようというのは、実務上は無理な話です。
だから、本業の利益を返済にあてるしかありません。でも、法人税を払った後に残る利益しか返済に回せませんので、その額は小さなものです。
不動産を購入したら、資金繰りに厳しくなるのは、当たり前のことなのです。
もともと、不動産を買うだけで資金繰りは厳しくなるということです。
さらに、不動産の評価額が下がってしまえば、追加借り入れの道も閉ざされますので、いよいよ資金繰りは厳しくなります。
値下がりした額の40%だけ法人税が安くなれば、資金繰りがいくらか楽になりますが、税法ではそれを認めていないので、経営者の税金に対する嫌悪感は増すばかりでしょう。
その場合の解決策は、早期に売却するしかありません。
有価証券であれば、半値以下に値下がりしてしまった場合、資産評価損を認めてもらえるケースもあります。そういう規定は積極的に活用するべきだと思いますが、不動産の場合は、土地の価格がいくら下がっても評価損を税法が認めてくれるケースはなかなかありません。
昔から土地の価格は下がらないのが常識でしたから、ほとんどの人が不満に思わなかったのかもしれません。
しかし、今では土地の価格がかなり下がってきていますので、不安に思っている人も多いのではないでしょうか。
資産の評価損が損金にならない理由は、確定していない損は損として認めないという考え方が税法にあるためです。
このブログは、法人税の一般的な情報を整理した読み物です。税実務に供することを前提として執筆されていないため、法人税法その他の法令の精緻な再現を徹底しておらず、申告業務にご利用いただくことはできません。このブログの内容は可能な限り信頼性の高いものとなるように努力していますが、執筆者は、内容の適法性、現行法令との整合性、真実性、特定目的への適合性、適時性、完全性、網羅性、正確性を含めいかなる保証も致しません。また、提供されている情報は、税務その他の専門的アドバイザリーサービスとして用いられるものではなく、また、それらに代るものではありません。執筆者は、いかなる者に対しても、その原因の如何を問わず、このブログの利用から生じるいかなる損害についても責任を負いません。税務については、税理士にお問い合わせいただくか、最寄りの税務署に直接ご相談下さい。
結局、赤字を出している不動産については、早期売却するくらいしか実務上の解決策がありません。
あなたの会社は、掛けでモノを売っていませんか?
多くの会社は、そうだと思います。掛けの代金を帳簿に計上すると、売掛金ですね。
売掛金が多いと資金繰りが厳しくないですか?
モノは売ったのに、現金を回収できるのは1カ月後以上だったりするので、結構大変ですよね。
そうなのです。掛で商売をするのは、資金繰りが大変なのです。
つまり、売掛金などの金銭債権をたくさん抱えていると、在庫と同じで資金を寝かせておくことになってしまうということですね。
この売掛金で商売するのは仕方がないことです。ほとんどの会社では、売掛金で商売をしていますから、自分の会社だけ「すぐに現金をくれ!」と言っても、取引先からひんしゅくを買うだけでしょう。
しかし、もし貸し倒れがあったら大変です。予定していたお金が入ってこないので、ものすごく痛いですよね。
実際にモノを仕入れてきて代金を払ったのに、販売したモノも戻ってこないのが普通ですから、「ちょっと、勘弁してよ!」と思うことでしょう。
売掛金だけでなく貸付金についても同様ですね。
貸し倒れに遭った場合、もうひとつ問題があります。
それが法人税です。
法人税の計算上は、貸し倒れがあったとしても、すぐには損金を認めてくれないのです。
損金として認められないとどうなるでしょうか?
