無翼の天使47 | 恋愛小説 くもりのちはれ

慶人とは、数日間、何事もなく順調で、順調すぎて怖いほどで・・・.


あいかわらず学校では何も話さない私達だけど、それでも行き帰りの電車の中、


二人の時間は楽しくて、楽しすぎて・・・時には途中下車なんてしてみたり・・・


ホント普通に私は幸せで・・・でもそれは、まさに嵐の前の静けさだった。


毎日、慶人は何かを警戒していて、一緒に駅で降り、家まで送ってくれていた。


だけど今日に限って、送ると言う慶人を断って、瑠奈と待ち合わせしていた私は


一人で電車を降りた。


だからだと思う・・・ずっと機会を狙っていたのだと思う。


それは一人になってすぐの事だった。


『ねぇ彼女、渡会真菜ちゃんだよね?』


一見、普通のサラリーマン・・・だけど何だか違う。


今まで会った事も、見た事も無い20代前半ぐらいの男の人が、私の肩を叩いた。


怪しい・・・確実に悪意ある人だと直感する。


だって普通に私を知っているのであれば、こんな風に声を掛ける事は、決して


出来ないはず。だってパパの監視は今も続いていて、少し離れたところでずっと


数人のボディガードが、私を見守っているから。


この人は、きっと私の事を名前だけ知っていて、私の立場を知らない人なのだろう。


『強引な事したくないからさ、このまま一緒に来てくれっかな?』


ニヤリと笑うその人は、私の腕をガシリと強く掴む。やっぱり普通ではない。


改札を抜けると、少し離れた場所に停まる車に視線を送り、なぜかペラペラと


話し出す。


『あの車に乗ってもらっから。でもよぉ、金持ちのくせに電車なんて乗って、警戒心


無さ過ぎなんじゃねぇ?お前ホントは、高宮の娘なんだろ?車どころかヘリでも


ジェットでも乗り回せんじゃねぇの?金持ちの考える事は、やっぱ解んねぇ。


まっ、俺の仕事が簡単に済んだから良いんだけど・・・簡単すぎて、良いのかって


感じだな。フッ・・・でもお前、何で高宮って名前じゃねぇんだ?愛人か?


愛人の娘?お前の父親も俺んとこのオヤジと同じか?女好きなんだな。


そっか金持ちなら、どんな女も股開くわな。良いよな・・・金持ちは。


あっ、でもお前は金持ちだから拉致られるのか?何されるか俺も知らないけど・・・


まっ、頑張れっ。ははは・・・』


イヤイヤ・・・そろそろだよ?


ほらね、向こうからも、たぶん私の背後からも、近付く足音。


「頑張らなきゃダメなのは、貴方だと思います。」


『はっ?』


「念のため、愛人の子ではありませんから。」


『はっ?』


「だから誤解されてるのは、とてもイヤなので・・・」


『はっ?』


「私のパパは、ママ一筋ですから。」


『はっ?』


「何されるか、私も解らないですけど・・・とにかく頑張ってください。」


『えっ?あっ?何だ?おっ、おいっ!』


現れた男達に両腕を掴まれ連行されていくその人は、まるで小さな子供の様に


なんの抵抗もできないまま、私の視界から消えた。


『真菜さん。大丈夫ですか?怪我は無いですか?』


さっきの人とそう年が変わらないであろう男が、私の横に現れると同時に


改札近くで私を待っていたらしい瑠奈が、心配げな表情で私に駆け寄ってくる。


『真菜っ!真菜っ、何もされてない?!』


涙目の瑠奈・・・そっか、こんな事慣れてないよね。


「あぁ・・・だいじょ『真菜、大丈夫だからね!尚斗君に連絡したからね!


すぐ来るって言ってたからね!』


うっそぉ・・・お兄ちゃん呼んじゃったの?!もう、瑠奈・・・それはダメだよぉ・・・


また大げさな事になっちゃうよ。


あの人に頑張ってて言ったけど、あの人きっと無理かもだよぉ。


お兄ちゃんが絡んだら、きっと頑張るの域を超える程の事されちゃうよ。


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