ギターをチューニングするだけでテンパった話(後編) | アコギで日食なつこの曲を弾きたい

アコギで日食なつこの曲を弾きたい

日食なつこの曲練習しないで
オリジナル曲を作って練習してることが多い

前回からの続きです
まだ読んでいない方は前編からご覧下さい


友人の結婚披露宴で
余興として歌うことになり
いよいよその当日を迎えた僕は

これまで練習してきたギターの弦を
緩めて持っていこうか

チューニング済みのまま持っていこうか
悩んでいた


とはいってもギターケースは
ハードタイプでなく
(留め金があってライフルでも入ってんじゃねーかと思うようなやつ)

フニャフニャのソフトタイプなので
チューニング済みであっても
狂ってしまう可能性があり
結局弦を緩めて持っていくことにした


僕の持っているギターは
アコースティックギターの中でも
エレキタイプのエレアコと呼ばれるもので

それに加えて
ギターの弦をチューニングしやすいように
チューナーまで内蔵されているタイプのものだ


チューニングなんて
特に時間もかからないし
まぁ緩めておいても大丈夫だろう

そう思って気持ちに余裕があったのは
会場に着くまでだった


新郎の友人が座る席を探す間に
とにかくすれ違う人、人、人

何かやたらと人が多いけどどうした?
芸能人の結婚披露宴にでも紛れ込んだか?
(ちょっと盛ってます)

コレ完全に来る場所間違ってんじゃねーの?
ってくらい
人でごった返している


その理由は披露宴が始まって
ようやく分かった

まず友人の勤める会社が
名古屋でも著名な地域情報誌を
出版しているところで

その雑誌の某かに関わっている友人の
会社関係者や取引先の人たちが
顔を合わせているようだ


そして新婦の方はというと
どうやらフリーの絵本作家らしく

こちらも彼女の事業に携わる関係者各位が
どっしりと構えている

何が家族親族ともどもだ!
ちょっと豪勢すぎるだろこの披露宴!

名古屋の派手コンはすでに廃れたんじゃなかったのか!


僕はこの披露宴が始まる前に
自分の出番がいつなのか
司会者から通達があったことを

どこか遠い記憶に置き去りにしたような
感覚になっていた


願わくば僕の余興なんかスルーして
終わってはくれまいか

そんなことを思いながら
時間は過ぎていき

いよいよ贅肉をそぎ落とした
痩せ細ったマブダチをお披露目する時が
やってきたのである


※ ※ ※ ※ ※


司会者から
まず僕の紹介をしてもらったのだが

新郎の友人でバンド活動をしており
ライブハウスでもレギュラー出演をしていて
オリジナル曲も作れてしまう

ここまでの経験値があって
それなりのポテンシャルはあるだろう

的なことを
そりゃあもうハキハキと
自信を持って語ってくれている

嘘じゃない
嘘じゃないけど
あんまり持ち上げないで
プレッシャーかけないで


そうこう紹介されてる間に
僕は緩めておいたギターの弦を
チューナー任せでチューニングしていく

でもね
何かね
いつもやってるように
ササッと音が決まっていかないわけ

低い音の方から
順に合わせていくんだけど

チューナーのランプが
丁度真ん中で光ったら音が合ってOKなんだけど

緩めるとフラットの方向にピカー
締めるとシャープの方向にピカー

なにコレ
全く音が合わない

1本の弦合わせるのに何分かかってんだ
そんな状態になってきた

やべーよコレ
音全然合わせれなくなってる

早く早く
はやくはやくはやくはやく!

あ、やべ
手が震えてきた

今何本目の弦だっけ?
まだ3本目だっけ?

3弦はレ?ソ?
フラット?シャープ?

早く真ん中光れよぉぉぉぉっ!


司会者「準備はよろしいでしょうか」

僕(首を横に振る)

司会者「そうですか、それではもうちょっと繋ぎましょうか」


と言いながら
これだけ長くオーディエンスを待たせるとは
相当な大物の予感がしてきました!

みたいなこと言ってやがる

やめてぇぇぇぇ
ほんと
ハードル上げないでぇぇぇ!


僕は心の中で叫びながら
よく分からないままチューニングを切り上げて

心臓をドキドキバクバクさせながら
半ば放心状態で
氣志團の「マブダチ」を歌い上げた

歌い切ったよ!


※ ※ ※ ※ ※


歌い終わった後
盛大な拍手をもらい

自分の席に戻ると
友人席で知り合った人たちから

「これだけの人の前で
あれだけ待たせるんだから
すごく度胸が据わってるよね」

みたいなことを言われた

違う

せっかくギターまで持ってきて
弾き語るんだから

恥ずかしい思いをしたくなかっただけ
チューニングの狂ったギターで歌うのは

歌を聴かせる以前の問題だから


つまり

めっちゃビビッてたってだけ

度胸なんて欠片もない


それなのに
司会者も友人席の人たちも
持ち上げすぎ

神輿を高々と担ぎすぎ


とまぁ
そんな感じで

何とか無事に僕の余興も終わり
2次会には参加することなく

この高難度のミッションを
やり遂げてスッキリした気持ちで
家路に着いたのであった


おしまい