なんと、利益があったことになってしまい、やはり40%の法人税を取られてしまうのです。
ただでさえ貸し倒れがあって大変なのに、法人税も取られるのですから、「法人税ってどうなってるの? 損金として算入させてくれよ!」と思うのが普通でしょう。
貸し倒れが発生した事業年度で即時に経費として落ちれば、まだ幾分経営者の気持ちも休まるというものです。
しかしながら、そう簡単に認められないので、不良債権の40%だけ法人税を払いすぎることになってしまうのです。
貸し倒れで生じた損失が損金として認められれば、税負担が重過ぎると感じることはないでしょう。貸倒損失の損金算入が認められるケースについては、いずれ詳しく解説したいと思います。
ここでは、回収不可能な債権については、早期に放棄することも検討したほうがいいということだけ覚えておいてください。
回収の見込みのない債権にいつまでもにこだわっていると、余計に法人税を取られてしまうからです。ある意味、諦めることも大切なのです。回収が本業であるはずの銀行だって、不良債権はさっさと安値で売却してしまうのですから。
ただし、あまりにも早く放棄してしまうと大変なことになります。
たとえば、取引先からの支払いが2カ月ほど遅れているというケースを考えてみます。
債権者が取引先に問い合わせてみると「もう少し待ってください。再来月には支払いますから!」と言われました。
この言葉を聞いて、債権者は自分勝手に「これはもう支払われないな」と思ってしまい、債権を放棄しました。
この場合、債権を放棄したことにはなりません。なんと、寄附金扱いになってしまうのです。その理由は、相手が支払うことが期待できるからです。
あまりにも早く債権を放棄してしまうと、寄附金になってしまうのです。その場合、やはり法人税が40%かかりますので、注意が必要だということです。
先ほどの寄附金の話でも同じなのですが、余計なことをしてしまったために予期せぬ税金がかかることがあります。
そういった法人税の落とし穴だけは避けてほしいと思います。
寄附をすると税金が安くなると思っている人も多いのではないでしょうか?
実は、ちょっと注意が必要です。
税法のルールでは、寄附金にも一定の制約を課しています。
法人税法によると、「寄附金とは、寄附金、拠出金、見舞金、その他どのような名目であるかを問わず、会社が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与をすることである」と定められています。
ただし、広告宣伝や見本品費、接待交際費、福利厚生費に該当するものは含まれません。
ここで、注意しなくてはならないのは、一般に考える寄附よりも、法人税法上の寄附金は非常に範囲が広いものだということです。
法人税法における寄附金の分類は、国や地方自治体、財務大臣が指定したところ以外の寄附金には、損金として算入できる額に上限があるのです。
上限額の計算式も付録で紹介しますが、この限度額は非常に小さいものでしかありません。たとえば、資本金と所得がともに300万円の会社の場合、寄附金として損金算入できる上限額は数万円にしかならないのです。
これでは、神社に数万円の寄附をしてお終いということになってしまいます。
ほとんど何も遣えないですよね。
たとえば、100万円寄附することで、120万円の売上が取れる仕事があったとします。一見すると、20万円の利益が出るので、100万円寄附してもおいしいと思いますよね?
ところが、税金の計算をすると、逆に赤字になってしまいます。
仮に寄附金の上限額が5万円だったとします。すると、100万円寄附したのに、95万円は損金として算入できないのです。
所得は、120万円から5万円だけ引いて115万円になってしまいます。すると、その40%にあたる46万円を法人税として取られてしまうのです。
手元には20万円しか残らないのに、46万円も取られてしまうのですから、26万円を損したことになりますよね。
だから、寄附金には注意が必要ということです。
しかし、もっと怖いことがあります。
それは、寄附したつもりがないのに、寄附金になってしまうケースです。
たとえば、誰かに物品をタダであげた場合や、時価よりも安い価格で譲った場合に、本来受け取っていた代金との差額を寄附金として認定されてしまいます。
あるいは、会社が誰かにお金を貸し付けていた場合に、利息を受け取らなければ、原則として、利息相当額が寄附金と認定されますし、貸し付けている金銭債権を免除してあげた場合にも、免除した金銭債権の額だけ寄附金があったものとされてしまうことがあります。
具体的な例を挙げてみましょう。
おもちゃメーカーのA社と、おもちゃ問屋のB社がありました。
A社は順調に利益を出しているのですが、B社は経営状況が芳しくありません。
A社としては、B社が倒産すると困りますので、B社に資金を融通しますよね。B社が倒産してしまったら販路がなくなりますから、A社がB社を支援するのは当然です。
ところが、このお金が寄附金とみなされてしまうことがあります。
これが、寄附金の怖いところです。
例を挙げましょう。
1000万円の仕事をしました。コストが700万円かかったので、利益は300万円です。
ところが、この仕事は自分だけでなく、友だちのAさんとBさんと一緒に取ってきた仕事でした。
当然ながら、AさんとBさんは「俺たちも100ずつ万円欲しい」と分け前を要求してきました。
結局、自分の会社の利益は100万円になってしまいます。この100万円の利益をそのままにしておくと、法人税として40%にあたる40万円も取られてしまいます。
せっかく1000万円の仕事をしたのに、会社に残るお金は60万円だけということになりますよね。
「それなら、銀座にでも行って騒ごう!」と、三人で銀座に繰り出しました。
どうせ法人税で合計120万円も取られるのなら、交際費として300万円使って豪遊しようと思ったのです。
この300万円、交際費として損金に算入できるでしょうか?
