西研・森下育彦『「考える」ための小論文』
テーマ:文章技術◆西研・森下育彦『「考える」ための小論文』ちくま新書、1997年5月
小論文の参考書だが、どうやって「考える」ことを始めるのか、文章を書き始めるには何が必要なのかを説く。それほど奇をてらった内容ではないので、落ち着いて読める本。新書という性格上、やや解説が物足りないかもしれない。論文を書き出すための勘所は押さえていると思う。

- 西 研, 森下 育彦
- 「考える」ための小論文
◆西研・森下育彦『「考える」ための小論文』ちくま新書、1997年5月
小論文の参考書だが、どうやって「考える」ことを始めるのか、文章を書き始めるには何が必要なのかを説く。それほど奇をてらった内容ではないので、落ち着いて読める本。新書という性格上、やや解説が物足りないかもしれない。論文を書き出すための勘所は押さえていると思う。

◆相原茂、木村英樹、杉村博文、中川正文『新版 中国語入門Q&A101』大修館書店、2003年3月
これは読みやすく、分かりやすい本。初心者の私にはちょうど良い。
語学の勉強は、たいていはじめのころは楽しい。新しい言葉を覚えて、少しずつ理解していっているのが分かるから。というわけで、今、中国語の仕組みがだんだん分かるにつれて、中国語が面白くなってきた。
しかし、これが半年とか一年すぎると、飽きてきたり、理解できないことが増えたりして、勉強をやめてしまうことが多い。今回はそうならないようにしなくては。
◆鎌田浩毅『ラクして成果が上がる理系的仕事術』PHP新書、2006年5月
資料の整理法からアイデアの発想法、アウトプットの方法を16のキーワードに整理して紹介している。けっこう参考になる。特に私が長年悩んでいる「どうしたら、はじめの一行が書けるか」について書いているのがよい。
本書で言う「ラクして」というのは、何も努力をしなくても文章が書けてしまうということではなくて、いかにして考えることに集中できるようにするかを追究することだ。つまり、余計なことに頭を使わなくて済むようにする方法を説く。
しかし、いちいち「理系的」だと主張するのは気に障る。本書の方法には、「理系的」という言葉は不要だし、無用な誤解を生むのではないだろうか。
◆清水義範『スラスラ書ける!ビジネス文書』講談社現代新書、2006年4月
私は恥ずかしながら未だに会社に入って働いたことがなかったので、ビジネス文書がどういうものがイメージができなかった。しかしながら、この本を読んだおかげでビジネス文書とはどういうものなのか理解することができた。この本に書かれていることは、実際に働いている人なら「当然のことだな」と思うことばかりなのかもしれない。しかし、作家ならではの言葉でビジネス文書の書き方を説いて面白い(とはいえ、若い頃のサラリーマン生活の経験をもとに書かれている)。
たとえば、チャームのある文書を書けという。要するに、ビジネス文書のなかに、いかにさりげなく「自分らしさ」を出したらよいかということだが、ここで清水は「私事ではございますが」という言葉の上手な使い方を提案している。もちろん、ビジネスにだらだらと私事を連ねても仕方がない。大事なのは、「相手への思い入れ」を伝えることなのだという。そのとき、この「私事ではございますが」を使うのだ。そう簡単に書けるものではないかもしれないが、おもしろい方法だと思う。こうした方法を用いて、ビジネス文書にさりげなく<可愛げ>を出すのがポイントなのだ。清水は、ビジネス文書における<可愛げ>について、こう説明している。
《<可愛げ>とは、ひたむきなのだが至らないものを見た時に、感じられるものである。(p.121)》
こういう<可愛げ>を見せられると、人の心は動かされるというわけだ。そして、人の心を動かすことが、ビジネス文書のねらいの一つでもある。ぜひとも、この<可愛げ>を自然と出せるような人間になりたいものである。これが、もしかすると、企業の求める人間性なのかもしれない。
◆渡辺パコ『論理力を鍛えるトレーニングブック』かんき出版、2001年12月
論理思考についての理論編の第1部と、論理思考の実践編の第2部という構成になっている。論理思考のツールをいくつか紹介しているわけだが、本書では特に「ピラミッドストラクチャ」というツールがおもしろい。文字通り、ピラミッド型に文章を構造化する方法で、この方法は、ある文章をより深く理解しようと思ったときに使える。また、文章を書くときにも使えそう。しかし、実際に実行しようとすると、けっこう面倒かもしれない。
それはともかく、第2部の実践編は参考になる。「イシューを明確することが論理思考の第一歩」という教えは、覚えておきたい。
◆齋藤孝『質問力 話上手はここがちがう』ちくま文庫、2006年3月
これはなかなか面白い本だった。立ち読みしたときに、蓮實重彦の名があったので、気になって読み始めたのだが、この本に取り上げられている「質問」の例が非常によい。たとえば、私が気になった蓮實の例を見てみよう。
