無翼の天使72 | 恋愛小説 くもりのちはれ

第一印象が良くないと、普通の事をしたとしても良い様に見えるのかな?


イヤ違う・・・指示した事は何でもこなしていく柳田さんは、間違いなく本物だ。


まさにマネージャーに成るべくしてなった!って感じ。


何でも出来ちゃう要領のよさ、些細なことにも気が利いて、私なんかより数倍も


飲み込みが早い。


部室の片付け、ドリンクの用意、私が苦戦したスコア付けだって意図も簡単にこなし


部員達の心を数時間で掴んだ彼女。


『ヤナギィー、最高!彼氏居んのかな?』


『ちょっ、おいっ・・・抜け駆けは無しだぜ!』


そして恋心までも芽生えさせ、すっかり人気者・・・何だか複雑な私


『真菜、帰るぞ!』


すっかり端から入部してました!的な存在の慶人


「えっ?!もう着替えてきたの?ごめん、待ってて!」


『姐さん、後はまかせて。私はキャプテンと一緒に帰るから♪』


いつの間にか約束を取り付け、邪魔しないでねって感じでニコニコの柳田さん


部長もどうやらその気らしく『渡会、おつかれ!』なんて・・・満更でもない笑顔で


私に手を振る。


初日とは思えないほど馴染んでる彼女の事は、気に掛ける必要もないらしい。


「じゃっ、帰ります。」


とにかく慶人にどうしてこんな事になってるのか、柳田さんの事、部活の事、あと・・・


理穂ちゃんの様子も、きちんと説明してもらわないと。


慌てて着替えを済ませ体育館前に行くと、数人の部員達に囲まれ苦笑いの慶人


『悪い、えっと・・・あっ真菜が来たから・・・また、明日という事で・・・』


私に気がつき、まるで部員達から逃げるように、私の手を取って駅へと一目散。


「慶人?」


今まで見たことの無い程、疲れきった慶人


聞きたいことも聞けない・・・て言うか、聞きづらいんだけど・・・


『マジ無理っ・・・』


「はっ?」


『着いてけねぇ・・・』


「どうしたの?」


『どうしたも、こうしたも・・・何だよアレ?ありえねぇ・・・一緒に頑張ろうぜっ!って、


気持ちワリィ・・・俺、あぁ言うの無理っ。』


完璧だと思ってた慶人の弱みは、熱いスポーツに青春を掛ける部員達のテンション


のようだ。慶人の周りにいる喧嘩に命を掛けるヤンキー達とそう変わりは無いと


私的には思うんだけど・・・


『はぁー・・・真菜、やっぱ辞めねぇ?俺、あれはやっぱ無理かもしんねぇ。


そう言いながらも、『明日の朝練は何時からだ?』と、確認してくる慶人。


どうやら慶人は、パパに宣言した通り徹底的に、私を守るという事に全力を注ぐ


つもりみたい。


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