税法のルールでは、交際費に一定の制約を課しています。
企業の交際費の支出を無制限に認めたのでは、接待を目的とした飲食などの経費を計上することで、法人税の負担をいくらでも軽減できることになってしまうからです。
それに、浪費とも考えられる接待交際費の支出は、抑制することが政策的に望まれます。
つまり、税法上、交際費の損金算入は制限されているということです。
交際費の損金算入の限度額は、大法人の100%子会社ではない資本金1億円以下の会社ですと、年間600万円以下と決められています。
もし、600万円の交際費枠を遣いきってしまっていた場合、先ほどの300万円の交際費は損金として算入できないということになります。
その場合、銀座で豪遊しなければ、会社に180万円残ったのですが、無駄なお金を300万円も遣ってしまったために会社にお金は残らないことになります。
さらに、この300万円に40%の法人税がかかりますから、会社は120万円の税金を支払わないといけないのです。
交際費というのは、他の支出に変換することが基本的にできません。
だから、資本金1億円以下の会社では、交際費の予算枠は毎年600万円まで。これしか対策はありません。
ただし、600万円全額損金算入できるわけではなく、90%だけです。また、資本金が1億円超の会社では、交際費の損金算入が一切認められていないことに注意してください。
それだけでは厳しいということで、現在では、一人あたり5000円以下の飲食費は交際費の範囲から除外されています。
つまり、一人あたり5000円以下の飲食なら、税金の計算においても経費として落とせるということです。
一人あたり5000円の予算で何件もはしごすれば、すべて経費として落とせることになりますね。ただ、飲食に参加した人数、どういう関係の誰々と行ったかなどを記載した書面を残さなくてはいけないので、非常に面倒ではあります。
な
中小企業の経営者は、自分の会社の財布と自分個人の財布は一緒だという感覚をお持ちではないでしょうか?
「自分の会社で稼いだお金を、自分で自由に使って何が悪い!」という経営者も多いと思います。
そのためには、会社にお金を貯めておくのではなく、経営者のほうにお金を回したいですよね。会社の法人税を支払わないようにして、個人の所得税だけを支払って終わりにできればいいと思うはずです。
ところが、役員給与にはルールがあります。
詳しいことは、いずれ解説したいと思いますが、通常、ほとんどの会社は、「定期同額給与」という役員給与の方法を採用しています。定期同額給与とは、簡単に言うと、毎月同じ金額の給与を受け取ることです。
これは、月給の基本給をイメージしていただければ、わかりやすいでしょう。
つまり、役員が毎月決まったお給料を受け取る分には、法人税法もこれを損金として認めているのです(細かな条件がほかにありますが)。ただし、毎回同額でなくてはならないため、残業手当や成果報酬を支給した場合、定期同額給与とは認められていません。
逆に言えば、毎月同じ額の給与でなければ、損金算入できないので、法人税と所得税のダブルで税金を取られることになってしまいます。
この規定は、非常に厳しいものです。
たとえば、毎月の固定給を80万円としている役員がいたとします。今月は非常に頑張って夜遅くまで働いたので、残業手当相当として20万円を上乗せしたいと考えたとします。
普通に考えますと、固定部分の80万円は定期同額給与に該当し、上乗せの20万円だけが定期同額給与に該当しないと思うかもしれません。固定部分の80万円は損金算入できるけど、20万円は損金算入できないと考えるのが当然でしょう。
ところが、そうではない場合もあるのです。
なんと、100万円全額が、定期同額給与に該当しないことまであります。
役員給与というのは、融通が効かないものですよね。
だから、多くの会社では、毎月の社長の給与をいくらにするか、期首に税理士さんと決めているのです。
社長の給与は定額だとすると、どういった問題が発生するでしょうか?