齋藤は、『光をめぐって』という映画監督へのインタビュー集における、蓮實のアンゲロプロスへのインタビューを取り上げて解説している。蓮實は、アンゲロプロスに向かって、こう質問した。「しかし、あなたの悲観的な視点にもかかわらず、あなたの映画を見ている限り、あなたはそうした見解には同意していない」。この質問を齋藤は「すごい質問だ」(p.132)というのだ。どうしてか。この質問の前に、アンゲロプロスは、今の時代を悲観的に語っていたという。映画は絶望的なものになってしまったと語っていたアンゲロプロスに向かって、蓮實は「あなたはそうした見解には同意していない」と言い切った。たしかに、この応答はすごい。齋藤が「何という緊張感のある対話だろう」(p.133)と述べるのも理解できる。あなたがどう悲観的に語ろうと、だがあなたの創った映画はそうではないと、蓮實はアンゲロプロスに迫った。知識人が時代を悲観的に語るのは、おそらくクリシェというか、まあよくあることだと思う。真面目に考える人ほど、今に対して絶望感を口にしてしまうだろう。だが、蓮實は映画はそうなっていないではないかと指摘することで、紋切り型の問答を打ち破ってしまう。こうしてアンゲロプロスの別の面を引き出した。これは、たしかにクリエイティブな「質問」と言えそうだ。
もう一つすごいと思った質問は、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』で語られるものだ。マタイ伝には悪魔とキリストの対話があり、そこで悪魔はキリストに3つの質問をした。「お前が神の子なら、石がパンになるように命じてみろ」「お前が神の子なら、この塔の上から飛び降りてみろ」「お前が私にひれ伏すなら、この世のすべての栄華を与えよう」というものである。そして、これに対し、キリストは「人はパンのみにて生きるものにあらず」「神を試みてはならない」「ただ神にのみ仕えよ」と答えたのは有名なことである。だが、ここでドストエフスキーが注目したのは、悪魔の「質問」のほうだった。イワン・カラマーゾフが言うには、「あの三つの問いの出現にこそ、まさしく奇蹟が存している」のである。「なぜなら、この三つの問いには、人類の未来の歴史全体が一つに要約され、予言されているのだし、この地上における人間の本性の、解決しえない歴史的な矛盾がすべて集中しそうな三つの形態があらわれているからだ」というわけなのだ。たしかに、こう言われてみると、この悪魔の質問はすごい。また、これに気がついたドストエフスキーもすごい。
本書には、優れた質問が取り上げられており、それらはあまりにも見事すぎて一朝一夕に誰でもができるわけではないと思うが、非常に参考になる。すぐれた問答は、当事者のみならず、それを見聞きする第三者にも役に立つのだ。
◆藤沢晃治『分かりやすい図解コミュニケーション術』講談社α新書、2006年1月
「分かりやすい○○」シリーズを書いた人なので、今度はどんな「分かりやすい」術を教えてくれるのか、期待しながら読んだ。しかし、期待したほど目新しい内容ではなかったのが残念。
はじめの1章と2章で、「理解する」ことの原理を説明している。この章がちょっと退屈で、著書が断わるように、方法論だけ知りたい読者は読む必要がないかもしれない。
残りの3章と4章で、具体的に「分かりやすい図解」の方法を示す。ここでは、7つの「秘伝」が提示され、順に説明されていく。7つの秘伝とは、「誘導」「要約」「簡素」「分離」「対比」「配置」「説得」である。この7つは覚えておくとプレゼンで役に立ちそうだ。特に「要約」についての説明が良かった。
◆西林克彦『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』光文社新書、2005年9月
文章理解の障害となるものに「わかったつもり」があるという。「わかった」というのは、わからない箇所がないと思う安定した状態なので、もうそれ以上、理解しようとしなくなってしまう。「わかった」と思うことが、より良く理解しようとする妨げになることを説く。
本書は、文脈が文章の理解では重要であること、文脈から私たちは部分部分の意味を引き出していることを説明する。つぎに「わかったつもり」とは、どのようなことか、いくつかのパターンを提示する。たとえば「全体の雰囲気」によって読み誤ってしまうことなど。そして、いかに「わかったつもり」の状態から脱出するかを最後に提案する。
結論的には、要するに「読み」には終りがないということだ。「わかった」と思っても、別の「わからなさ」を見つけることもある。「もっとよい読み」はいつでも存在するということだ。というわけで、私たちが文章を読むときは、いつも「わかったつもり」でしかないことは意識しておいたほうがよいのだろう。
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