その期に、ものすごく利益が出た場合、会社に多くのキャッシュが残ってしまいます。社長の給与を増やすことができませんから、会社のお金を社長の財布に移すことはできません。
会社にお金が残ることはいいことかもしれませんが、そこには法人税がかかってしまいます。利益の40%も税金として取られてしまうのですから、多くの社長さんが節税に走ってしまうのも頷けます。
従来の節税では会社にお金を残すことはできないので、無駄な悪あがきをしていることになります。
役員給与は定期同額を維持するのが普通ですし、社会保険料保険料の負担もあるので、多くの経営者は使い勝手の悪いものだと思っています。
だから、役員給与として会社のお金を個人に流すことは難しいと感じているでしょう。
ところが、他にもっといい方法があります。
それは、「貸付金」を利用するものです。
さらに、もっとおすすめなのは「社債」を利用したものです。
固定資産を購入すると、在庫以上に資金を寝かせることになります。
なぜなら、固定資産を購入しても、すぐに費用にならないからです。会社からお金は出ていったのに、すぐに損金算入できないのです。
そこには、減価償却という税法の取り決めがあります。
減価償却については、いずれ詳しく解説したいと思いますが、ここでは次のことだけ覚えておいてください。
固定資産を購入した場合、一度に損金算入するのではなく、数年にわたって少しずつ損金算入する。
たとえば、100万円の機械を購入して、120万円の売上が見込める仕事があるとします。
普通の社長なら、20万円儲かるので、この仕事を請けようと思うはずです。
ところが、購入した機械が10年で減価償却するものだとすると、購入した年に費用として落ちるのは、10分の1の10万円だけです。
税金の計算上では、120万円の益金、10万円の損金が計上されることになります。
そうすると、どうなるでしょうか?
110万円の利益が出たという計算になってしまうのです。法人税は約40%ですから、法人税として44万円も取られてしまいます。
でも、会社には20万円しかありません。利益が出ると思って引き受けた仕事ですが、逆に24万円もマイナスになってしまうのです。
何とも不条理ですよね。これが、固定資産、減価償却資産を購入した場合、資金繰りが厳しくなる(資金不足になる)大きな理由です。
資金不足になる原因は、これだけではありません。
固定資産は、数年するとお金を生まない資産になっていることが多いのです。
たとえば、先ほどの100万円の機械の場合、毎年120万円の売上を生んでくれればいいのですが、そうではないケースも起こります。
機械が陳腐化したり、その機械で製作した製品が売れなくなることはよくあることです。
その場合、その機械はお金をうまないけれど、資産としては会社に残っているのです。
まったくお金をうまないというのは稀なケースですが、稼働率が急激に落ちるというケースは多いでしょう。最初は売上が120万円あったのに、今年は売上が10万円しかないようなケースですね。
お金をうまない資産にお金を固定してしまっている状態なので、資金を寝かせているのと同じなのです。
その場合は、在庫と同じで、やはり早く「損切り」することが必要です。
損切りするためには、どの資産がお金をうんでいて、どの資産がお金をうんでいないかを見極める必要があります。
しかし、その実態を把握している中小企業はあまりありません。
たとえば、A、B、Cという三棟の賃貸ビルを持っていたとします。ビルA、ビルB、ビルCともに購入当初は順調に利益を出していました。
ところが、購入から8年経ったころ、ビルAとビルBは順調に稼働しているけれど、ビルCは8フロアのうち5フロア空いてしまいました。
あまり真剣に考えていなかったので気付かなかったけど、受け取っている家賃に対して、支払う管理料と固定資産税のほうが多いために、赤字になっている固定資産が隠れているのです。
少し前までは、大企業でも個別の固定資産に対して、損益の管理を行っていないケースがありました。
ビルCが1500万円の赤字を出していても、ビルAとビルBが1000万円ずつ儲かっていれば、合計で500万円の黒字になります。法人税は、三つのビルの合計にかかるので、決算書では三つのビルの合計でいくら儲かったか考えます。
そのため、その背後に隠れている赤字の固定資産を見抜けないのです。
ところが、2006年3月期から「減損会計」という考え方が導入されました。ある資産が連続して赤字を出した場合、その資産価値の下落を帳簿に反映させましょうという会計基準です。
残念ながら、この減損会計で生じた損は、法人税では損金として算入されないので、多くの経営者は面倒くさいものと認識しています。
「税金が安くならないのに、一つひとつ管理するなんて、やってられない!」という方も多いでしょう。
でも、本当にそれでいいのですか?
私は、この減損会計は経営判断に役立つと思っています。
なぜなら、どの固定資産が赤字になっているか、把握する作業を伴うからです。
先ほどのビルの例ですと、ビルA、ビルB、ビルCそれぞれの収支を管理することで、ビルCが赤字を垂れ流していることに気付きます。
それに気付けば、ビルCを損切りしたほうがいいとわかります。「減損会計をしないと、あなたの会社にお金は残りませんよ」ということを訴えたいのです。
特に、遊休資産は、お金をうまないのに税金だけかかります。やはり早期に廃棄したり売却したりしなければいけません。
固定資産を売った場合、売却代金が、減価償却した後の残額に対して勝ち越す場合は益金となり、負け越す場合は損金になります。
たとえば、また100万円の機械の場合を考えましょう。
3年間使ったけど、これ以上利益を生まないと判断し、売りに出しました。残念ながら20万円にしかならなかったとします。
すると、3回減価償却していますので、その機械の価値は帳簿上では70万円になっています。しかし、20万円でしか売れなかったので、マイナス50万円になります。
この50万円は損益として算入できますので、50万円の40%にあたる20万円の節税になるのです。
つまり、一つひとつの固定資産に対して収支の管理をすることで、会社は資金を垂れ流す資産をリストラできますし、税金も得をするということなのです。
会社は、お金を払って原料を仕入れています。
しかし、それを製造して売るまではお金に替わりません。そのため、仕入れから販売まで、お金を寝かせておくことになってしまいます。
つまり、在庫を抱えるというのは、資金がかかるということですね。
これは、法人税とは関係なく、あらゆる経営者が直面している悩みだと思います。
仕入れてきた商品がすぐにドンドン売れていけば、仕入れ代金をいくら払っても、売上代金で回収できますから、会社の資金繰りは順調に回っていきます。
ところが、売れるまでに時間のかかる在庫をたくさん仕入れてしまうと、仕入先に払う代金がドンドン会社から資金流出するのに、売上代金の回収にはつながらない。その分、会社がお金を払っただけの状態が続くことになります。
これでは資金繰りが厳しくなるのは当然です。
このように、在庫を抱えるだけで資金繰りは厳しくなる仕組みがあるのです。
税務上で見ると、在庫はどのように扱われるでしょうか。
仕入れてきた原料は、売上原価という「費用」と期末の在庫という「資産」に振り分けられます。
売上原価とは、その期に売れた商品に対してかかった費用です。こちらのほうは、経費として損金に算入することができるので、何も問題ないですね。
問題なのは、期末の在庫のほうです。
在庫は資産として扱われるので、経費に算入することができません。
経営者の感覚からすれば、「仕入れ代金を払ったのだから、売れようが売れまいが全額経費として認めてくれよ!」と思うはずです。
しかし、会社からお金が流出しても、損金として計上できないのです。
何だか変だと思いませんか?
会社の現状と税法の間には、このようなギャップがあるため、多くの経営者は在庫に悩んでいるのです。
これが不良在庫となると、もっと悲惨なことになります。
経営者の感覚では、不良在庫というのは、あくまでも“不良”と認識しています。気持ちの中では、「もう売れない」「100万円を無駄にした」「0円の価値しかない」と思っているはずです。
売れないとわかった時点で、「不良在庫は0円なので、損金が100万円出た」と思うのも当然でしょう。
ところが、税法ではそんなに簡単ではありません。
たとえ経営者が「もう売れない!」と思っていても、不良在庫として認めてもらえないケースが多いのです。
つまり、不良在庫だと思っていても、在庫という「資産」として扱われてしまうのです。
経費として損金算入できないのですから、余分に法人税がかかってしまいますよね。ただでさえ、損をしたと思っているのに、さらに法人税を多く取られるのですから、ダブルショックです。
その場合、解決法は「損切り」しかありません。
いつまでも不良在庫を抱えていては、税金を余計に取られるだけでなく、倉庫代もかかってしまいます。
「もったいない!」と思うかもしれませんが、バッタ屋に買い取ってもらうなど、損切りするのが一番です。
不良在庫を抱えてしまったら損切り――と覚えておきましょう。
最近、生命保険は節税対策として人気がなくなってきました。
その理由は、全額損金算入できる保険が認められなくなってきたからです。
通常は、保険料の半分を経費として損金算入し、残り半分は資産として計上し、貯金のような扱いをしなければいけません。
たとえば、保険料として100万円払ったなら、50万円しか損金として算入できないということです。
従来のように全額損金算入できれば、100万円の40%にあたる40万円の節税効果がありましたが、半分の50万円ならば20万円しか節税効果がないのです。
そのため、保険は節税としてあまり魅力的ではなくなってしまったのです。
そうは言っても、まだ節税対策で生命保険を活用している経営者もいらっしゃると思います。
そこで、保険という節税商品について、考えてみたいと思います。
節税商品としての保険の基本は、5年くらい保険をかけて、将来どこかで解約するというものです。
そうすると、1年目から5年目までにかけた保険料は損金に算入されるので、法人税が安くなります。
しかし、かけていた保険料が解約により戻ってきたときはどうなるでしょうか?
戻ってきた保険料は益金として扱われます。つまり、結局法人税がかかってしまうということです。
保険をかけていた5年間は節税効果がありますが、6年目には税金を取られてしまうのですから、これは単なる「課税の繰り延べ」でしかないのです。
だから、「本当に有効な節税対策の条件」の①を満たさないということですね。
課税の繰り延べがなぜいけないのでしょうか?
大きな問題点は、会社のお金を寝かせてしまうことです。
通常、保険の営業マンが保険という節税商品をすすめるのは、儲かった1年目です。儲かって資金に余裕がある社長さんは、どうにかして法人税を安くできないかと考えます。
保険の営業マンは、そこを巧みに突いて「社長、節税に効果的な保険商品がありますよ」と擦り寄ってきます。
儲かった年はそれでいいかもしれません。
でも、もし2年目から赤字になったらどうするんですか?
事業がうまくいかなくて赤字になってしまったら、保険を解約するしかないですよね。
ここで問題が発生します。
途中で解約してしまったら、払った保険料の全額が返ってくるわけではないのです。
保険には「返戻率」というものがあります。返戻率は保険の種類によってまちまちですが、途中で解約する場合、とても低いのが一般的です。
たとえば、返戻率が80%のときに解約してしまったら、100万円払った保険料のうち、80万円しか戻ってこないということです。
それでは、20万円を無駄遣いしてしまったということですね。
そんな無駄遣いをすることになってもいいのですか?
そう、よくないですよね。
今年儲かったからといって、5年間も保険を払い続けて、その資金を固定してしまっては、事業がうまくいかなくなってしまうのも仕方ありません。
それならば、正々堂々と法人税を支払っておけばよかったということになってしまいます。
返戻率には、単純返戻率と実質返戻率があります。
単純返戻率を式で表すと、次のようになります。
単純返戻率 = 戻ってくる金額 ÷ 掛金
実質返戻率のほうは、実際の節税効果を考慮して返戻率を求めます。式で表すと、
実質返戻率 = 戻ってくる金額 ÷ (掛金 -節税額)
となります。
先ほど紹介した返戻率は、単純返戻率のほうです。単純返戻率では、100%を超えることはめったにありません。ピーク時でも100%を下回る保険が多いようです。ほけんをかけ始めてから早い時期に解約するケースですとだと60%とか70%くらいになります。
一方、実質返戻率は、100%を超えることもよくあります。
実際の保険のパンフレットには、単純返戻率と実質返戻率が掲載されています。保険の営業マンは都合のいい実質返戻率だけを説明して、「戻りが120%になります。すごい節税効果があるんです!」と言います。
本当ですか?
この実質返戻率の計算には、おかしい点があります。
節税額を加味するのであれば、戻ってきたお金にかかる税金も考慮しなければいけません。解約時に受け取るお金は益金算入されるので、法人税がかかるのです。
しかし、この実質返戻率を計算する場合には、これが考慮されていません。払った保険料の法人税削減効果は説明するけれど、戻ってくる保険解約金の法人税増大効果は説明しないというのは、ちょっとどうなのでしょうか?
けれども、これが節税商品を説明する際の常識になっているのも事実です。
「節税効果のある商品を購入した事業年度にいくらの節税効果があり、それ以後は逆に法人税などが増える逆効果が現れます」と説明すべきだと思います。
けれど、その点を強調をしてしまうと節税に関心のある顧客は買ってくれません。
だから、その点は軽く言及するだけで、あまり詳しくは説明しないセールスマンがいるのです。
そんな販売をしていると顧客と長期間の良好な関係は築けません。法人税の先送りでしかないことをきちんと強調するべきです。
誠意と言っても、「そんな説明したら買ってもらえませんよ」という声が聞こえてきそうです。でも、顧客企業は、本当のことを説明すると節税商品に関心を示さなくなるのでしょうか?
私はちょっと違うと思っています。
たとえば、生命保険を販売するときに、当初の節税効果を説明します。
これは、どの会社でも関心のあるところですから喜んでくださいます。そして、解約時に返戻金が益金に算入されることも説明します。
それと同時に、どうすればその益金を打ち消すことができるかも提案してあげてはいかがでしょうか?